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2013年3月3日 - 2013年3月9日

2013年3月 9日 (土)

物価は上がっても賃上げはない

 安倍総理の経済財政政策に対して強い影響力を持つイェール大学の浜田名誉教授が中日新聞のインタビューに応じた記事が掲載されたが、その内容は衝撃的なものであった。一言でいえば「大企業が生き残ることが必要だから、賃上げには期待するな」というものである。

 アベノミクスではインフレを誘発し、それによって経済規模を拡大させることで雇用を拡大し賃金を引き上げることで国民生活を向上さることが喧伝されていた。原発推進やTPP参加なども、すべてこの戦略のための行動である。当然ながらインフレが起きれば実質的な賃金は目減りする。したがって、賃上げとセットであることが国民を納得させる唯一の方法であった筈だ。

 しかし、浜田名誉教授は企業に体力を付けさせる必要があることから、賃上げを期待するなという趣旨のことを述べている。安倍総理の指南役がこんなことを言っているのだから、本当に政府与党が賃上げを含む労働者の権利向上の事を考えているのかますます怪しくなってきた。派遣の期間制限や直接雇用既定の撤廃や解雇の緩和、労働時間規制の緩和、最低賃金制度の廃止、社会保険の適用除外の拡大など、それぞれもっともらしい理由づけはされているが、本当にこれで大丈夫なのか私は極めて疑わしく思っている。

 確かに、理屈の上では国内経済は活性化し、拡大した経済は雇用を吸収し賃金も上昇することができる筈である。しかし、ここ十数年こうした路線を歩んできた結果生まれた底辺層の労働者とここ一年ばかり共に仕事をしてきた私としては、こうした路線に期待を持つことはとてもできない。

 賃上げ要求にしても、年収1000万円を2000万円にする話ではない。時給1010円を1020円にできるかどうかという話である。残念ながら、非正規労働の現場では労働者は皆おしなべて自分の前途に期待はしていないし、幸福な家庭生活を含む将来像を描けている者はほとんどいない。正規雇用への登用や、賞与や各種手当などの支給される立場すら、現実には夢でしかない。彼らにとってのささやかな期待は、若干時給が上がることで、一杯の飲み物を追加購入できることくらいだ。こうしたささやかな期待すら奪うようでは、どうして政府与党の経済政策を信用することができようか。

 経済政策を立案・遂行する者は、表向きに出てくる数字だけでなく、是非現場を見てもらいたいものだ。これではアベノミクスは誰のための、何のためのものか理解することすら難しい。無論、大企業生き残りのため底辺労働者を見捨てるというのも有力な選択肢の一つである。それならば、是非明言していただきたいものだ。

2013年3月 7日 (木)

「未来志向」の日韓関係

 就任したばかりの朴大統領と安倍総理が初の電話会談を行った。李前大統領の政権末期に日韓関係は悪化してしまったので、政権交代を機に仕切り直しというところである。

 ただ、ここ二十数年間の日韓関係の歴史は同じことの繰り返しだ。すなわち、新大統領は「未来志向」の日韓関係を作りたいと表明し、政権発足直後はおおむね良好な関係を構築する。しかし、「反日」を掲げなければ選挙に勝てない韓国国内ではそれが「弱腰」と映り、政権は次第に人気取りのために反日活動を活発化させていく。特に韓国は大統領の再選が憲法で認められていないため、任期終了直前はレームダックになる。韓国の大統領が「美しく辞める」ためには、政権末期の反日活動はもはや伝統である。実際、金泳三大統領も金大中大統領も盧武鉉大統領も李明博大統領もみんなそうだった。

 韓国側が「未来志向」を示したとしても、本当にその方向で行くのかどうかは怪しいものがある。日本の失敗は、韓国側が「未来志向」を示すとただちに譲歩したり経済支援をしてしまうところにあるように思われる。本当に韓国側が踏み出すまで、安易な譲歩や支援は控えるのが両国の「未来」にとって賢明な対応であると言えよう。

2013年3月 5日 (火)

HIV感染の新生児が治癒

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 アメリカのミシシッピ州で母子感染によりHIVウイルスに感染していた新生児に抗ウイルス薬を投与し続けたところ、ウイルスが確認できなくなり治癒したものと認められるという診療結果が明らかになった。HIVは短期間で死に至るような病ではないものの根治不能な「不治の病」と捉えられているだけに、衝撃的な話である。同時に、苦しむ患者にとっては新たな治療法の開発に期待の持てるニュースであろう。

 無論、今回の症例が一般化できるかどうかは慎重に考えなければならない。実験や医療は「追試」に成功してはじめて手法として認めることができる。例えば、戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏元受刑者は「脳幹論」と称して脳幹を鍛えればうつ病や癌が治癒すると主張しているが、国内外の研究機関で誰も「追試」に成功していないので当然ながら「トンデモ説」に分類されることになる。同様の症例に対して同じような手法で治療効果が認められることになれば、少なくともこのような件については母子感染した新生児を救うことができる期待が持てよう。

 思えば、天然痘は根絶され、癌などかつては「不治の病」であったものを人類は乗り越えてきた。HIV根治の突破口になることを祈らない者はいないであろう。同時に、HIVが感染を拡大してきた歴史に思いを致す時、人類はHIVを克服できたとしてもまだこれから新たな病に立ち向かうことになるのではないか。病との戦いはまさに人類の歴史と言える。

2013年3月 3日 (日)

シーシェパードは海賊である

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 日本の調査捕鯨船に対して過激な攻撃を加え続けている自称「環境保護団体」シーシェパードに対して、アメリカの連邦高等裁判所は連邦地方裁判所の判断を覆して「海賊」であるという認定を行った。シーシェパードの創設者であるポール・ワトソン容疑者を「常軌を逸した人物」と認定したことも含めて妥当な判断であると言える。

 シーシェパードの御乱行はよく知られているところだが、歴史的に見てこんな「海賊」は珍しい。海賊そのものは古代から延々と続く「職業」であり、近代には一旦廃れたかに見えたが、最近再びソマリア沖やマラッカ海峡に出没するようになっている。としても、古来から海賊になるのは「陸のまともな仕事では食えない」からであり、海へのロマンを求めて海賊になるというのは漫画や映画の世界ならばともかくとして、現実には「あり得ない」海賊の姿であった。「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ワンピース」の世界は、現実とかけ離れた海賊の姿である・・・筈だった。

 実際、ソマリア沖で捕まえてきた海賊は被害国や逮捕した国に管轄権があるということで、世界中で「海賊裁判」が行われ、ドイツでは実に500年ぶりということで注目されたが、そこで弁護側が主張しているのは「ソマリアでは食えないから海賊になるしかなかった」というもので、やむにやまれず海賊になっていく様子が伺える。

 ところが、「シーシェパード」は別に食えないから海賊行為をやっているという人たちの集まりではない。確かに、「環境テロ」をビジネスにしている連中の集まりではあるが、別段彼らがそれ以外の仕事の道がないというわけではない。彼らを海賊行為に駆り立てているのは、鯨類に対するロマンである。そうすると、海へのロマンを求めて海賊になったという稀有な事例であると言えないこともない。これはもう、数千年続く海賊の歴史に新たな一ページが加えられたと見なければならないだろう。

 今回は連邦高裁の判決なので、連邦最高裁に持ち込まれた場合どのような判決が出されるかも注目される。日本の最高裁は職業裁判官、検察官、弁護士、研究者、官僚の指定席がほぼ決まっていて、トコロテン方式に最高裁裁判官が就任しては定年退官していく感があり、最高裁判事の名前など一般国民は誰も知らない。しかし、アメリカの場合連邦最高裁判事は政治的にも重要なポストで、大統領が同性婚などの問題も含めて保守派を任命するかリベラル派を任命するかが常に注目されている。日本と違って終身だから、政権交代が起きても前政権の任命した判事が多数残っている場合、新政権の政策が「憲法違反」と判断されてしまうこともある。この「海賊裁判」も、まだどうなるか分からない。

 シーシェパードの海賊行為の被害国は「日本」であり、今回の「海賊裁判」も日本鯨類研究所が出訴したことにより争われた。残念ながら、欧米やオーストラリアなどの文化人を中心に、この「海賊」を支持し資金を提供している者が多いのも事実であり、日本としては今後は「海賊の資金源」を絶つことも含めて行動していかなければならないだろう。

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