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2015年6月28日 - 2015年7月4日

2015年7月 3日 (金)

日進市長選挙、古谷徳生候補の決断に敬意を表す

 日進市長選挙は最終盤に入っている。新人候補として現職市長に挑戦している古谷徳生候補とは、十数年来の付き合いがあり、意見交換を重ねてきた。

 古谷候補は43歳で、今年4月まで市議を2期、その間には市議会議長もつとめている。普通ならば、ここで更に市議会で当選を重ねて要職を歴任し、既に高齢である現職市長からの禅譲を狙うところだっただろう。実際、それを期待していた人たちは多かったという。

 しかし、自治体には「旬」というものがある。例えば、長久手市は4年前に市制移行するときが大きな転換点だった。そこで、長久手市の方向が決まった。その時期を逸すれば、二度と機会は来ない。地道なルーチンワークが不要と言うわけではないが、青年であれば転換期にこそ腕を振るいたいと思うものだ。

 日進市は市制施行二十年を迎え、転換の時期にある。「今やらなければ」という思いが、古谷候補をして立候補に至らしめた。ここで日進市のグランドデザインを描かなければ、この後百年に悔いを残す。私は、古谷候補のこの決断に敬意を表したい。市長の椅子に座ることが目的であれば、あと4年待つ方が確実であっただろう。しかし、それでは市長として十分に腕を振るう時期を逸することになる。

 古谷候補の人柄や政策は日進市民の方々が広く宣伝しておられるし、ここで推薦記事を書いても仕方がない。そこで、私は古谷候補にこの場を借りて献策を行いたい。

 「市役所の一人一人がもっと動けるようにしたい。上の顔ばかり見ないで動けるようにしたい」というのは素晴らしいことだ。問題は、どのようにすればそれが実現できるのかという事である。

 日進市役所の職員数は約500名、このうち管理職が70名ほどいるが、驚くべきは非正規が約200名ということである。これは職員数の4割にのぼるが、全国的に見て一泊の市区町村の非正規職員は3割程度だから、日進市は非正規職員が格段に多い自治体と言えるだろう(ちなみに、日本年金機構の場合非正規職員が5割を超えているが、これはもう異常事態である)。

 少し前に、長久手市議会議員の田崎あきひさ氏が経歴に日進市職員と書いていたことが経歴詐称だと議会で問題になったことがある。「非正規職員は職員ではないから、経歴詐称にあたる」というのが問題にした議員の主張であったが、非正規職員であっても市の職員は職員であることに変わりは無い。

 守秘義務等、義務については非正規職員であっても正規職員と全く同等である。ただし、非正規職員が正規職員と同等なのは義務だけである。賃金水準は自治体や職種にもよるが、おおむね地域の最低賃金スレスレであることが一般的であり、賞与もなければ交通費なども支給されないのが普通である。非正規職員は任期制で、大抵1年程度の任期を反復継続して働いていることが多いが、公務員の場合は「雇用」ではなく「任用」であるから、長期間反復継続して勤めていたとしても、正規職員に転換されるわけではない。

 これらの非正規職員がどのようなところに配置されているのかというと、これもまた傾向がある。財務部門や企画部門には少なく、窓口や現業と言った市民に身近に接する部門に多く配置されている。つまり、今や自治体において住民と身近に接し、住民の意向を最もよく吸収し得る立場にあるのは非正規職員であると言っても過言ではない。正規職員は、今やこれら非正規職員や外部委託業者を指揮命令する管理者的存在になってしまっている。

 しかし、非正規職員はあくまでも非正規職員である。彼らにとっては何の利益にもならないが、意見を上申する機会すら与えられていないことが多い。現実には、そのような時間的余裕もない。それどころか、上に立っている下級の正規職員のご機嫌を損ねれば、たちまち次の契約がなされないことになる。

 更に、昨今では行政のあらゆる仕事が民間委託されるようになっている。これは自治体に直接契約されている「非正規職員」とは別枠で考えなければならないが、実のところどこの自治体でも何を外部委託しているのかの情報はあっても、そこで何人使われているのかと言う情報は無いことが多い。ただし、一般的には1箇月から3箇月の契約更新制度で、賃金も含めた労働条件は劣悪という事がほとんどである(逆に、人もうらやむ好条件というのは見たことが無い)。

 市長が市民の意見や実情をよく知り、更に現場の公務員に意見を求めるのであれば、こうした現場の非正規職員から直接情報が入ってくるルートをまず作るべきだ。これは、やる気があればできるだろう。非正規職員の待遇改善についても、市長の政策立案に資する提言がなされるようになれば、より進めやすくなるであろう。

 民間委託されている場合、自治体は直接指揮命令を行うことができないことが建前である(実際には、「偽装請負」状態になっている例はまま見受けられるが)。したがって、市長が直接意見聴取を行ったり、労働者が市長に意見具申することは難しい。そもそも、その時間が労働時間にカウントされなければ不当と言えるが、委託契約内容に含まれていない時間について自治体が金銭支出することは簡単ではなかろう。かといって、委託業者が市長との意見交換の時間まで時給を支払うわけもない。

 まして、委託業者にとって自治体は「お客様」であり、職員は「職員様」であるから、顔を潰すようなことは絶対にできない。我が国では「不都合な意見」は「文句」として潰そうとする傾向がある。となれば、現場の労働者の意見などが業者と下級正規職員を経由して上がってくるなどということはあまり考えられない。社会保険労務士による労働条件審査などの中に業務改善に関する項目を組み込んで意見聴取を行うのもひとつの方法であろう。

 市の幹部を経由して市長になった現職市長に比べて、古谷候補の強みは「民間感覚」である。しかし、白雪姫と七人の小人よろしく、幹部に取り囲まれるようになれば感覚がマヒしてくるに決まっている。また、社長が全従業員と否応なく接することのできる中小企業と異なり、日進市役所は大企業と同じくらいの人員がいる。また、それも一か所に固まって執務しているわけではない。更に、外部委託という多層構造が厳然としてある。

 したがって、各階層からきちんと情報が入り、市長も直接各階層と意見交換ができるような体制を最初に作る必要がある。これができるかどうかが、大きな試金石となるのではなかろうか。 

2015年7月 2日 (木)

自治体と奨学金制度

 「ブラック企業」に引き続き、最近は「ブラックバイト」という言葉が新聞紙上にも頻繁に登場するようになった。「ブラック企業」はもともと「暴力団のフロント企業」の意味合いで使われており、これを「労働条件が劣悪な企業」という定義で広く用いられるようになったきっかけば、一橋大学の今野先生の著作からである。「ブラックバイト」の命名は中共大の大内教授であるが、「経済的に恵まれている」と見られている名古屋近辺の大学生も、実態は厳しいと見るべきであろう。

 大学生が劣悪な労働条件のアルバイト、すなわち「ブラックバイト」にからめ捕られる原因の一つが、我が国の貧弱な奨学金制度だ。「奨学金」という名前は付いているが給付型ではなく貸与型、つまり事実上の借金である。大学生の親の資力が低下する一方で、奨学金にも頼れないとなれば、自分で稼ぐよりほかない。これが「ブラックバイト」問題の元凶である。

 この「貸与型奨学金」だが、実質的な「借金」であるため、大学卒業後に安定した正規雇用かつ昇給が望めないと、返済が非常に難しいものとなっている。就職難と雇用の劣化により奨学金返済遅滞が続発した結果、国が何をしているのかと言うと、取り立て業務を金融業者に外部委託している。返済できる環境を整備することが第一なのだが、取り立てだけ厳しくしても回収できるわけもなく、「奨学金破産」すら最近では珍しいことではなくなってきている。

 奨学金問題の第一は国が取り組むべき課題であろう。県や市独自に奨学金制度を設けている例もあるが、資金力にも限界がある。

 田舎では未だに「大学生は遊んでいる」「大学教育は贅沢」という見方がないわけではない。いささか呆れるしかないが、そうしたムラ社会の価値観に従えば、あえて公が支出して進学の機会を与えることは「無駄」という結論になるのだろう。このあたりは、給付型奨学金に不熱心な自民党政権と反知性主義を支える共通の基盤になっていると思われる。だが、学びたい者に学ぶ機会を与えることは当然であり、我が国は伝統的にそうした人々を支援してきた。

 江戸時代には商家で働きながら教育が行われていたし、最近まで多くの大学が夜間課程を置いていた。高度成長期には「勤労学生」は珍しくなかった。働きながら大学を出、大成した人たちは多い。先の愛知県議会議員選挙で落選してしまったが、野中泰志氏は高校卒業後一度就職し、その後働きながら夜間課程である早稲田大学社会科学部に進んで卒業している。日進市長選挙に立候補している古谷のりお氏も、働きながら旭丘高等学校定時制課程から日本大学通信教育学部商学部を卒業している。かつての「勤労学生」に対しては、社会の目も大学の目も、今のアルバイト学生に対してのものよりははるかに暖かかったように思われる。

 夜間課程や通信制課程は、昔も今も入るのは昼間課程に比較的容易である。しかし、出るのはかなり難しい。これは働きながら学ぶという時間的制約や根気もさることながら、講義出席よりも「理解度」の方が重視されてきたためであろう。すなわち、昼間の学生であれば講義に出てそこそこの答案を書けば単位認定されるものが、そうではないということである。

 私の友人の一人がある通信制大学の教員をしている。仕事は答案の添削なのだが、学生の顔を見ているわけではない。答案の内容のみを吟味して点数をつけるしかないから、おのずから厳しくなるし、普通の大学ならば当たり前にある単位認定に情実の入る余地はないという。

 つまり、夜間課程や通信制課程を卒業しているということは、むしろ昼間学部の卒業生に比べて学問に対する根気ややる気が高く、その学部で教授されている学問をかなり身に着けていると見て良い。副次的だが、レポートが欠かせないので文章力や読解力が磨かれているというおまけもついている。このあたりは、特に文系の仕事に就いて一定の職位以上になったときは重要なスキルであり、勤労学生の経験者の評価が高度成長時代から総じて高かった要因であったと言えよう。

 実際、野中泰志さんや古谷徳生さんの文章力や読解力はかなり高かった。今回の日進市長選挙の前に古谷さんが書いたもののチェックを頼まれたが、最初から構成や文章がしっかりしていたため、ほとんど直すところはなかったほどである。

 働きながら学ぶ上では、使用者側の勤労学生に対する理解が欠かせない。かつての「勤労学生」と「ブラックバイト」の根本的な差異はそこである。「ブラックバイト」の場合、はじめから使用者側は「使い倒す」つもりだから、学業への配慮はもとより、健康に対する配慮もまともに行わないことが多い。

 自治体独自で奨学金を出すことは難しいとしても、勤労学生をきちんと支援している企業はまだまだ探せばある。大学やハローワークと連携し、学生がブラックバイトにからめ捕られる前に、優良企業に誘導していくべきだ。

 勤労学生を受け入れる企業については受入れ企業として相応しいか賃金をはじめとする待遇面の審査を行ったうえで、「勤労学生応援企業」というようなブランドを付与し、公共関係の入札や資金調達の際に優遇したり、加点要素とすれば企業側としても勤労学生を受け入れる魅力が生まれる。

 高校生については総じて愛知県ではアルバイト禁止であることが多いが、親世代の資力の低下は高校生にも影を及ぼしている。「JKビジネス」が問題になっているのも、高校生の貧困と無関係ではあるまい。とすれば、アルバイトを単純に禁止するよりも、学校・自治体・企業が連携してしかるべきアルバイト先をきちんとあっせんし、適正な待遇を確保できるようにした方が健全である。

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