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2015年8月9日 - 2015年8月15日

2015年8月15日 (土)

電通総研の若者調査結果に思う

 電通総研の調査で、若者は積極的に働く意欲を失いつつあり、三割が「働きたくない」と回答していたことが分かった。「モーレツ社員」「企業戦士」という言葉も死語になりつつあるという。

 若者は正直だ。先の世代がどうなったのかよく見ている。
 我々が就職する頃はまだ「仕事で自己実現」「仕事そのものが自己目的」という価値観があることはあったが、それを利用したブラック企業が幅を利かせるような世の中になってしまった。

 「電通事件」では「モーレツ社員」や「企業戦士」として育成した若者を死に追い込んでいる。今のような労働政策では、「勤労の美徳」も遠からず歴史の彼方に消えていくことになるのではないか。

2015年8月13日 (木)

長久手市長立候補予定者選挙公開討論会に思う

 一般社団法人愛知中央青年会議所主催の長久手市長選挙立候補予定者公開討論会が行われた。立候補予定者として新人の森岡稔氏と現職の吉田一平氏の二人が出席された。

 率直に言って、分かり難い討論会であった。もともと、JCの公開討論会は公平・公正の観点から出席者が丁々発止するというものではなく、コーディネーターが問いかけたテーマについて個々の出席者が回答していくだけである。

 目についたのは、コーディネーターの質問に対して出席者があまり関係のないことを答えていることであった。両人とも、言わんとしていることが全く分からないではないし、特に吉田市長の場合はよく存じ上げているから思想の一部を語っているという事を理解はできる。しかし、予備知識が無い者にはお二人の言い分は「よく分からない」で済めばよい方ではないか。「わけがわからん」と理解を投げ出されてしまう可能性もある。そうなれば、市長選挙への関心は薄れてしまうことになる。

 有権者に媚びて「簡単なこと」だけを並べるのは宜しくない。しかし、思想をきちんと語らないと誤解される可能性が高い。例えば、吉田市長の思想は「都市と農村の共生」である。しかし、「地域におせっかいが必要」とか「子供に勉強を強要せず遊ばせるのが大切」という部分だけ取り上げられれば、単に「ムラ社会への憧憬と回帰志向」にされかねない。折角、両候補とも「思想」を持っているのだから、もっとそこのところに重点を置いた方が、逆に分かりやすくなったのではないか。そこが残念でならない。

2015年8月11日 (火)

問題は徴兵より徴用

 「戦争法が通ると徴兵制が復活し、子供や孫が戦地に送られる」

 安保法反対派を中心に、こんな声があちこちで出ている。安保法賛成派の中には徴兵制導入を叫んでいる者もいないわけではないが、おおむね「徴兵制は復活しない」と主張していることが多い。

 現実問題としては、徴兵制の導入は論外であろう。今や陸海空自衛隊ともに、要求されているのは「プロフェッショナル」であり、体力以上に頭を重視する傾向にある。取り扱う武器が高度化するばかりでは、それも当然だろう。特に海空自衛隊は精密機器を日常的に運用していること、陸上自衛隊以上にアメリカ軍との協調行動が重視されていることもあって、とりわけ「頭」が重視されている。

 海自の掃海艇部隊は戦後70年に渡り、日本近海に残された機雷を掃海し続け、湾岸戦争ではペルシア湾まで出動した「実戦を経験している部隊」なのだが、訪問した掃海艇で、自分より背が低い、自分より太り、度の強い眼鏡を着用した自衛官が並び「幹部です」と紹介されて驚いた。一番大切なのは頭脳で、体力や視力は妥協せざるを得ないという。もちろん、ダイバーの資格を持つ者など筋骨隆々としたいかにも「海の男」という乗組員もたくさんいることはいた。

 自衛官は就職先として希望者は多いが、質を重視しなければならないこと、教育に手間がかかることもあって、希望者全員を入隊させているわけではない。このためもあって、どうしても充足は総じて不足気味である。しかし、誰でも入れて使い物になるわけではない。それどころか、徴兵制が導入されればより低レベルな教育に要員を割かなければならなくなり、育てても育てても退官していくことになるから、ザルで水を掬うような状態になる。陸自OBの中には若干徴兵制を支持している者がいるが、自衛官やOBで徴兵制を支持している人はほとんどいないといってもいい。

 実際のところ、徴兵制導入論者は安全保障問題よりも、若者はけしからんから軍隊に入れて鍛えればいいという。要するに、文句を言わない従順な若者を作りたがっているわけだが、これはもうブラック企業の求める人材を作りたがっていると言わざるを得ない。徴兵制導入論者の多くがブラック企業や暴力を伴う教育や体罰に対しても肯定的な評価をしていることから見て、徴兵制導入論者の言い分は安全保障問題を検討する上で考慮する必要はほとんどなかろう。

 むしろ、問題視すべきは徴兵ではなく徴用ではないか。現在、どの国でも軍事行動は民間人の協力が欠かせない。物資輸送、基地の雑務、武器整備など民間業者が協力していることは多い。自衛隊は「自己完結力」が特質だと言われているが、その自衛隊にしても自前で艦艇が建造できるわけでもなく、戦闘機が作れるわけでもない。むしろ、現代の武器は精密機器の塊になってしまったため、本格的な修理や整備はそっくり民間企業に送ってやってもらうしかない。

 また、陸海空ともに自衛隊の輸送能力は限定されたものしか持っていない。もし、本当に有事になれば武器弾薬の輸送も含めて民間業者に協力を求めることになる。

 問題は、こうした自衛隊に協力する「防衛関連労働」に従事する労働者の処遇だ。防衛省自衛隊に限らず公務員は「自分たちには労働法は適用されないから知らない」と言うのが常だし、官公庁は民間委託問題について「委託先で問題が起きても自分たちは関係ない」「委託先で問題が起きれば契約を解除する」と口を揃えて言う。

 しかし、法務省の窓口業務の受託業者が賃金不払いや社保の未加入・不正を労働者から指摘されるや倒産して逃げた事件や、日本年金機構の委託業者が違法派遣を受け入れていた事件では、契約解除により実際に業務の遅滞を招いている。これが有事の時ならどうなるか考えると、背筋が寒くなる。

 官公庁へ装備品の納入はともかく、サービスを提供する業者では、労働条件は低いところに抑え込まれがちである。これは「人出しによる中間搾取」が最大のうまみであること、再受託できるかどうかは入札次第であるため極力労働者を抱え込まず、労働条件も低く抑えておく必要があるという構造的な問題がある。つまり、低賃金の非正規労働者が公務関連労働に従事している。これは防衛関連労働にしても違いはあるまい。

 お役所は「自分たちは問題の無い企業に委託している」と口をそろえて言うのだが、その「問題の無い企業」であるという監査や審査を行った形跡はない。防衛関連企業については、予備自衛官の雇用などで優遇する制度の導入は検討されているが、広く防衛関連労働に従事する労働者の処遇については改善どころか、調査する仕組みは検討すらされていないようだ。

 つまり、このまま有事に突入した場合、公務員たる自衛官は相応の処遇がなされるものの、その下で業務に従事する民間労働者は「使い捨て」になりかねないということである。

 また、こうした「軍に付随する業務に従事する民間人の地位」は単なる国内法の問題だけでなく、国際法上の問題でもある。自衛官すら「軍人として捕虜になれない」というトンデモ解釈が出てくるくらいだから、防衛関連労働に従事する民間人は問題なく「捕虜にはなれない」と考えるしかない。そうなると、捕虜に付与される権利は認められず、「反逆外国人」「ゲリラ」という扱いをされ、場合によっては死刑になることも考えられなくはない。

 戦場に放り込まれた場合には、軍人であっても「攻撃する対象の選定、使用する武器」などで国際戦争法の拘束を受ける。敵の様に見えるからと言って、何でも無差別に攻撃して良い事にはなっていない。武力行使が合法なものと認められれば問題ないが、瑕疵があれば「戦争犯罪」に問われることになる。このため、国際法では自国の軍人に国際法を叩き込むことが求められており、程度の差こそあれ西側諸国の軍人であればしかるべき教育を受けていることになっている。

 実は、軍と一緒に行動している民間人も武器を取って敵と戦うことが全く想定されていないわけではない。場合によっては、武器を持って敵兵を殺しても合法になる。ただし、武器を持った段階で「民間人」という扱いはされなくなるから、そこにはリスクが伴う。

 国際法では、国に広く国民一般に対して国際法を周知するよう求めてはいるが、日本では大学院レベルであっても国際法の講義には閑古鳥が鳴いている。防衛関連労働に従事している民間人に国際法を教授しているのかと何人かの自衛官・防衛省関係者に聞いてみたが、そんな話は聞いたこともないと言われる。それどころか、民間事業者との密接性すら自覚していない者が多かった。

 自治体や他の官公庁では、民間委託した労働者に公務員が指揮命令を行っている例が往々にして見られる。これは本来「偽装請負」という違法行為なのだが、防衛関連労働でも同じことが起きているのではないかと思われる。となると、自衛官が民間業者の労働者に直接の戦闘行為を補助をさせてしまう可能性を排除できない。例えば、銃を撃っているのが自衛官だとしても、たまたまその場にいた防衛関連労働者に銃弾をマガジンに詰めさせるとか、補助をさせることが考えられなくはない。労働者派遣法違反に問われる前に、敵兵はこの民間人を撃ち殺すことが一般的に認められるであろう。

 無論、軍と行動している民間業者の労働者は違法行為や、民間人としての保護対象から外される行為を要求された場合、断る権利を有している。だが、防衛関連労働者にそうした知識が教授されていなければ、断ることができることすら知らないまま、危険な行為を行ってしまうことになる。

 一般的な公務関連労働では、労働者に「業務を遂行するのに必要最低限度ギリギリ」の教育すら行っていないことが珍しくない。例えば、プール監視員でも泳げないとか、年金相談員が公的年金制度全体を理解していないということがある。受託業者から見れば、教育に割くコストは極力減らしたい。となれば、防衛関連労働に従事する労働者に「国際法を教授せよ」と言っても、現状では形式的なことだけやって業務に送り込むようになるに決まっている。前述したとおり、官公庁はおおむね「企業性善説」に立っており、受託業者の労働条件など把握もしていないからだ。そもそも、「国際法の中身が労働条件になる」という発想そのものがないのではないか。

 訓練を受け、覚悟している軍人であっても、戦地に赴くときは少なからぬ葛藤と恐怖がある。これが当たり前だ。民間労働者には、その「訓練」がない。軍人はおおむね民間の正規労働者よりも高い処遇を受けていることが普通であり、これは我が国でも同じだが、公務関連労働に従事するのは圧倒的に非正規労働者である。つまり、極めて低い労働条件で働くことになる。軍人から見て「臆病」であっても、それは当然であろう。仮に「勇敢」に任務を果たしたとしても、それで正規労働者に転じることができるわけではない。

 自衛官は国を守るための「宣誓」を行うが、民間企業で重視されるのは「営利」である。現行法では虚偽の労働条件で募集したとしてもただちに処罰されるわけではない。今のままでは、有事に自衛隊の業務を請け負う業者が「虚偽の労働条件で募集」し、十分な教育を行わないままで業務に従事させるであろうことは容易に想像できる。無論、民間企業の労働者であるから、退職の自由は残されている。一番恐れているのは、労働者が逃げ出すことであろう。

 ここで「徴用」の問題が出てくる。民間企業の立場で自衛隊の業務を請け負う労働者に、有事であることを理由として退職の自由を認めないなど、人権制約を行う動機がある。徴兵制導入より、こちらの危険性の方が高いのではないか。

 仮に、人権制約を行う制度を国が導入しなかったとしても、民間企業の側が危険であるとして業務遂行を拒絶した労働者に対して不利益取り扱いを行う可能性は否定できないし、業務命令違反を理由とした懲戒解雇ということも考えられる。当該労働者が業務遂行しなかったために利益を得られなかったとなれば、損害賠償の余地すら出てくる。「経済的徴兵」などと危機を煽っているが、そんなことよりも「徴用」が実質的に行われかねないことのほうが問題ではないか。

 安保法の是非はともかく、国の安全にかかわる業務に従事する者には、公的にしかるべき身分と処遇を与えること、民間企業に委託するにしても、相応の処遇と権利義務行使の保障を担保するのは当然であろう。そうしたことをしなければ、またもや「使い捨て」という先の大戦の失敗を繰り返すことになる。

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