« 2013年5月26日 - 2013年6月1日 | トップページ | 2013年6月9日 - 2013年6月15日 »

2013年6月2日 - 2013年6月8日

2013年6月 7日 (金)

陳水扁前総統が自殺未遂

 台湾の陳水扁前総統が収容されていた病院で首吊り自殺を図り看守に止められるという事件が起きた。機密費横領等の汚職を指摘されて闘争中の陳前総統だが、死んで身の潔白を証明するつもりだったらしい。加えて、民進党に出していた復党届が拒否されたことも理由であると報じられている。逮捕後はすっかり精神的に参ってしまっているそうで、「台湾の子」と呼ばれた2000年の台湾総統選挙の「熱気」を鮮明に記憶している自分としては凋落ぶりに驚くしかない。

 陳前総統は当時野党だった民進党の「クリーン」なイメージを利用し、2000年の総統選挙では国民党陣営が連戦副総統と宋楚瑜前台湾省長に分裂していたことにも助けられて僅差で総統に当選した。2004年の総統選挙では当初劣勢が伝えられていたが、投票直前に「銃撃事件」が発生し、これまた僅差で再選を果たしている。

 2000年の政権交代直後は民進党政権にはクリーンなイメージがあったが、汚職や機密費使用など様々な疑惑が噴出するようになり、2004年の総統選挙では国民党のブルー陣営と民進党のグリーン陣営を皮肉って「藍色対モズグリーンの対立」と揶揄されている。今の馬総統もこの手の話と全く無縁と言うわけではなく、台北市長時代の機密費流用の疑惑が総統就任前からあるのは周知の事実だ。

 退任後にろくな死に方をしていないのは大韓民国大統領だが、台湾の総統もそれに近くなりつつあるのは残念でならない。実は李登輝総統も総統時代から金銭疑惑が囁かれていたのは台湾ではよく知られている。「清貧の学者」だった筈の李総統が退任後は「豪邸」に住んでいるわけだから、疑いの目を持たれても仕方がない。フランスからのラファイエット級フリゲイト購入をめぐっての疑惑では台湾海軍の大佐が謀殺されるなど「闇」は深いようだ。

 もっとも、李・陳・馬の各総統が私服を肥やす目的だけで不正をしていたのかというと、それは「否」であろう。台湾は経済的な発展と民主化を実現はした。しかし、国際社会では中国の外交攻勢と経済発展もあって孤立状態であることは今も昔も変わっていない。このような中で台湾側が情報発信を行い諸外国と「実質的な外交関係」を維持するためには並々ならぬ努力が必要である。必然的に、それはエージェントやロビイストを使って相手国の政府要人や議会に工作活動を行うことになる。普通の国でも行われていることではあるが、台湾の場合は正式な外交関係をほとんどの主要国と持つことができないから、どうしても裏ルートで行わざるを得ないが、これには金がかかってしまうことになる。

 独裁国家で国民党一党独裁時代ならばどのような金の使い方をしたとしても問題にはならなかった。党と国家は一体であり、「党国体制」のもと「党庫が国庫に通じる」とさえ言われていた。しかし「民主化」の進展に伴い、不透明な金を堂々と使えなくなる。加えて民主化は選挙や政治活動に多額の資金を必要とするようになる。票を取らなければやりたいことは何も実現できないからだ。かくして、「国のため」に総統は裏金を作り、使わざるを得なくなる。孤立状態にある民主主義国として、このような金と無縁でいることは今のところ避けられそうにもない。

2013年6月 5日 (水)

尖閣諸島「棚上げ案」に乗るのは危険

 中国は尖閣諸島について「棚上げ」を落としどころにしたい意向だという。冷え込む日中関係は中国に進出した日本企業の経営にも影響を及ぼしており、経済界から一刻も早い日中関係の改善を求められている日本政府としてはこの提案に飛びついて尖閣諸島の国有化などを凍結したい誘惑にかられていることだろう。しかし、この提案に乗ることは大変危険である。

 そもそも、かつて尖閣諸島に対して突如「領有権」を主張した中国が漁民に仕立てた人民解放海軍の将兵を送り込んでトラブルを起こしたとき、落としどころとされたのが「棚上げ」であった。そして、日本が「棚上げ」されていると思い込んで転寝をしている間、中国は着々と海洋進出の準備を整えていたのである。

 尖閣諸島周辺に中国海軍の艦艇が出没していることが毎日のように報道されているが、この傾向は軍事雑誌を読めば分かるのだが1990年代には既に恒例行事になっていた。何もしなかったのは日本政府である。中国は少しずつ尖閣諸島を周辺を「自国の影響下」に置こうと努力を続けてきた。そして、今に至っている。

 ここで「棚上げ」に逃げれば、日中関係は一時の小康は得られよう。しかし、その先はどうか。中国は尖閣諸島だけでなく沖縄も含めて「自国領」という主張をはじめている。中国は「棚上げ」で日本が安穏としている間に、沖縄を「自国領」とする証拠を集めて国際社会で喧伝し、沖縄でひそかに中国併合派を養成し、艦艇を押し立てて沖縄周辺海域を散歩することで自国の影響下にある水域とするのは目に見えている。

 今回尖閣諸島を「棚上げ」にしてしまった場合、次に尖閣諸島が日中間で問題になるときは尖閣諸島実効支配権は中国に移っていることだろう。

 過去に「棚上げ」に乗った結果どのような結末を招いたか、思い返すべきだ。中国側の提案に安易に乗るべきではない。

2013年6月 3日 (月)

みんなの党の「国家公務員5万人削減案」は狂気の沙汰

 みんなの党は参院選の公約として、「国家公務員を5万人削減する」という案をまとめた。同時に、公務員の待遇を切り下げ、首切りや降格も思いのままにできる制度を導入するという。まことに、狂気の沙汰としか言いようがない。

 諸外国に比べても決して多くはなかった国家公務員はこの十数年で大幅に削減されてきた。にもかかわらず、国が行う仕事量はあまり変わっていないか、むしろ国民の多様な要求に応じる形で増えているのである。必然的に公務員はより多忙になるし、こうした境遇に置かれればより近視眼的かつお役所仕事に逃げ込むようになるのは道理である。お役所仕事を変えるために「物申す」のは相応の待遇が確保されているからできることであって、「嫌なら辞めろ」はもとより民間企業のように上司のご機嫌を損なえば首が飛ぶような組織では、改革など望むべくもない。それは終身雇用制度を喪った日本企業が坂道を転がるように転落していく姿を見ていれば誰にでもわかる。これを国家公務員の世界に大胆に持ち込もうというのだから、日本の転落を加速させたいと言われても仕方がない。

 国家公務員の削減に伴って、従来から行われている「民間委託」が加速することになるだろうが、別に「民間の知恵」が行政に取り入れられるわけではない。残念ながら、お役所仕事をそのまま行うことが受託した民間企業の使命になるし、お役所仕事に反すれば待っているのは契約解除だ。そもそも、民間企業にとってお役所は「お役所様」であり「職員様」である。「お客様」であるお役所の意向に逆らうことなどできるわけもない。このような関係ではお役所側の人間も仕事の中身ではなく上がってくる数字に一喜一憂することになる。かくして、お役所仕事の「ひずみ」は民間委託された企業の非正規労働者(民間委託は数年ごとの入札で決まるから、正規雇用は絶対に増えない)が吸収し、無理を重ねた上の低賃金労働で心身ともにボロボロにされて使い捨てられていくことになる。

 残念ながら、昨今の「公務員削減」によって、公務員はますます「特権階級」と化しているし、その特権を守るために従来以上に守旧的になりつつある。これを更に締め上げてみたところで、ますますやる気のある人間がいなくなり、お役所仕事を続けるお役人タイプばかりが割合としては増えていくことになる。「官製ワーキング・プア」の存在は以前から指摘されているところだが、これに民間委託と相俟って、正規公務員の仕事は国民に奉仕することではなく、「上がってくる数字を見て一喜一憂するブラック企業の管理者的存在」となる。

 昨年の社会政策学会ではもつぱら「非正規公務員」に焦点を当てた早川征一郎・松尾孝一両先生の研究発表が行われたが、非正規公務員に加えて民間委託されている民間企業の非正規労働者も含めて、公務員削減の歪が社会的弱者の使い捨てによって誤魔化されているのは明らかだ。

 みんなの党の公務員削減案は公務労働の現場を検討してみると、もう狂気の沙汰としか思えない。

« 2013年5月26日 - 2013年6月1日 | トップページ | 2013年6月9日 - 2013年6月15日 »