« 2013年9月22日 - 2013年9月28日 | トップページ | 2013年10月6日 - 2013年10月12日 »

2013年9月29日 - 2013年10月5日

2013年10月 5日 (土)

国が出会い系事業に助成

 若者の非婚晩婚が問題になっている中、なんと内閣府は「出会い系事業」に助成を行う方針だという。まことに、物事の本質を理解していない愚挙としか言いようがない。公的機関が非婚晩婚対策を行うなら、他にやるべきことはいくらでもある。

 最近は「街コン」と言うのか、「まちおこし」「まちづくり」のイベントとして婚活を掲げているケースが目立つ。イベントもいささか「食傷気味」な今日、「結婚できない連中のためにイベントをする」という大義名分を掲げているわけだ。相当悪質な例も報告されており、こうしたイベントに助成を出すのでは、お祭り男やイベント屋を楽しませ儲けさせるだけの結果しかもたらさないのではないか。本音のところは「地域活性化」なのだそうだから、婚活云々はあくまでも予算獲得のための「口実」でそもそも本気で結婚できる環境づくりなど考えていないと疑わざるを得ない。

 このままでは「恋の魔法の使える魔法使い」や「キューピット」が実在したとしたら、彼らにも助成金を出すなどと言いかねない。

 若者の非婚晩婚の原因は彼らの置かれた労働環境にある。大阪大学大学院の小嶌典明教授の研究によれば、非正規労働者が増えたのは高齢者の継続雇用が原因であって若者が正規労働から非正規労働に転換しているわけではないそうである。非正規労働者と日常的に接し続けている私としてはとてもそんな実感はないのだが、統計では若者は非正規化していないという結果が出ているそうだ。となると、正規労働であったとしても労働時間や賃金上昇といったところに目を向ける必要がある。仮に激増した非正規労働者が高齢者であって若者の非正規労働転落が起きていないとしても、賃金をはじめとする労働条件は向上するどころかむしろ後退しているのが実態ではないか。何より、企業社会が労働者を搾取するだけ搾取して切り捨てる姿勢を強めている現在、労働者側は将来を描けない。正規労働者であったとしても使い捨てるという姿勢で使われては、尊厳も自信もあったものではない。

 実際、私の周囲を見ると非正規労働から正規労働に転換したり昇給したりしたことをきっかけに恋愛や結婚に「踏み出す」例が多いように感じる。逆に、非正規労働の男性の場合は同じ非正規労働の女性から相手にすらされないという厳粛な事実もある。この点、女性の場合は非正規であったとしても極端に「恋愛市場」「結婚市場」で不利になるということはないようだ。

 若者に不足しているのは出会いの場ではない。異性とは出会っている。しかし、恋愛や結婚に踏み出す自信も余裕もないというのが実態ではないか。更に恐ろしいのは、国が「出会いの機会までお膳立てしてやったのだから、制度上独身者が不利になっても自己責任」という態度を取りかねないことだ(現在でも独身者は税制上不利だが、この不利益をさらに拡大するだけでなく、例えば年金額のカットや賃金抑制などが考えられる)。非婚晩婚や少子化問題が労働問題そのものである以上、国がやるべきことは労働環境の整備であって出会い系事業をやることではない。

2013年10月 3日 (木)

山崎豊子さん逝く

 「白い巨塔」「沈まぬ太陽」「大地の子」など、数々の名作を世に送り出してきた作家の山崎豊子さんが亡くなった。ご冥福をお祈り申し上げたい。週刊新潮に連載中の「約束の海」が遺作となった。結末が永遠に読めなくなってしまったのは残念でならない。

 「白い巨塔」は何度もテレビドラマ化され、「野心的な外科医と良心的な内科医」という組み合わせはその後の医療ドラマではよく見られるパターンとなった。「沈まぬ太陽」で描かれた日本の航空業界の「闇」は、その後JALの破たんで現実のものとなった。

 しかし、山崎さんが描きたかったのは「人間ドラマ」であったと思う。大学医学部や航空会社はその舞台に過ぎないのではないか。一般企業にも官公庁にも人間ドラマはあるだろうが、大学医学部や日本を代表する航空会社の幹部であれば、その人間ドラマにより一般国民も大きな影響を受けざるを得ない。

 実在の人物に取材を行い、それをもとに虚実を取り混ぜて作品に仕上げる手法に批判がなかったわけではない。人物の描き方についても、一方に肩入れして書きすぎているという批判もあった。作品の描き方については、これから文学者が議論することになるだろう。しかし、様々な批判を含めて、後世に残す名作を数多く残された。

2013年10月 1日 (火)

ブラック士業

 明日からスタートするテレビドラマ「ダンダリン」は労働基準監督官を主人公にしたドラマなのだそうである。ブラック企業がこれだけ注目されるようになったから、ブラック企業と戦う労働基準監督官をドラマの題材として取り上げようということだろう。警察官や国税捜査官はドラマになるのは珍しくないが、労働関係の仕事と言うのはどうしても注目されない。世間の耳目が向くのは悪いことではなかろう。

 しかしながら、社会保険労務士の側としては手放しで喜べないところがある。既に全国社会保険労務士会連合会で問題になっていたが、このドラマにはブラック企業側として暗躍する社会保険労務士が登場するのだそうだ。社会保険労務士は「悪役」としてしか登場しないそうだから、資格そのものに対する悪いイメージが流布されてしまうのは免れない。

 「ブラック企業」の問題が世に広く騒がれるようになり、同時にブラック企業を支える弁護士や社会保険労務士が「ブラック士業」と指摘されるようになった。それでも弁護士は日本労働弁護団を中心として労働者側に立つ者も多いから労働団体も弁護士資格そのものに対する非難まではしていないが、社会保険労務士はもともと企業の労務管理や社会保険手続きを行うところから出発し現にそれが一番社会保険労務士の仕事としては大きいから、ブラック企業を取り上げた本の中では袋叩きにされている感がある。そして残念ながら、ブラック企業の手先の如き悪事を働く社会保険労務士が現実にいることも事実である。

 例えば、社会保険料は賃金に比例するのが原則で、社会保険料を下げたければ賃金を下げるしかない。しかし、「社会保険料を意図的に低く申告する」という手法を売り込んだ社会保険労務士は多かった。使用者側は社会保険料を減らしたくて仕方がなかったわけだから、これは「お客様の希望」に沿った対応である。しかし、社会保険料、例えば年金保険料を低く届出られていれば、厚生年金の受給金額は下がる。高い標準報酬のまま年金保険料を賃金から天引きし、低く届出て差額を懐に入れていればこれはもう詐欺だ。さすがに社会保険そのものから抜けるという手法は社会保険労務士の介入する余地がなくなるからそこまでは踏み込まない者が多かったようだが、いずれにせよ使用者の悪事に加担していたことは疑いようがない。実際、「思ったより年金が少ない」と言われて調べてみると、不正が行われていたのではないかと言う疑いのある事例は多々あるのだが、年金は受給まで時間がかかることもあって証拠を押さえるのはかなり難しい。それでも最近は日本年金機構が「ねんきん定期便」というものをばら撒いてくれるようになったから、それを端緒にして不正を調べるのは以前よりは容易になった。

 しかし、「ブラック士業」というのはブラック企業の手先になる専門職のみを意味するものではない。もうひとつ、全く別の意味でも使われている。

 弁護士が増えすぎたというの話題はニュースでもよく取り上げられている。かつては司法修習を修了して弁護士になったら、大抵は先輩弁護士の事務所に入って働きながら仕事を覚えていくというのが当たり前であった。しかし、弁護士の増員で就職できない弁護士が続出し、事務所に雇用されずスペースだけ借りて仕事をする「ノキ弁」(軒先弁護士)、資格取得後直ちに独立するというのも珍しくなくなった。就職できたとしても、大手事務所やチェーン店さながらに増殖している弁護士法人の場合、過酷な労働条件で長時間労働を行い、心身を害する例も多いという。

 社会保険労務士の場合、もともと業界そのもので事務所に入れて人を育てるという考え方が希薄だったこともあってか、開業登録と廃業が非常に多い。中小企業では労務管理や労働法の順守といったことはそもそもあまの重要視されていないこと、社会保険手続き業務は税理士が付随業務として行えること、企業の新規開業が減り続けていることもあって、社会保険労務士のパイは少なくなる一方である。

 年金関係の業務は社会保険労務士の仕事としては認知されているが、実際の年金受給手続きに社会保険労務士が介在する余地は少ない。年金事務所やコールセンターに聞けばタダで教えてくれるからだが、年金事務所窓口で業務を行う社会保険労務士は日本年金機構と直接の雇用契約すらない立場であり、時給ベースで1500円程度である。アルバイトとしては一見すると悪くないように見えるが、社会保険労務士会の会費や労働者ではないが故に発生する必要経費を支払って生活を支えるのは容易なことではない。加えて、そのような業務を続けたとしても顧問先の獲得等には結びつかない。機構は更に社会保険労務士を「活用」したい意向のようだが、このままでは社会保険労務士そのものが機構の下で「ワーキング・プア」化するのは免れないであろう。

 「ブラック士業」のもうひとつの意味は、生活もままならない士業ということである。国家資格を取得するには時間と費用がかかる。そして、取得してみたら大学同期で普通に就職した人々と比べてお話にならない程度の収入しかない。このような現状では、専門職と言ってもなりふりかまっていられず、ブラック企業にからめ捕られて悪の道に落ちていくものも多数出てくるだろう。「ブラック士業」の二つの意味は、ある意味では表裏一体のものである。

2013年9月29日 (日)

消費税増税法人税減税

 消費税増税はいよいよ「本決まり」だが、ここに来て安倍総理は法人税の減税に意欲を見せている。もともと消費税という制度そのものが法人税や所得税の減税とセットになって創設されたものだが、幾らなんでも法人優遇は露骨すぎるのではないか。

 もともと現在の消費税増税論議は増え続ける社会保障費を国民全体で支えようという趣旨に基づくものであった筈だ。そのために消費税を増税し、同時に給付についても引き下げる。特に年金については小渕内閣の時代に物価が下がったにもかかわらず物価スライドによる引き下げを行わなかったため「特例水準」と呼ばれる高い割合での支給が続いており、2.5%を段階的に引き下げていく予定である。その第一弾は10月分よりの1%削減である。

 ところが、消費税増税に併せて法人税を減税するのでは、結局のところ法人税を減税するために消費税を増税したのかと言われかねないものだ。そして、法人税減税は幾度となく行われてきたが、近年では現実的にそれが雇用や賃金の増加には結びつかず、結果的な内部留保に回される結果となっている。政府与党は馬鹿の一つ覚えのように「法人税を減税すれば企業活動が活発になり、賃金や雇用が増える筈」と説明しているが、法人税を減税されたとしても企業側にそんなことをする「義務」まで課すものではないことは言うまでもないことだ。

 賃金が下がれば消費は落ち込む。雇用が流動化したり社会保障が後退すれば、これまた将来不安からため込もうといういう意識が働き消費が落ち込むのは道理である。既に物価は上昇し電気ガス郵便料金等軒並み値上げされ、それに対して賃金はアベノミクスでも更に下落傾向にある。つまり、「実質的な賃下げ」が実現してしまっている。企業側の負担を減らせば企業活動が活発になると言われてきたが、そもそも吸い取るべき労働者や消費者が骨と皮と筋ばかりになってしまっては利益など上がるはずもない。

 大企業であれば「富の海外移転」は比較的容易にできる。これに対して一般国民はそのようなことを制度的に禁止されているわけではないが、現実的には難しい。自民党を支えている中小企業主や農家にしても同じことだ。特殊な技術や技能を持つ中小企業はごく僅かであり、ほとんどの中小企業はオーナーの「顔」によって仕事を取ってきて命をつないでいる。農家にしてもその土地で営農しているからこそノウハウもある。何れも、容易に海外移転させられる性質のものではない。何処に投資をすれば社会にカネが回るようになるのかは、小学生でも分かる話ではないか。

 特に復興関係の増税は国民全体で被災地を支えようという性質のものと説明されてきた。法人は被災地を支える必要はないというのだろうか。

« 2013年9月22日 - 2013年9月28日 | トップページ | 2013年10月6日 - 2013年10月12日 »