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2013年6月30日 - 2013年7月6日

2013年7月 5日 (金)

参議院議員通常選挙公示

 参議院議員通常選挙が公示された。安倍政権に対して信任するか不信任とするか占う選挙と言われている。各候補者・各党の政策や見識を見定めて7月21日の投票日までには一票を投じたいところだ。

 私が残念に思うのは、自民党優勢で場合によっては単独過半数、いずれにせよ「ねじれ国会」が解消になる可能性が高まっていることだ。何も、自民党の勝利を歓迎していないわけではない。だが、1989年以降続いてきた参議院は一体何だったのか、そのことは問い直されなければならないと考える。

 衆議院で多数を占めた勢力が首相を出し与党となる。これは議院内閣制の基本だ。では、その場合に第二院はどうなるのか。大統領制の国では大統領と議会の多数派が異なる政治勢力属することもまた珍しくない。アメリカなどは上下両院とも野党が多数派を占めているということすらある。

 こうした場合、与野党或いは行政府と立法府の間で議論やすり合わせを行うことが重要になる。これは「政治の技術」と呼んでもよいものだが、単純な多数派の横暴や行政府と立法府の抗争ではなく、合議の中から結論を導き出していく過程である。

 1989年の参院選から24年になるが、結果的に日本では「衆議院の三分の二の乱発」など「数」が重要であることが最後まで変わらず、妥協点を見出そうとすれば兎角に「変節」扱いされ与野党双方が相手に妥協させて相手を「変節」扱いしようと張り合う姿は変わらず、合議というプロセスは育たなかったという感がある。このまま与野党とも自民党が多数を占める時代に戻れば、再び我が国では合議プロセスはあまり必要とされなくなるわかけだから、この分野で「技術」が育つ時代は再び遠のくことになる。

 多数派の「数の横暴」「決められない政治」は、どの民主国家でも経験してきていることだ。アメリカでもイギリスでもフランスでも同じである。その過程を経て、現在の「合議のシステム」「合議の技術」が育ってきたわけだが、我が国ではまだそれは育ってきたとは言い難い。

 国民の側も「決められない政治」にウンザリしている感はある。一方で合議というプロセスを育てることにどれだけ関心を払ってきたのであろうか。

2013年7月 3日 (水)

新入社員の7割が終身雇用希望

 産業能率大が新入社員に対して行った調査によれば、新入社員の7割が終身雇用を希望しているという。2002年の調査では5割だったから、この十年余で経済界やコンサルタントが吹聴してきたメッキが剥がれ「現実」が見えてきたということだろう。挑戦していった上の世代が結果的には成功したごく一部の者を除けば人生の先行きを失い、経済的に困窮している姿を見ていれば、多数の者がより安定した人生を望むようになるのは至極当然の事であろう。

 同時に、終身雇用を希望したとしても、その恩恵を受けられる層はますます少なくなっている。ますます「手に入らないもの」になりつつあるからこそ、希望する若者が増えているとも考えられる。

 使用者側としては、最早一部の幹部社員を除けば「終身雇用」どころか期間の定めのない雇用すなわち「正社員」たる身分すら維持したくないというのが本音である。「准正社員」という考え方が提示されているのもその一環で、従来の非正規労働者の待遇改善をお題目にしてはいるものの、正社員ほどの身分保障はされていないし、賃金についても非正規雇用から上昇するかどうかは「使用者次第」ということになっている。実質的な「義務は正社員並み、権利は非正規労働者」にされると危惧しているのは私だけではないだろう。実際、公務関連労働の現場では「義務は国家公務員と同等、待遇はアルバイト」という労働者が蔓延している。

 新入社員にとって厳しい時代はこれからも続くだろう。何しろ、かつてであれば厳しくも手取り足取り仕事を教えてくれたであろう筈の「経験豊かな先輩社員」はもう存在しない。十数年前から採用抑制がされているから当たり前だ。厳しい就職活動を潜り抜けただけに、「もうあんな屈辱的な就職活動はしたくない」と考えている者も多かろう。必然的に、会社にしがみ付く余り心身を害するような仕事を自ら進んで引き受ける者も多数出てくるものと考えられる。

 「先行き不透明な時代」というのは、ある人々にとっては実に好都合な時代だと言える。脅し文句を並べなくても済むのだから。

2013年7月 1日 (月)

ブラック企業が「ブラック企業」でなくなる日

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 365日24時間死ぬまで働け

                ワタミフードサービス前会長

                       渡辺美樹(1959年10月5日~)

 ワタミの渡辺前会長が自民党から参院前に出馬することが決まり、市井では「ブラック企業」が大きな注目を集めている。渡辺氏はワタミの「数字」を挙げて、他の飲食店業界と比較して問題になるような数字ではなくワタミは「ブラック企業ではない」と主張した。ブラック企業名を公表する措置にも賛成するそうだ。

 ワタミがブラック企業かどうかは、そもそも「ブラック企業」の正確な認定基準があるわけではないから、究極には個人の主観に帰する。としても、労働社会保険諸法令に抵触する違法行為や過労自殺、非人間的な労務管理を肯定する人はそう多くはないだろう。中小企業のオーナー社長や体育会系の出身者にワタミのようなやり方を肯定する人が多いという感触はうるが、無論すべてではない。

 渡辺前会長が国政を担うに相応しい人物か否かはこれから有権者が決めることではあるが、「ブラック企業名公表賛成」という意見には裏があるように思われてならない。

 厚生労働省が「ブラック企業」の認定を行い企業名を公表するということになれば、当然ながら「ブラック企業」の基準が定められることになる。行政機関の行為である以上、基準も無しに恣意的な運用がなされてよい筈はない。では、誰が決めるかと言うと、「有識者」を集めた審議会の意見をもとに厚生労働大臣が決めることになるだろう。

 まず、「有識者」が問題だ。おおむね、有識者としては大学教授や大手企業の経営者が名を連ね、ごくまれにナショナル・センターである連合の関係者が入るくらいだが、組合関係者はもとより大学教授や経営者が「中立」「公平」であるというのは幻想でしかない。経営者にしてみれば自分の首を絞めるような「ルール」には反対するのは当たり前だし、研究者にしても自分の「学説」として信念を持っているものがあるわけだから、その信念が経営者の立場に近いものであれば無論経営側に立った意見を述べることになる。

 加えて厚生労働大臣は与党の政治家だ。つまり、「ブラック企業」を認定する要件を決めていく中で、かなり基準が「骨抜き」「曖昧」にされていく可能性があるということである。渡辺前会長が参議院議員に当選できれば、この過程でより強い「政治権力」をもって介入していくことも十分可能だろう。

 また、恣意的なブラック企業認定が許されない以上、基準は数字化されていくことになる。最近の行政機関は総じて「事業仕分け」などの影響もあってか、やたらと数字にこだわるようになってきている。即ち、数字さえきちんと整合性が取れていれば、実際の中身は二義的なものになってしまうということだ。一例を挙げれば、介護事業者の認定は「頭数」で決まっている。介護労働者のキャリアや労働条件には全くと言っていいほど関心は払われないし、評価対象にもなっていない。

 こうした現状に鑑みれば、仮にワタミがブラック企業であったとしても、「ブラック企業」として認定される数字さえ基準に満たなければ「ブラック企業」にされずに済む。ブラック企業認定ルールを作る側が、渡辺前会長に近い人々になるであろうことを考えると、政治力から現在「ブラック企業」と呼ばれている企業に有利なかたちで基準が定められる可能性も高い。経営者としては非凡な才能を発揮し一代でワタミグループを作り上げたのが渡辺前会長である。政府の審議会の委員の経験も長い。恐らく、このあたりでワタミが「ブラック企業」にされずに済むという見通しがあるからこそ、「ブラック企業認定と公表制度に賛成」と述べたのであろう。そうでなければ、経営者としては自社を危険に晒すような制度を作ろうとする筈もない。

 ブラック企業認定と企業名公表制度が作られたとしても、ブラック企業の「認定基準」さえ逃れることさえできれば、ブラック企業が「ブラック企業」でなくなってしまうことになるばかりか、むしろ厚生労働省という「お上」が「ブラック企業ではないと認めた」というお墨付きすらフララック企業経営者に与えてしまうことになりかねない。制度作りはまさにこれからだが、かえってブラック企業を公認してしまう結果すら考えられるところである。

 また、安倍総理も渡辺前会長も労働規制の緩和論者として有名である。現政権とその周辺には労働規制の緩和論者がずらりと並んでいる。労働者保護の観点から規制強化の必要性を主張している論者など皆無だ。安倍総理の「FB発言」ではないが、規制緩和に反対すれば「左翼」などとレッテルを貼られる。労働法制は政策的な要素が強く、かつては原則禁止されていた労働者派遣が一夜にして原則解禁になったという歴史もある。仮に「労働社会保険諸法令での違法状態」からブラック企業に認定されてしまったとしても、法改正により現在の違法状態を合法化してしまえば問題は起こらない。

 参院選後、「改革」は更にラジカルに進められることになると思われるが、この過程で労働規制の緩和も行われることになるだろう。長時間労働規制や社会保険強制加入要件の緩和などがなされれば、現在の違法行為も合法な行為となる。

 現在においても労働法的に「合法」であったとしても、労務管理上ただちに「適切」とは言えない。最低賃金法を守っていたとしても、それだけで労働者の「やる気」を引き出すのは困難である。だが、人を育てず必要な時に取っては使い捨てればいいと割り切ってしまえば労務管理など大した意味はなく、法的に合法でありさえすればいいという考え方に行き付くのは自然である。

 最近は経営者と話すと「合法だから問題ない」という話をよく聞く。労務管理上適切かどうかなど全く考えていないのだが、こうした思想の蔓延もまたブラック企業「合法化」の後押しとなる。

 ブラック企業が「ブラック企業」でなくなる日はそう遠い日の事ではないのでないか。

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