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2013年12月15日 (日)

張成沢前国防委員会副委員長を粛清

 金正恩第一書記が、叔父で北朝鮮ナンバーツーの地位にあった張成沢国防副委員長を粛清したことが明らかになった。即決裁判で死刑判決を出し、ただちに公開処刑するといういかにも独裁国家らしいやり方で、北朝鮮が金正恩体制になってむしろ独裁化の傾向に拍車をかけているとさえ思えてくる。

 金正恩第一書記はまだ若く、実務経験は皆無に等しい。デノミや三年前のヨンビョン島砲撃事件に関与したと言われているが、いずれも失敗しており実績にはなっていない。北朝鮮国民の不満も鬱積していると言われており、権力の強化に必死になるあまり、自分の地位を脅かしそうな張成沢を粛清したと見られている。ただし、そうだとすればまことに「浅はか」であったと言うしかない。

 実務経験のないトップにとって、補佐してくれる部下は絶対に欠かせない。張成沢氏は長年金正日総書記の補佐役をつとめ、金王朝の一員でもあった。確かに若いころから遊び好きなところがあり、岳父の金日成によって地方に左遷されたりしているが、金王朝のロイヤルファミリーの中では多くの実務経験を持ち信頼できる人物だった筈である。父親の金正日も張成沢という人物を見極めた上で息子の「後見人」に就けた筈だ。

 確かに、ナンバーツーはトップにとって場合によってはライバルになる。しかし、北朝鮮では既に三代にわたり世襲が行われており、前任者からすんなり権力を継承できるのは実質的には血縁者をおいて他にはないという状態になっている。仮に張成沢が金正恩を葬り去ることができたとしても、権力まで継承するのは難しい。年齢的に見ても、蓄財はともかくとして金正恩を葬ろうという意図はなかったのではないか。

 北朝鮮だけでなく韓国もそうなのだが、朝鮮半島では「身内」しか信用しない傾向がある。だからこそ、韓国では血縁者による「財閥」が経済を支配しているわけだが、これは北朝鮮も同じようなものだ。すなわち、金正日は最も信頼できる「身内」として張成沢を息子の補佐につけたのだろう。同時に、張成沢以外の人物として後見人になれる身内は「いなかった」とも言える。金正日の叔父である金英柱はソ連留学の経験もあり(実は日本軍の通訳として活動していた過去もある)一時は金日成の後継者候補でもあったが、金正日が後継者に決まった後は表舞台にはほとんど出ていない。金正日の兄弟にしても、ほとんどが「お飾り」であるばかりでなく、去勢された上で大使として事実上の海外放逐されている者までいる。

 結果として、金正恩は一番信頼でき実務を任せられる身内を葬ってしまったと言えないだろうか。金正恩は最高指導者となってから粛清を大々的に行っていると伝えられており、公開処刑も機関銃や迫撃砲で行うなど残虐ぶりを極めている。若くして最高指導者となり、相当に疑心暗鬼になっているものと思われる。このような「絶対君主」には大抵おべんちゃらを使う佞臣がついており、実力者の悪口を吹き込んで粛清にもっていくものである。

 金王朝は、まさに「王朝末期」の状態と同じであると言えよう。朝鮮半島では日本と同じくかつては「中国古典」の素養が必須だった筈だが、どうやら三代将軍は読んでいないようだ。

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