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2013年12月 9日 (月)

海上自衛隊が内部告発者を懲戒へ

 護衛艦「たちかぜ」は海上自衛隊二隻目のミサイル護衛艦として長年国防の第一線で活躍し、護衛艦隊旗艦もつとめた。就役末期には上官の嫌がらせにより乗組員が自殺するという事件を起こしている。

 この事件をめぐっては、遺族が真相究明と損害賠償を求めて提訴し、この過程で海上自衛隊側が自殺した乗組員の下宿をひそかに整理して証拠のもみ消しを謀った疑いが発覚するなど、組織をあげての隠蔽体質を露呈することとなった。この「いじめを調査した内部文書は無い」と言っていた海上自衛隊に対して文書の存在を内部告発した三等海佐が懲戒処分にかけられるというのだから、呆れるばかりだ。

 この三等海佐は当初は防衛省内で定められた手続きに則って内部通報窓口に申告したが何の対応もしてもらえず、裁判の過程で文書の存在を示す陳述書を提出するというかたちで内部告発を行っている。ある意味、内部告発事件のお定まりの過程だが、これで懲戒処分が許されるとなれば、そのうち労働者が労働組合や我々に労働相談をすることも「職場の内部情報を漏らした」として懲戒処分や契約更新の拒絶などを含む不利益処分がまかり通るようになるのではないかと危惧せざるを得ない。

 秘密保護法が国会を通過したが、この法律では秘密の範囲はもとより秘密文書の保管や破棄は実質的に行政機関の裁量に実質的には委ねられてしまっている。そして、第三者が秘密性について調査することも出来なければ、後世の検証に委ねることも難しい仕組みだ。このタイミングで、早速情報漏えいだと内部告発者を懲戒処分にしようとする海上自衛隊の姿勢は悪い冗談にしか聞こえない。

 隊内のいじめを放置し、自殺者が続出している中でも隠蔽していたのは海上自衛隊である。そのような中で問題を提起するとすれば、文書の持ち出し等厳密には「服務規律違反」の行動をもって対応せざるを得ない。これは、刑事法で言うところの「違法性阻却自由」と考えるべきなのではないか。私は重大な国防上の機密を扱う自衛隊には専門家で作る第三者的な「軍事監察委員会」のようなものを設置して秘密の保護と組織内部の問題のもみ消し防止するべきだと考えているが、残念ながらそのような仕組みは導入されていない。内部の不正を正すべき機能をマヒさせているような状態で、告発した人間を悪者にするというのは許されるべきではない。

 我が国は民主主義国である。そうである以上、民主主義的な軍隊を持たなければならない。一方的に問題提起や告発を抑え込み組織の悪事を隠蔽するようでは、機密保全に名を借りて何をやり出すか分かったものではないと左翼あたりに攻撃されても仕方がないではないか。

 公的機関がこのように内部告発者に不利益な処分を行い、組織の問題を何ら改めないということになれば、民間企業もそれを見習うのは自明の理というものだ。行政ができないことを民間がやるわけはないのである。今回の問題は単なる自衛隊の機密情報の取り扱いの問題と言うだけでなく、企業内部の不正を企業外部の第三者、それは裁判所も含まれるようだが、そうしたところに相談するだけでも懲戒にされるという極めて危険な社会に転換してしまう危険性を孕んだ問題であると言えよう。

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