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2012年2月19日 - 2012年2月25日

2012年2月25日 (土)

静岡市消防団員=暴力団員事件

 静岡市の消防団員が暴力団員として恐喝容疑で逮捕されたため、市は懲戒処分の対象にすると発表した。非常勤で特別職であるとは言え公務員であり、その職務が公権力の行使にあたり、加えて、消防団は消火その他の職務で私権を制限する行動を取ることが当然に想定されており、反社会的団体の構成員が消防団員として不適格と認められることは当然と言えよう。

 問題は、十数年間消防団員をしていたにもかかわらず、本当に事件を起こすまで関係者が気が付かなかったのかと言うことである。消火活動や訓練には参加していたわけだから、名前だけの団員ではなかったことは確かなようだ。仕事が飲食店手伝いとなっていたところから見て、一般的な家族経営かその延長のような業態であろうから静岡市とは離れた土地で仕事をしていたわけでもないようである(そもそも、住所を恒常的に離れて仕事をするような場合には一般的な消防団条例では欠格事由に該当し消防団員としての地位を当然に失う)。もし、気が付きながらも見て見ぬふりをしていたとすれば、当然ながら関係者の責任も問われてしかるべきであろう。

 消防団をボランティア団体と勘違いしている者がまま見受けられるが、消防団は公法上設置された公的な組織であって、組織と構成員の地位と身分には私的団体と明確な差がある。公的な地位と私権の制限にも及び公権力を行使し得る権限が与えられている分、構成員が不法行為をなせば被害者は民事上の責任のみならず公法上の責任なかんずく設置母体である自治体に対しても損害賠償請求をなしうる。つまり、消防団員の言動即ち無為徒食や暴力暴言についても自治体に対する被害者の請求をというかたちで損害を生じさせる可能性がある。

 消防団員が社会に奉仕していることを大義名分として市民に対し横暴な行為を取り酌婦と親しみ無為徒食を重ねる素行不良のものが多いと言う指摘もかねてよりなされてきたところであって、実際に愛知県吉良消防団において公費によるコンパニオン・キャパクラ等の費消が問題となっている。社会に奉仕していることは称賛されるべき事であるが、責任が免除されるわけではない。こうした点を勘違いしている者を放置しておいたことにより、市民を守ると標榜していた者が逆に市民の自由に対して牙を剥くに至った事例も歴史上少なからずある。中世の十字軍にまで遡らずとも、好個の事例として衆議院鹿児島二区選挙無効事件(大審院昭和20年3月1日判決)を読めばよい。

 反社会勢力の構成員であることのみをもって排除されるべきではないという主張はある。そもそも江戸時代の火消しに遡れば消防組織と任侠組織の境界は曖昧になり組織的精神的に見て両者の親和性が高いから仕方がないと指摘する向きもある。しかし、こうした主張は法の支配下にある現代社会においては失当であり、消防団の設置母体たる自治体が抱え込むリスクも含めて考えれば容認されるべきでないことは明白であろう。自治体によるガバナンス体制も含めて、今回の事件を機に再検討されることが必要ではないか。かかる連中と一緒にされては、先の東日本大震災で職務に殉じた多くの消防団員たちも浮かばれまい。

衆議院議員選挙ノ効力に関スル異議訴訟事件(大審院判決昭和20年3月1日)

衆議院議員選挙ノ効力ニ関スル異議
大審院昭和十七年(選)第六号
昭和二十年三月一日第三民事部判決

       判   決
原告 X1
仝 X2
仝 X3
仝 X4
右四名訴訟代理人辯護士 所龍璽 齊藤隆夫
右訴訟復代理人辯護士 登政良 松村鐵男 谷村源助 中馬新之助
原告X2、仝X4訴訟代理人辯護士 中馬新之助
被告 鹿児島縣第二區選擧長 Y1
右訴訟代理人辯護士 清瀬一郎
右訴訟復代理人辯護士 重永義榮 中摩直一 山下榮吉 栗脇盛吉 中屋勝臣

右當事者間ノ昭和十七年(選)第六号衆議院議員選擧ノ効力ニ関スル異議訴訟事件ニ付當院ハ檢事田口環、亀山愼一立會ノ上審理判決スルコト左ノ如シ

       主   文
昭和十七年四月三十日施行セラレタル鹿児島縣第二區ニ於ケル衆議院議員ノ選擧ハ之ヲ無効トス
訴訟費用ハ被告ノ負擔トス

       事   實
原告訴訟代理人ハ主文第一項同旨ノ判決ヲ求メ其ノ請求ノ原因トシテ陳述シタル要旨ハ
第一、原告等ハ昭和十七年四月三十日施行セラレタル衆議院議員選擧ノ鹿児縣第二區ニ於ケル議員候補者ニシテ被告ハ其ノ選擧長タリシP1ノ後任者ナリ
第二、右選擧ニ於テハ原告等竝ニP2、P3、P4、P5、P6、及P7ノ十名候補者トシテ立候補シ、選擧ノ結果、右P2、P3、P4、P5ノ四名ヲ以テ當選者ト決定セラレタルモ、右當選者ト決定セラレタル候補者ハ何レモ翼賛政治体制協議會ヨリ推薦セラレタル候補者ニシテ右選擧ハ左ノ理由ニ依リ無效ナリ
第三、抑右衆議院議員選擧ハ我國肇國以來ノ大難局ニ當リ且國家ノ總力ヲ擧ゲテ以テ大東亜共榮圏ノ確立ヨリ進テ世界新秩序ノ完成ニ邁進スル大東亜戦爭完遂ノ途上ニ於テ行ハレタルモノニシテ眞ニ翼賛政治體制ノ確立ヲ目指ス極メテ重大ナル使命ヲ持ツ総選擧ナリ、然レハ其ノ選擧タルヤ極メテ嚴正ニ極メテ公正ニ仰シテ極メテ明朗ニ施行セラレ以テ聖戦目的達成ノ推進力タルノ重責ニ堪ユルノ適材ヲ選出スル選擧タルベカリシニ、鹿児島縣第二區ニ於テ施行セラレタル選擧ハ右ノ如キ、精神ヲ没却セルモノニシテ甚ダ遺憾ノ極ミナナリトス。即チ
當時鹿児島縣知事P8ハ右総選擧ノ開始セラルヽヤ同縣下ノ関係官、公吏、學校長、警防團、警察署壮年團等ニ對シテ、特定候補者即チ翼替政治体制協議會ノ推薦候補者ノ當選ヲ期スル為、極力運動ヲ為スヘキ指令ヲ為シ、一方非推薦候補者ノ落選ヲ期スルタメ極力妨害ヲ為スヘキコトヲ指令シテ、右関係ノ團体又ハ個人ヲシテ或ハ特定候補者ノ為ニ積極的ニ選擧運動ヲ為サシメ、或ハ特定候補者ノ落選ヲ期スル爲其ノ選擧妨害ヲ爲サシメタリ
其ノ事例繁多ニシテ枚擧ニ遑ナシト雖具体的ノ事例ノ一班ヲ擧示スレハ
(甲)教育関係選擧運動
(一)鹿児島縣加治木中學校長P9ハ昭和十七年四月二十九日天長節拜賀式ノ席上「今回ハ推薦制ガ採用ラセレP2、P3両氏ガ推薦セラレタ、両氏共本校卒業生ナルヲ以テ是非當選セシメネバナラヌ諸君ノ父兄ガ何人ニ投票スルカヨク注意セヨ」ト同校生徒ニ訓話シ
(ニ)鹿児島縣姶良郡隼人町小野國民學校長P10某ハ同校區壮年團々長ニシテ同年四月二十五日常會長P11宅ニ於ケル役員竝ニ總會ノ席上選擧ニ言及シ「此度ノ推薦制ハ天皇陛下ノ御命令ニ依テ定メラレタノデ推薦候補者ニ入レナイ者ハ陛下ノ命令ニ背ク者デアル,自由候補者ニ投票シタ者ハ身元ガ汚レテ子供ガ學校卒業後官職ニモツケナイト警察カラ達シガアツタカラ、當區域カラ一人モソンナ者ヲ出シテハナラヌ」ト嚇シ
(三)鹿児島縣姶良郡霧島村東襲山國民學校長P12ハ同年四月二十八日夜重久區常會ニ於テP13ト共ニ「自由候補ニ投票スル者ハ國賊ダカラ、絶對ニ自由候補ニ投票シテハナラヌ、一人モ洩レナクP2候補ニ投票シナケレバナラヌ」ト無届選擧運動ヲナシ
(四)鹿児島縣伊佐郡菱刈町青年學校長同町壮年團長P14ハ
(1)同年四月九日同壮年團幹部會ヲ招集「此ノ際P3候補ノ為運動セネバナラヌ、ソレニツイテハP3氏略歴及調査用紙ニ各自ノ取引縁故交友関係ヲ調査記載シ十日迄ニ提出スベシ、是レハP3氏ノ爲ノ潜行運動ノ手ガカリニスル為ダカラ絶對秘密ニ取扱フベシ」トテ右用紙ヲ幹部約三十名ニ配布シ酒宴ノ後更ニ「自由候補ヲ支持シ相ナ者ニハ壮年團員ガ手分シテ四六時中ツキ纏フ様ニスル」ト決議シ
(2)同年四月十一日午前八時菱刈町前目P15ガ自宅ニテ田畑駐在巡査ト喫茶中、一私服巡査ト同行シ耒リ、「オ前ハ昨日X1候補ノ事務所ニ行ツタ相ダガ、日本人ヂヤナイ、P3氏ノ如キ立派ナ人ガ出ルノニ自由候補ヲ支持スルコトハコレコソ共産黨ダカラ日本ニ置クコトハナラヌカラ死ンデ仕舞ヘ」ト罵聲ヲアビセ
(3)同年四月二十九日午前十一時理髪店P16方ニ於テ右P15ニ對シ「オレハ共運部落ニ行ツテ来タガ同部落ハP17ノ首ヲツマンデ置イタカラ今迄ノコトハ間違ツテ井タト涙ヲ流シテアヤマツタ、明日ノ選擧ニハX1ニハ當町カラ君一票ダ、若シ二票アレハ承知シナイ」ト怒號シ
斯リテ桑波田ハ連日連夜有権者ヲ訪問シ投票ヲP3候補ノ爲ニ強要シ歩キ居レリ
(4)同年四月三日町壮年團總會ヲ召集シ「自由候補者ノ演説會ヲ一般有権者ニ聴取セシメサルタメニ山林下拂ヒ、道路工事、臨時常會等ヲ開クコト、但シ選擧法違反ニ問ハルヽ虞アルカラ極メテ暗々裡ニコレヲ行フコト」ヲ申合セタリ
(五)鹿児島縣出水郡阿久根町壮年團長兼阿久根青年學校長P18ハ
同年四月二十五日青年學校生徒ニ對シ「自由候補ニ投票スル者ハ不忠者デ陛下ニ申譯ナイコトダ國ガ選ンダ推薦候補者ノP2ニ投票セネバナラナイ」トノ講話ヲナシ其ノ父兄ニ之ヲ傳ヘル様申付ケタリ又壮年團長トシテ各所ニ集合ヲ催シ「自由候補ニ投票スル者ハ不忠者テ陛下ニ申譯ナイコトダ國ガ選ンダ推薦候補者ノP2ニ投票セネバナラナイ」ト説キ廻ハリタリ
(六)鹿児島縣囎唹郡岩川町立青年學校P19教諭ハ
同年四月二十九日岩川町立青年學校ニ於テ全學生ヲ招集シ壇上ニ立チ「皆サン家ニ帰ツタラ明日ノ選擧ニハ誰ニ投票シマスカ、X4ト言ツタラソレハ間違ヒデセウ、ト言ヒナサイ、P5ニ入レナサイ、ト言ハセ且P5ノ字ヲ黒板ニ書キ、○ヲ付ケタリ、點ヲ打ツタラ無效ニナルカラ」ト言ヒ聞カセ
(七)鹿児島縣出水郡阿久根町山下國民學校長P20ハ同年四月二十一日阿久根山下集會所ニ山下部落翼賛壮年團幹部會ヲ開キ、此ノ選擧ノ爲、同團幹部ヲ増員スル必要アリ、トテ、其ノ候補者山下X2ノP21等ヲモ招キタル席上ニテ、「我學校區ハ推薦候補者P2氏ニ入レル様ニト決定シタカラ團員各位ハ隣組ニ漏レナク其ノ通リ申附ケテ貰ヒタイ」ト力説シ之ニ對シ團員ヨリ「其ノ様ナ出過ギタコトヲシテモヨイモノダラウカ、違反ニハナラナイノカ、餘リ非道過ギルデハナイカ」ト詰リタル者アリシ處、「國ガ選ンダ候補者ニ投票スルノハ當リ前ダ萬一之ニ従ハヌモノガアレバ陛下ニ對シテ申譯ガナイ犬東亜戦爭モ負ケルノダ縣知事デアル縣教育會長カラモ右ノ通リ學校區民ニ命令セヨト云ツテ来テ居ルノダ」ト強調シ遂ニソレモ同意セシメP2ニ投票スルコト、各隣組ニ申附ケルコトノ申合セヲ行ヒタリ
(八)鹿児島縣出水郡阿久根町大川國民學校長P22ハ
同年四月二十五日大川國民學校五年生以上ノ生徒ニ對シ「自由候補ハ非國民ミタ様ナ人ダカラソンナ人ニ投票スルト非國民ニナツテシマウ、ソレデ政府ガ選ンデ呉レタ推薦候補者ニ投票スル様ニ父兄ニ傅ヘナサイ間違ツテ自由候補ニ入レルト戦爭ガ負ケニナルノダ」ト話シタ上「翼賛政治体制協議會推薦候補者P2」ト記載シタル謄寫刷ヲ父兄ニ届ケシメタリ
(九)鹿児島縣出水郡阿久根町波留上野部落擔當教員某ハ
同年四月二十六日右部落區長P23宅ニ開キタル臨時常會ニ臨ミ「國ガ推薦シタ候補者デアルP2サンニ投票ヲ入レヌトナレバ學校ノ教員ヤ警察署長ハ首ニナル、可哀相ダト同情シテ貰ヒタイ、又投票ヲ入レナカツタ人モ警察ニ引張ラレルコトニナルダラウ、ソンナ人ハ非國民デアル、大体自由候補ナドト言フ非國民ハ死ンデシマヘハ斯ンナ心配ハナイノダ」ト繰返シ強調セリ
(十)鹿児島縣囎唹郡姶良郡伊佐郡薩摩郡出水郡各學校ニ於テハ
同年四月三十日施行ノ選擧ニ関シ推薦候補ニ投票スベキヲ生徒ヲ通シテ勧誘ヲ為シ且父兄ノ意向ヲ聞カシメ更ニ其ノ父兄ノ行動ヲ見張ラシメタリ
(乙)縣職員警察警防團関係選擧運動
(一)鹿児島縣姶良郡國分警察署巡査部長P24ハ
同年四月十二日姶良郡霧島村王子原青年學校ニ於ケル霧島村農會主催ノ各種品評會授與式ニ署長代理トシテ臨席シ「自由候補ハ赤ノ思想デアルカラ推薦候補ヲ絶對支持スベキデアル」ト演説シ特定候補者ノ為メノ選擧運動ヲ為シタリ
(二)同國分警察署濱ノ市駐在P25巡査ハ
同年四月三十日隼人町役場投票所入口ニ立塞リ、隼人町眞孝、西虎熊ガ午前九時頃投票所ニ入ラントスルヤ、之ヲ引キ止メ「君ノ處ニ數回行ツテ見タガ國分ノミ行ツテ宅ニ居ナカツタダナイカ」ト暗ニ威嚇シ投票ヲ入レテ出場セントスルヤ「誰ニ投票シタカ」ト訊シ次々ニ投票所ニ入ラントスル者ニ對シ「○○(P2ノ意)ヲ書キサヘスレハ間違ヒナイゾ」ト投票ニ干渉シタリ
(三)鹿児島縣姶良郡加治木町警察署長P26ハ
同年四月二十六日夜加治木町反土吉原常會ニ臨ミ推薦候補者ニ投票スヘシト言ヒ「若シ推薦候補者ガ落選スルトキハ推薦ノ一人タル加治木町長P27ハ腹ヲ切ラネバスマヌコトニナル、ダカラ必ズ推薦候補者ニ投票スベシ」ト主張シ、席上推薦候補ニ投票ス可キヲ申合セシメタリ
(四)鹿児島縣姶良郡國分警察署管内清水村第子丸駐在P28巡査ハ
村内常會ニ臨ミ或ハ戸別的ニP2ヘノ投票ヲ強要セリ即チ
(1)同年四月十四日清水村郡田P29ガ仕事ヲ為シ居ル處ヘ来タリ「投票ハ必ス推薦候補P2ニ入レヨ」ト命シタリ
(2)同年四月二十日清水村郡田久保田田P30方ニ来リ「X1ニハ清水カラドノ位得票ガアルカト思フカ」ト言ヒタルニP30ハ「自分ノ村ダカラ二百票位ハ入ルダラウ」ト言ヘバP28ハ「清水ハ思想ガ悪イカラネー」ト暗ニ威圧シタリ
(3)同年四月二十七日(旧暦三月十三日)清水村姫城外姫城公會堂ニ於ケル臨時常會ニ於テ常會長P31ト共ニ「推薦候補者ハ政府ガ指命シタノダカラ、之ニ反對スル者ハ政府反對者デアリ自由候補者ニ投票シタル者ハ島流シニナル」ト威嚇シ「X1ヤX3ニ投票シ彼等ヲ當選サセレハ戦爭ニ敗ケル」トテP2候補ヘノ投票ヲ強要シタリ
(五)鹿児島縣囎唹郡岩川村警防團長P32ハ
今次ノ選擧ニ際シ警防團員ヲ動員シテ推薦候補ノ為選擧運動ニ狂奔シ四月二十八日夜ヨリ二十九日夜等ハ村界ニ火ヲ燃シ暖ヲ取ラシメツヽ團員ヲ配置シ、通行他候補者ノ自動車ヲ止メ妨害ヲ為シタリ
(六)鹿児島縣囎唹郡夫吉町岩崎×××番地P33ハ
自ラ投票ニ行カズ巡査ニ投票ヲ依頼シタリトノコトナルガ若シ同氏投票ヲ為シタリトスレハ該巡査ガ代理投票ヲ為シタルモノト思ハル
(七)鹿児島縣出水警察署長P34某ハ
(1)同年四月二、三日頃出水郡米ノ津町國民學校講堂ニ於ケル大日本婦人會支部發會式ニ臨ミ「選擧ハ男丈ケガスルモノデナイ、女ノ力ガ偉大デアル寢物語等ノ際推薦候補者ニ投票下サル様可成主人ヲ勧メルコトニセヨ」トノ訓示ヲ爲シタリ
(2)同年四月七日米ノ津町公會堂ニ於テ米ノ津町警防團ノ總會ヲ召集シタル際「今回ノ選擧ハ外國環視ノ中デ行ハレルモノデ、推薦候補者ガ負ケル様ノコトガアレバ、政府ノ信用ヲ失ヒ國家ニ取ツテ大問題ナル故可成推薦候補者ニ投票シテ貰ヒタイト公言セリ
(八)鹿児島縣特高課長P35ハ
同年四月十六日出水郡高尾野下水流國民學校ニ於テ翼賛選擧貫徹ノ名目ニテ命令ヲ以テ區長等ヲ通シテ約七百人ヲ集メ翼賛選擧ニ関シ約一時間推薦候補者(地盤協定ヲ特定シ居レリ)ヲ支持セヨトノ趣旨ヲ話シ映画(戦時将兵ノ勞苦ノ模様、翼賛政治体制協議會ノ模様等ヲ寫セルモノ)ヲ観覧セシメ、参集者ヲシテ感嘆セシメタル後翼賛支部ノ人々ニ依テ翼賛選擧ノ誓ヲ為サシメ「皇軍将士ハ斯様ニ苦勞シテ居ルノデアルカラ選擧ニモアレヤコレヤト騒ガズニ、推薦候補者ニ投票シ必ス當選セシメマセウ」ト誓ハシメタリ。其ノ直後ニ翼協竝ニ縣當局ト共ニ行動セルP3、P2等ノ候補者ノ運動員ハ直チニ高尾野郵便局、荘郵便局等ヨリ「参加者七〇〇效果偉大ニシテ大成功ナリ」等ノ文句ノ電報ヲ各々其ノ選擧事務所及候補者ニ發信シタリ
(九)鹿児縣姶良郡國分警察署長P36某ハ
同年四月八、九日頃管内警防團幹部ヲ集メ「コレカラ選擧運動ハ出来ナイガ啓蒙運動ハヤツテクレ、ソシテ推薦候補ニ投票スル様ニ盡力シテ貰ヒタイ」ト述ヘ後カラ「少シ言ヒ過キタ點ガアルガソレハ取消スガ然ルベクヨロシクヤレ」ト言ヒ渡シタリ
(十)鹿児島縣振興課長P37某ハ
(1)同年四月二十日頃姶良郡加治木町加治木座ニ於ケル翼協賛支部映画會ニ於テ映寫「野戦ノ將兵映画デ今見ラレタ通リ苦勞シテ戦ツテ居ル此度ノ選擧ニハ是非推薦候補者ニ投票シテ戦ニ勝チ貫ク様ニセネバナラヌカラ其ノ積リデ選擧ニ臨マレタイ」トP2候補ノ應援演説ヲナシタリ
(2)同年四月二十某日鹿児島國民學校ニ於ケル市常會班長會議ノ席上ニ臨ミ推薦候補者ヲ當選セシメル様支持スベキ旨ヲ講演シタリ
(丙)市町村常會関係選擧運動
(一)鹿児島縣姶良郡隼人町長(縣會議員)P38ハ
(1)同年四月二十六日鹿児島神宮修養道場ニ於ケル姶良郡東部荷車牛馬車組合總會ニ於テ「今回ノ総選擧ニハ自由候補ニ對シ一票モ投シテハナラナイ断然P2氏ヘ投票スベシ」ト話ヲ為シタリ
(2)同年四月三十日午後零時三十分頃隼人町々役場投票場入口ニ数名ノ壮年團員ト共ニ立塞リ有権者ニ對シ威圧ヲ加ヘツヽアリシヲ目撃シタルP39P40ガ之ヲ撮影セント寫眞機ヲ取出シタル處何レモ退散シタリ」
(3)同人ハ数年来書画骨薫品ノ賣買ニ狂奔シ約八万圓ノ損失ヲ爲シ財政的ニ相當苦腦シ居レリ、P2ハ之ヲ東京地方ニ於テ賣捌キP38ノ損失ヲ減少セシメタルヲ以テP2トノ親密ノ度ヲ増シ今回ノ立候補ニ對シ全力ヲ擧ケテP2ノ當選ニ盡力セリ即チ町内常會ニ命シテP2候補ヘノ投票ヲ申合セシメ、自ラ出席シテ猛烈ナル運動ヲ為セリ、殊ニ實弟P41ノ常會長タル湯之元常會ニハ常ニ出席シテP2候補ヘノ投票ヲ強調セリ
(二)鹿児島縣姶良郡帖佐町長P42、同助役P43ハ
(1)帖佐町三又校區各部落ハ三月末一斉臨時常會ヲ開キ推薦候補ヘ投票決議ヲ為シ候補者氏名ハ追而回覧スヘキ旨傳達シタリ
(2)四月二日開催ノ臨時常會ニ於テ、自由候補ニ投票スル者ハ國賊ナルガ故ニ、自今常會ハ一切ヲ共ニセサル旨申合セシメタリ
(3)四月七、八日推薦候補者名ヲ回覧シ各自捺印ノ上常會長ヘ提出セシメタリ
(4)四月十四日再ビP2ニ投票スル様回覧シ、各自ノ署名捺印ヲ求メタリ
(5)四月十八日臨時常會ニ於テ同月二十六日三又校ニ於ケルP2候補ノ政見發表演説會ニハ一人ノ缺席者アルベカラサルコト、不参者ハ警察ヘ報告スト威嚇セリ
(6)選擧當日常會副會長ハ投票場タル町役場入口ニ立塞リテ一所属常會員ノ手ヲ握リP2候補ニ投票シテ呉シト依頼セリ
(三)鹿児島縣姶良郡加治木町長P27ハ
縣町村長會長、大政翼賛會縣支部顧問翼賛政治体制協議會縣支部員ナルガ
(1)今回ノ總選擧ニ當リテハ推薦候補者P2ノ當選ヲ期スル為町内役場學校其他一切ノ機関ヲ擧ケテ選擧運動ニ狂奔セシメタリ。町内各常會ニ對シ臨時常會ヲ開カシメテ自ラ其レニ臨ミ投票勧誘ニ務メタリ町内全常會ニ對シ回覧板ヲ配布シ捺印セシメタリ」
(2)同年四月二十日頃姶良郡加治木町諏訪隣組會長宅ニ隣組臨時常會ヲ開キ翼賛政治体制協議會推薦候補者P2ト書キタル回覧板用ノ紙ヲ示シ「我ガ町會ハP2氏ト決定シ同氏ニ投票スルコトニナツタカラ、一票漏ラサズ同氏ニ投票セネバナラナイ、萬一他ノ自由候補等ニ投票スル者ガアルト天皇陛下ガ御定メ下サツタ推薦候補者ニ弓ヲ引クコトニナリ、陛下ニ弓ヲ引クト同シコトデ不忠トナルシ、町ヤ警察カラニラマレルト大変ナ迷惑ヲスルコトニナル」ト隣組長ガ強調シタルニ對シ或ル隣組員ヨリ「ソンナ乱暴ナ話ヤ申合ヲシテヨイカ、其レコソ選擧違反ニナラナイノカ、自由候補デ日本國民デアツテ天皇陛下ニ弓ヲ引ク様ナ人ハナイト思フ現ニX3サンノ様ナ人ニハ我ガ日本ノ國士頭山満翁ヤ我ガ縣出身ノ菱刈大将ノ様ナ立派ナ方ガ推薦ヲシテ居ラレルデハナイカ」ト詰問シタルニ「ソンナ事ヲ言フアナタハ何派カ」ト激シクナジリタル為「何派デアラウトソンナ事ヲ言フ必要ハナイト思フ選擧違反ニナル様ナ非道ヒ事ヲセネハヨイデハナイカ」ト答ヘタルニ「推薦候補者ノ方ノ事ハ何ヲシテモ違反ニナラナイ事ニナツテ居ル我ガ隣組デ我カ町デ決マツタP2候補ニ投票シナイ者ガアルト我々ガ迷惑スル絶對ニP2様ニ入レテ貰フコトヲ誓ツテ貰ヒタイ」ト強調シタル為メ一隣組員ハ「ソンナ乱暴ナ命令ハ誰ガ出シタカ隣組長ハソンナコトヲ申合セサセル権限ガアルノカ」ト問ヒタル處「此ノ事ハP27町長カラノ命令ダカラ異議アル人ハ明日町役場ニ行ツテ町長ニ談判シテ貰ヒ度イ兔ニ角P2候補ヲ入レル事ノ誓ヲシテ貰ヒタイ」ト強調シテ右申合セヲ行ヒタリ
(3)又同年四月二十五日午後八時鹿児島縣廰吏員加治木町ニ出張シ隣組會ヲ町會議事堂ニ開キ「加治木町ニ割當テタル推薦候補者ニ投票セヨ」ト強調セリ
(四)鹿児島縣姶良郡清水村姫城中姫城常會長P44ハ
同年四月二十八日夜臨時常會ヲ開キ同常會員ヲP45方ニ招集シ村常會ノ決定事項トシテ「一人モ残リナクP2ニ投票スベシ」ト言ヒ其ノ旨決議セリ
(五)同所西瓜原班長P46ハ
同年四月二十九日朝自宅ニ班員約二十名ヲ招集シ昨夜(中姫城常會)ノ決議ヲ傳ヘ一票モ洩サズ投票スベキコトヲ命ジタリ
(六)鹿児島縣姶良郡隼人町内日當山温泉場内湯之元常會長P41ハ
隼人町長P38ノ實弟ニシテ今回ノ總選擧ニ際シテハ數回ニ亘リ常會ヲ開キP2候補ノ為連續的ニ運動ヲ為シ常會員ヲシテ強テP2ニ投票セシメタリ
(1)四月二日ノ夜同地御寺ニ於ケル常會ニ於テP38ト共ニ「自由候補者ハ英米派ナリ陛下ニ弓ヲ引ク者デアルカラ必ズ推薦候補者ニ投票スベシ」ト言ヒ更ニX1候補ノ名譽ヲ毀損スル言辞ヲ弄シ其ノ選擧ノ妨害ヲ為シタリ
(2)四月二十日夜右御寺ニ於テ常會ヲ開キ隼人町三次壮年團幹部P47某ガ臨席シ交々「自由候補ヲ排撃シ一票モ洩レナクP2候補ニ投票スベシ」ト強硬ニ主張セリ
(3)四月二十九日(選擧ノ前日)夜三度目ノ常會ヲ開キ「推薦候補ハ陛下ノ直接ノ任命デアルカラ自由候補ニ投票スル者ハ國賊デアリ非國民デアル」ト宣言セリ
(4)又連續的ニ同常會員ヲ戸別訪問シ相手ガ強硬ト見レバ「今度ノ投票ハドンナ風ニスルカ」ト言ヒ又或者ニ對シテハ「必スP2候補ニ投票セザレバ後デ判リ警察ノ注意人物トナル」ト脅シ廻リタリ
(七)鹿児島縣姶良郡蒲生町長P48ハ
候補者X1ニ對シ演説會ノ為同年四月十六日午後七時半ヨリ蒲生國民學校使用方ヲ同月八日許可シタルヲ以テ同候補者ハポスターヲ貼リ演説會開催告知ヲ為シタル處、右P48ハ演説會當日同時刻ヨリ町臨時常會ヲ招集シ「出席者ハ男ニ限ル若シ出席セザル者ニハ物資配給券ヲ停止スル」ト示達セシメ演説會ヲ故意ニ妨害シ「P2候補ニ投票スヘキ事」ヲ申合セシメタリ
(八)鹿児島縣伊佐郡大口町長P49ハ
同年四月二十三日午後八時大口國民學校ニ於ケルX1候補ノ演説會ヲ妨害センガ爲P3候補ノ派ト結托シ同日同時刻ヨリ大口町公會堂ニ全部ノ臨時常會ヲ招集シP3候補ヘノ投票ヲ慫慂シ其ノ常會ノ終了(九時半)ト同時ニP3候補ノ演説會ヲ開カシメタリ
(九)鹿児島縣伊佐郡山野町平出水國民學校第一投票場管理者山野町助役P50及投票立會人P51ハ
同年四月三十日午前七時ヨリ投票ヲ開始シタル處、P52P53P54等ヲ初メ投票者ノ殆ト全員ハ投票用紙ニP3ト記名シ一々、之ヲ管理者及立會人ニ示シ「コレデヨイデスカ」ト聞キツヽ裏返シニ折リテ投票セリ、是レ明ニ事前ニ於テ一々示シテP3ニ入レタルコトヲ明カニセヨトノ命令アリタルハ明カナリ
(十)鹿児島縣姶良郡清水村姫城常會長P31ハ
同年四月二十七日(旧三月十三日)夜清水村姫城外姫城公會堂ニ臨時常會ヲ開催シ立會ノ清水村弟子丸駐在巡査ト交々立チテ「推薦候補ハ政府ガ指名シタノダカラ之ニ反對スル者ハ政府反對者デアリ、自由候補者ニ投票シタル者ハ島流シニナル」ト威嚇シ「X1ヤX3ニ投票シ彼等ヲ當選サセレハ戦爭ニ敗ケル」トテP2候補ヘノ投票ヲ強要シタリ
(十一)鹿児島縣伊佐郡菱刈町長P55ハ
(1)菱刈町壮年團名譽團長ナルガ同壮年團ハ同年四月三日演説會妨害ノ秘密申合ヲ爲シタリ
(2)同年四月十七日ノ町常會ニ於テ「X1候補ノ演説會ノ時刻ニハ必ズ緊急常會ヲ開クベキコト」ヲ決定セリ、果セル哉四月二十三日午後一時ヨリX1候補ハ菱刈前目ノ商業倶楽部ニ於テ開催セルトコロ緊急指命ヲ發シ今日同時刻ヨリ拾ケ所ニ臨時常會ヲ開キ各常會ニ於テ壮年團幹部ガ「P3候補推薦演説會ヲ爲セリ」明カニ選擧妨害タルヲ免レズ
(十二)鹿児島縣伊佐郡山野町長P56ハ
同年四月二十八日午後一時頃町民P57P58ヲ役場ニ呼出シ、町長室ニ招シ入レ「上湯カラ何票、石井カラ何票X1ニ入ルカ」ト問ヒタルヲ以テ「ソンナ事ハ判ラヌ」ト答ヘタルトコロ右町長ハ「君等モ必スX1ニ入レズニP3ニ入レル様セナケレハナラヌゾ僕ノ顔ガ立タヌカラ頼ム」ト投票ヲ勧誘セリ
(十三)鹿児島縣出水郡阿久根町赤瀬川部落隣組長P59ハ
同年四月二十九日夜「二十九日夜ノX2候補ノ演説ヲ聞キニ行クト其ノ人ノ手ガ後ニ廻ルカラ行ツテハイケナイ」ト傳ヘ廻リタリ、其ノ爲皆恐レヲ為シ一人モ同部落カラ行カナカツタガ、後デ聞クト演説ヲ聞キニ行ツタ人モ縛ラレナカツタ相ダト阿久根町波留×××番地×、P60氏ニ同部落民ガ話シタル由ナリ
(十四)鹿児島縣阿久根町濱部落部落會長P61ハ
同年四月二十九日夜常會ト稱シテ部落民全部ヲ集メ「X2氏ノ演説ヲ聞キニ行ク者ハ非國民ダ行ツタ人ノ手ガ直グ後ニ廻ルト」トテ手ヲ後ニシバラレタ恰好ヲシテ見セ演説會ノ終ルマテ集合セシメ置キタリ
斯クノ如ク自由候補者ニ投票スル者ハ懲役ニデモヤラレルト言フ風評ヲ山間僻地浦々マデ立テシメ民心ヲ恐怖セシメタリ、而シテ右ハ出水郡内各町村ニ於テ行ハレタルノミナラズ薩摩郡伊佐郡姶良郡囎唹郡ノ各町村ニモ連續行ハレ、鹿児島縣第二區ノ選擧民ラ恐怖セシメタリ、同年四月二十一日阿久根町ニ於テハ各地ニ常會ヲ開カシメ推薦候補者ニ對シ斯クナツタ上ハ致シ方ガナイカラ、各々ノ中カラ怪我人(犠牲者ノ意)ヲ出シテデモP2推薦候補者ニ投票シヨウト申合セ居タル趣ナリ
(十五)鹿児島縣姶良郡敷根村村長P62ハ
同年四月中旬翼協鹿児島支部ニ於テ縣知事立會ノ上縣第二區定員四名ニ對シ推薦四名ナリシニ依リ、之等四名ニ對シ地盤ヲ四分シ協定ヲ爲シ之ガ發表セラルヽヤ四名ノ推薦候補者名ト姶良郡全部(栗野町ヲ除ク)ハ國分町出身ノ翼賛協議會推薦ノP2ノ地盤ト協定セラレタル旨記載ノ回覧板ヲ謄寫シテ町内常會ニ配布シタリ此レ地盤協定ニヨリ候補者特定シ此ノ特定候補ノ為公吏タル村當局ガ暗ニ同氏ニ投票スベキヲ指示シタル一種ノ無届選擧運動タルヲ免レス
(十六)鹿児島縣伊佐郡大口町大田部落會長P63ハ
(1)同年四月十四日午後八時三十分頃同所大田部落P64宅ニ常會ヲ開キ「X2サンハ自由候補ダカラ、ソン人ニ投票シタリ援助シタリシテ我ガ部落ガソバ杖ヲ喰ハヌ様ニ気ヲツケテ呉レ」ト丸デ罪人扱ヒニシタリ
(2)同年四月二十二日午後八時右同所P64宅ニ人田部落民高柳部落民一同ヲ招集シテ、常會ヲ開キ市來政香町議員P65立會ノ上右P63ハ部落民ニ對シ「自由候補ヲ投票スルト云フ様ナソンナ不心得ナ考ヘヲ起ス人ノナイ様ニソシテ是非P3候補ニ投票シテ呉レ」ト繰返シ命シタリ
(3)同年四月三十日朝七時右大田部落P64宅ニ常會ヲ開キP63ハ「本日ノ投票ハ間違ナク推薦候補者P3氏ニ投票スル様ニ」ト申渡シ一同打連レテ投票所ヘ向ヒ、全部ノ投票ヲ終リシ後「誰モ間違ナクP3候補ニ入レタカ」ト問ヒ訊シ帰宅セリ
(十七)鹿児島縣囎唹郡岩川町馬場常會長P66ハ
同所馬場常會場ニ常會ヲ開キ部落民ヲ集メ而シテP5候補ノ演説會ヲ爲シタリ
(十八)同郡末吉町岩崎飯塚部落會長ハ
常會ト稱シ部落民ヲ集メP5氏ノ演説會ヲ為シタリ
(十九)鹿児島縣出水郡阿久根町山下水野部落區長P67ハ
同年四月二十五日右區長外數名ハ町長P68ノ命令ナリトテ「P2」ノ名前ヲ記載シタル紙ヲ各戸ニ持廻リ「推薦候補者デアル此ノ人ニ入レヌ人ハ國賊ミタ様ナモノデアル又大東亜戦爭ハ負ケルソウダ」ト告ケ歩キタリ
(二十)鹿児島縣出水郡阿久根町波留土野部落區長P23ハ
同年四月二十六日自宅ニ臨時常會ヲ開キ部落擔當教員某ヲ迎ヘ「國ガ推薦シタP2様ニ投票セヌトスレバ學校ノ教員ヤ警察署長ハ首ニナル可哀相ダト同情シテ貰イタイ、又投票ヲ怠ツタ人モ警察ニ引張ラレルコトニナルダラウソンナ人ハ非國民デアル大体自由候補等云フ非國民ハ死ンデ仕舞ヘハコンナ心配ハナイノダ」ト繰返シ★言ハシメP2候補ニ絶對投票スル様申渡シタリ
(二十一)鹿児島縣囎唹郡末吉町長P69同町吏員P70某ハ
同年四月三十日衆議院議員選擧ニ関シ、末吉町長ハ前後三回ノ常會ヲ開キP5ニ投票スヘキヲ強調シ且町役場P70某ハ「此度ノ自由候補ハ一個人ノ利益ノ爲ニハ天皇陛下ニモ弓ヲ引ク者共デアルコンナモノニ欺カレル様デハ諸君モ國賊トナル若シ翼賛推薦者ニ投票スルナラハ帳簿ニ印ヲ捺シナサイ、印ヲ捺サナイ人ハ國賊デアルカラ之レカラ配給品ハヤラヌ」ト言ヒ町民ハ日常品ノ配給ガナケレバ仕方ナイト皆捺印シタリ
鹿児島縣第二選擧區内各町村共總テ常會ヲ通シ洩レナク以上ノ如キ方法ニテ各町村共推薦候補(地盤協定ニ依リ特定シ居レリ)ニ投票スル様猛烈ナ運動ヲ為シ選擧民ヲシテ恐怖セシメタリ
(丁)壮年團関係選擧運動
(一)鹿児島縣姶良郡帖佐町三叉校區壮年團長某ハ
同年四月二十四日開催ノ同校區壮年團會合ニ於テ町長助役ト共ニ「住吉部落ニ於テハ自由候補ニ投票スル疑アル者ハ己ニ團幹部迄報告済ナリ」此ノ際疑ヒアル者ノ宅ニハ團員ガ膝誥談判ニ行クコトニナツテ居ル」「此ノ決定ニ服従シナイ者ニハ部落常會ハ今後一切ヲ共ニセズ」ト決議セシメタリ
(二)鹿児島縣姶良郡三次壮年團幹部P47某ハ
同年四月二十日夜隼人町オ寺ニ内湯之元臨時常會ヲ常會長P41ガ開催シタルニ臨ミ「自由候補ヲ排撃シ一票モ洩レナクP2候補ニ投票スベシ」ト強硬ニ主張シタリ
(前顕(丙)(六)(2)参照)
(三)鹿児島縣姶良郡蒲生町姶良郡壮年團長P71ハ
姶良郡内各町村壮年團長ヲ集メ此ノ度ノ選擧ニハ推薦候補ニ選擧民ヲシテ投票セシメル様壮年團トシテ全力ヲ盡スベキヲ申渡シ且自身ハ壮年團長ノ腕章ヲ附ケP2候補ノ應援演説ニ廻リ壮年團長トシテ選擧運動ニ狂奔シタリ
(四)鹿児島縣伊佐郡山野町山野壮年團長P72同副團長P51、同郡大口町大口壮年團副團長P73ハ
同年四月二十七日午後二時山野町尾之上公會堂ニ臨時常會ヲ召集シ部落全員集合ノ上ニテ、P51ハ「必スP3候補ニ入レナケレバナラヌ、断シテX1ヤP74ニ賛成シテハナラヌ彼等ハ共産党ノ親分テアル」「自由候補ニ投票スレバ警察ニ引ツパラルヽゾ」ト嚇シ,P72、P73ノ両名ハ交々「P51氏ノ言ハルル通リテアルカラ必ズP3候補ニ投票セヨ」ト命令的ニ投票ヲ依頼シ、翌四月二十八日朝右P72ハP57、同P58宅ヲ訪問シ「アンナ風ダカラ皆々トメテ投票シテクレ」ト言ヘリ
(五)鹿児島縣伊佐郡菱刈町吏員(壮年團幹部)P75同町薬種商(壮年團幹部)P76ハ同年四月二十三日菱刈商業倶楽部ニ於ケルX1候補ノ演説會附近ヲ徘徊シ、聴衆ヲ威圧シ演説會ヲ妨害セリ
(六)鹿児島縣伊佐郡大口町壮年團員(新聞記者)P73ハ
同年三月三十一日午後八時三十分伊佐郡大口町太田P64宅ニ於ケル大田部落常會ニ於テ「此度ノ選擧ニ於テハ是非共推薦候補者ニ投票スル様ニ」ト言明シ一同ニ誓ハシメタリ
(七)鹿児島縣囎唹郡岩川町壮年團長P77、同岩川町長P78同岩川町五十町P79、同P80、同P81、同岩川町警防團長P32ハ
岩川町壮年團トシテP5候補ニ應援シ常會ニ於テ同氏ニ投票スル様強要セリ
(八)同縣出水郡米之津町壮年團副團長P82ハ
同年四月二十八日附葉書印刷文書ニヨリ壮年副團長ノ資格ニテ米之津町有権者約三十人ニ對シ推薦候補P3ニ投票ヲ願フ旨ノ文書ヲ發送セリ
(九)鹿児島縣出水郡高尾野町下高尾町上大政翼賛會員P83ハ
同年四月二十二日午前八時四十分ヨリ九時五十分迄高尾野國民學校講堂ニ於テ同校五年生以上ノ男女生徒及受持教員計八百名ニ對シ「今回ノ選擧ニ於テ推薦サレナカツタ候補者ハ何カ缺陷ノアル人デアツテ其ノ上米英崇拜ノ自由主義者デアル、萬一ソンナ人ガ、當選スル様ナコトガアレバ日本ハ大東亜戦爭ハ敗ケルノダ、ソシテ大東亜戦爭ニ勝ツテ、ヨイ世ノ中ニスル爲ニ政府ガ推薦候補者ト言フモノヲ選ンデ呉レタノデアル、ソレダカラ皆サンノ父兄ハ一人モレナク推薦候補者ニ投票セラレル様ニ間違ヒナク傳ヘラレタイ、ソシテ高尾野町ハP3ト言フ候補者ニ決シテアルノダ、字ニ書イテ見タリ、口ニ何度モ唱ヘテ見タリシテ忘レズニ父兄ニ傳ヘルコトニセヨ」ノ繰返シ繰返シ話ヲ為シタリ
(十)鹿児島縣姶良郡隼人町壮年團長P84ハ
同年四月二十四日頃同町出征軍人家族慰安會ヲ催シタル時「胸ニ推薦候補者」ト書キ「背中ニP2」ト書キ、ハダカオドリヲ爲シP2候補ノ選擧運動ヲ為シタリ
(十一)鹿児島縣第二選擧區内各郡町村壮年團員ハ
右第二區伊佐郡、姶良郡、薩摩郡、出水郡、囎唹郡、全部ニ於テ「翼賛壮年團ナル腕章(赤地ニ白字)ヲ附シ多数ノ團員ヲ使ヒ同年四月二十日ヨリ三十日迄翼賛政治体制協議會推薦ノP2候補、P3候補、P5候補P4候補等ノ選擧運動ヲ爲シ一般選擧民ニ對スル示威行動ヲタクマシクセリ
(十二)鹿児島縣出水郡阿久根町光接寺住職大政翼賛會幹部ト稱スルP85ハ
同年四月二十七日午後一時同町大川中之濱平迫部落中P86某宅ニ部落民約八十名ヲ集メ説教ト偽稱シ無届選擧運動ヲ為シ「今回ノ選擧ハ大東亜戦爭ニ勝ツ為ニ是非共出サネハナラヌ人ヲ代議士ニスル目的テ行ハルノデ、其ノ為推薦候補者ト言フモノヲ政府ガ選ンダノデアル、萬一政府ガ選バヌ候補者ニ投票スレハ戦爭ハ負ケルニ決マツテ居ル、我町ハ多年X2候補ニ投票シテ居タノデアルガ、X2候補ハ自由候補デアルカラ今迄ノ因縁ヤ情實ヲ立チ切ツテ政府ガ選ンダP2氏ニ投票セネバナラヌ今迄ノ選擧デハドノ候補者ガヨイヤラ悪イヤラ分ラナカツタガ今度ハ政府ガ大キナ目デ見テ選ンデ呉レタノダカラ良イ候補ト悪イ候補トハ明カニ分ツテ居ル、吾々ガ山ノ中ニ居ツテ澤山ノ木ヲ見上ゲルトドレガ高イヤラ低イヤラ又ドレガ良イヤラ悪イヤラ分ラヌガ高イ所カラ見ルトスグ分ル様ナモノデ政府ガ高イ所カラ選ンダノダカラ推薦候補者ノP2氏ニ投票シサエスレバヨイノダ、ソレヲ間違フト政府ニ圧迫セラレテ非道イ目ニ逢フゾ」ト半説教ノ如ク半演説ノ如クヤツテP2候補ノ選擧運動ヲ爲シタリ
(十三)鹿児島縣壮年團P87ハ
選擧區内(縣下全部ニ亘リ)各町村ノ壮年團長ニ四月十日以降数次ニ指令ヲ發シ或ハ自身各町村ニ出張シ或ハ各町村壮年團長並ニ幹部ヲ鹿島市ノ壮年團事務所ニ招致シ各地域別ニ割當テタル翼賛政治体制協議會推薦ノ特定候補者ヲ當選セシメ非推薦候補者ヲ落選セシムル為「推薦候補者ハ陛下ノ御定メ下サレタ候補者デアリ自由候補者ハ自由主義思想ノ持主デ英米親和派デアル」又「自由候補者ヲ援助シタリ之ニ投票シタリスルモノハ陛下ニ弓ヲ引クモノデアル」又「推薦候補者ハ政府ガ非常時局ニ必要ニシテ有力ナリト見テ選ンダ候補者デアルカラ之ヲ援助シ之ニ投票スレハ大東亜戦爭ハ勝テルガ非推薦候補者ハ國民ノ知ラナイ方面カラ金ヲ貰ツテ選擧運動、ヲスルノデ之ヲ援助シタリ之ニ投票シタリスルト戦爭ニ負ケル」又「自由候補者ハ國賊デアル之ヲ應援シタリ之ニ投票シタリスル者ハ國賊デアル」等ノ流言ヲ縣内ニ流布セシメルコトヲ命シ又壮年團幹部ニ對シテ左記ノコト等ヲ選擧人ニ通達スルコトヲ命シタリ
「自由候補者ニ加擔スル者ニハ日用品ノ配給ハ停止サレル」「自由候補者ヲ應援シタリ其運動ノ勞務者ニ為ツタリスル者ハ警察ニニラマレ、町村當局、縣當局ガ将来其者ヤ縁故者ニ圧迫ヲ加ヘルガ推薦候補者ニ對シテハ何ンナ應援ヲシテモ、ドンナ勝手ナ違反行為ヲシテモ選擧違反ニハ問ハレナイコトニ為ツテ居ル」「自由候補者ヲ應援シテ人ノ子孫ハ将来公域等ハ與ヘラレヌコトニ為テ居ル」
右等ノコトヲ鹿児島縣會副議長兼農會長P88及縣會議長兼翼賛政治体制協議會縣支部長P89等ト共ニ相謀リ縣下各職域ニ徹底セシムル様狂奔シ且非推薦候補ニ應援スル者候補者ノ縁故者等ニ對シ應援ノ手ヲ引カシムル様各町村壮年團員ヲシテ膝詰談判ヲ為サシムルコトヲ壮年團幹部ニ命シタル等アラユル非合法非愛國手段ヲ盡シタリ
(成)其ノ他一般関係選擧運動
(一)鹿児島縣伊佐郡本城村P90ハ
数名ト共ニ同年四月二十三日午後三時本城國民學校ニ於ケルX1候補ノ演説會場附近ヲ徘徊シ演説會ニ入ラントスル本城町P91外数名ヲ呼ヒ止メ「何ンノタメニ演説會ニ行クカ」トカ「返レ★」ト威嚇シ演説會ヲ妨害セリ取締ノ大口署巡査ハ此ノ事實ヲ目撃スルモ一言ノ注意モ與ヘズ職務ヲ懈怠シ居タリ此種ノ行為ハ菱刈商業倶楽部大口町羽月議堂、西太良校、薩摩郡鶴田校、求名校、黒木校、永野校大村上手校下手永福寺ニオートバイ自動車ニ分乘セルP3派大口町P92某(鹿日支局長)外數名ガ何レモ妨害行為ヲナセリ
(二)同年四月二十二日伊佐郡内各町村ノ民家及公營場ニ商業報告會ノ名ヲ以テ「推薦制ヲ支持シマセウ正シイ選擧手近イ奉公」ト記サレタルポスターヲ貼布シ之ト竝デ「翼賛政治体制協議會推薦候補者P3」ナル張札又ハ其ノ演説會告知ノポスターヲ貼布シタリ而ヒ是等ハ所轄署ノ許可印モナク責任者ノ住所氏名モナキ竒怪ナルモノニテ其ノ数約八百ニ及ベリ
(三)現住所ニ選擧権無ク原籍ニ帰リ投票シタルモノP93某等ニ名アリ
以上ノ如クニシテ縣知事ヲ初メトシ縣市町村ノ官公吏、學校長、警防團員、警察署員、壮年團員等知事ノ指令ノ趣意ヲ体シテ一面推薦ヲ受ケタル特定候補者ノ為メ公然選擧運動ヲナシ、他ノ自由候補者(非推薦候補者)ヲ落選セシムベク公然ト選擧妨害ヲナシ選擧人ヲシテ自由公正ナル選擧ヲナサシメズ、以テ所期ノ目的ヲ達成シテ前記ノ如ク推薦候補者ノ當選ヲ見ルニ到ラシメタリ
第四、他面P8知事ハ昭和十七年四月二十日附ヲ以テ懸下各学校長ニ對シ三十日行ハルベキ衆議院議員總選擧ニ付テハ翼賛政治体制協議會ガ設ケラレ推薦制度ニヨリテ大東亜戦爭目的達成ノ為清新強力ナル議會確立ヲ企圖シ、目下翼賛選擧貫徹運動展開中ニ有之候處貴下ニ於テモ會員ニ對シ又常會等ニ於テ右ノ趣旨ヲ十分ニ理解セシメ推薦制度ノ意義ノ徹底ヲ期セラレ度此段通牒候也」ト通牒シ且推薦状ヲ發スヘキコトヲ附記シ其推薦状ノ形式ハ「翼賛政治体制協議會推薦候補者‥‥‥氏ハ最適任ト認メマスカラ、アナタノ一票ヲ同氏ニオ與ヘ下サイマス様オ願ヒシマス」トナスベキコトヲ指令シタリ、而シテ右通牒ハ鹿児島縣教育會長ノ名ニヨリ發セラレタルモノナルガ教育會長ノ名ニ隠レテ行ハレタル選擧運動ナリ文中「推薦制度ニヨリ」テ「推薦制度ノ意義ノ徹底」等ノ文言ヲ使用セルモ今次ノ選擧ハ推薦制度ニヨルモノニ非ズ衆議院議員選擧ニ於ケル推薦トハ選擧人ガ他人ヲ議員候補者トシテ届出ヲ為シ選擧ヲ行フ場合ノミニシテ其他ニ推薦ナル制度ナシ。翼賛政治体制協議會ハ政治結社ニシテ協議會ニ於テ議員候補者ヲ推薦スルコトアルモ所謂推薦制度ト謂フベカラス往時ニ於ケル民政黨政友會等ガ議員候補者ヲ推薦推擧スルト何等異ル處ナキニ特ニ推薦制度ナルモノアルガ如キ言辞ヲ用ヒ選擧人ヲシテ制度ニ非サルモノヲ制度ナルガ如ク誤信セシメタルモノ、又其ノ掲示シタル推薦状ノ形式ニ特ニ「翼賛政治体制協議會推薦候補者」トシタルハ推薦候補者ノミニ應援ヲ爲サシメントスル意圖ニ出ルモノニ外ナラズ、巧ニ縣教育會長ノ名ニ隠シ啓蒙運動ニ名ヲ藉リテ翼賛選擧ニ制度ニ非ル推薦ヲ推薦制度ナル文句ヲ用ヒテ結ヒ付ケ推薦候補ノ為ニ推薦状ヲ發スヘキコトヲ依頼慫慂シタル極メテ奸悪ナル選擧運動ナリ
第五、又P8知事ハ昭和十七年四月十五、六日頃翼賛政治体制協議會鹿児島縣支部長P89ニ命シテ推薦候補ノ爲ニ左ノ如ク全選擧區内ノ地盤割當(投票ノ配給)ヲ行ハシメタリ
P5囎唹郡内一円各町村(末吉、岩川志布志各署全管内)
P2姶良郡内一円各町村(横川、加治木、國分各署管内但シ栗野町ヲ除ク)及出水郡内阿久根署管内一円(阿久根三笠、東長島、西長島四町村)
P3伊佐郡内一円各町村(大口署管内)姶良郡横川署管内栗野町出水郡大川内、米之津、高尾野、野田各町村薩摩郡内宮之城署管内宮之城鶴田、大村、佐志、黒木、藺牟田、永野、求名各町村(山崎村ヲ除ク)
P4川内署管内一円(川内市及薩摩郡水引、樋脇、上東郷、下東郷衣利入來、高江、高城各町村)
宮之城署管内山崎村甑島署管内一円(上甑、下甑里各長村)
而シテ右地盤割當アリテ推薦候補者ヲ當選セシムヘク一票ト雖モ非推薦候補者ニ投票ヲ興フヘカラストノ立前ニヨリ其ノ趣旨ヲ全選擧區内選擧人ニ徹底セシムル様指示シテ前項掲記ノ如キ運動ヲ為サシメタリ。此ノ結果トシテ四月三十日投票ヲ行ヒ之ヲ開票シタル結果
得票數 二五、三六〇 P2
 〃  一八、四一〇 P3
 〃  一七、六二七 P5
 〃  一七、二〇八 P4
ヲ以テ當選者トシ(何レモ推薦候補者)
得票數 三、六二九 P7
 〃  二、六二三 X1
 〃  二、四九七 X2
 〃  二、二八七 P6
 〃    三二七 X4
 〃    二六四 X3
ヲ落選者トシタリ(何レモ非推薦候補者)
右ノ結果ニヨレハ當選者ノ末位ナルP4ノ得票數一七、二〇八票ニ對シ次點者ナルP7ノ得票三、六二九票ニシテ其ノ差一三、五七九票ノ驚クヘキ懸隔ノ見ル又右當選者四名ノ得票合計七八、六〇五ニ對シ落選者六名ノ得票合計一一、六七二ヲ得タルニ過キ又殊ニX1ハ昭和十一年ノ總選擧ニハ一五、四三四票ヲ得テ第三位ニ當選シ昭和十二年ノ總選擧ニハ一七、一三二票ヲ得テ第一位ニ當選セルニ拘ラス今回ノ選擧ニハ右ノ如ク僅二二、六二三票ヲ得テ落選シタリ此ノ結果ノミシ見モ如何ニ地盤ノ割當投票ノ配給ノ趣旨が徹底シテ行ハレ又不法手段ニ依ル彈圧ガ行ハレ選擧ノ結果ニ異動ヲ及ボス虞アルモノナルカヲ想像スルニ難カラス
第六、以上ノ如クニシテ縣知事ヲ初メトシテ縣、市町村ノ官公吏、學校長、警防團員、警察署員、壮年團員等カ知事ノ指定ノ趣意ヲ體シテ一面推薦ヲ受ケタル特定候補者ノ為公然選擧運動ヲ為シ他ノ自由候補者(非推薦候補者)ヲ落選セシムヘク公然ト選擧妨害ヲ為シ選擧人ヲシテ自由公正ナル選擧ヲ為サシメズ以テ所期ノ目的ヲ達成シテ前記ノ如ク推薦候補者ノ當選ヲ見ルニ到ラシメタリ、而シテ、事ノ茲ニ至レル由來ヲ按スルニ本件選擧ニ先チ、政府ハ昭和一七年二月十八日臨時閣議ヲ開キ總選擧對策トシテ大東亜戦爭完遂翼賛選擧貫徹運動ノ方策ヲ決定シ大東亜戦争完遂翼賛議會ノ確立、翼賛選擧ノ實現ヲ目的トスル一大啓蒙運動ヲ起シ、部落會町内會隣保班等ノ市町村組織ハ勿論各種團体其ノ他有スル組織ヲ動員シテ活溌ナル展開ヲ期シ最適候補者推薦ノ氣運ヲ積極的ニ釀成セシムルコトトシ政府及地方廰ニ於テ之ガ運動全般ヲ指導シ大政翼賛會(翼賛壮年團ヲ含ム)及選擧粛正中央聨盟ハ政府及地方廰ニ協力シ民間運動ヲ展開スルモトナシ、政府ハ右決定ニ基キ同年二月二十三日大政翼賛會ノ最高役員及總務ヲ大部分トスル三十三名ヲ首相官邸ニ招待シ首相ヨリ政府ノ選擧對策ヲ説明シ右三十三名ハ直ニ協議會ヲ開キ其ノ結果政府ノ要請ニ應ヘテ積極的且全面的ニ之ニ協力スルコトシ、大東亜戦爭終局ノ目的完遂ノ爲來ルベキ總選擧ニ際シ強力ナル翼賛議會体制ノ確立ヲ期スルコトヲ申合セタル後、翼賛政治体制議會ヲ結成スルコトヲ決定シ會長ニP94大将ヲ推擧シ會長ヨリ十三名ノ特別委員ヲ指名シテ運動方策ノ基本方針トシテ、適正ナル全國的推薦運動ヲ行ヒ、東京市ニ本部、各道府縣ニ支部ヲ設置シ、臨時政治結社ノ届出ヲナシ候補者ヲ推薦決定シ、推薦候補者ニ對シテハ、本部及各支部ハ夫々適當ナル方法ニ依リ第三者ノ推薦運動ヲ行フモノト爲シ同年三月四日政治結社ノ許可ヲ受ケ、四月五日四百六十六名ノ候補者推薦ヲ終ハリ之ヲ當選セシムル為ニ裏面ニ於テハ官憲、大政翼賛會其他各種ノ地方團体ト聨結シテ其ノ全力ヲ傾倒シ各支部ニ命シテ候補者ノ選擧事務長選擧委員ニ至ル迄幹旋ノ勞ヲ取ラシメ又各界知名ノ士ニ委嘱シテ候補者ノ應援演説ヲ為サシメ候補者ニ對シテハ相當ノ運動費ヲ給與シタリ、殊ニ各道府縣市町村ニ支部ヲ設ケ地方長官市町村長ヲ支部長トシ道府縣市町村會議員ノ一部及各種團体ノ長等有力者ヲ會員トスル大政翼賛會ハ同年二月選擧直前ニ至リ急ニ全國各道府縣市町村ニ亘リテ一斉ニ其ノ指導監督ノ下ニ存在スル壮年團ノ發會式ヲ擧行セシメ壮年團員ハ啓蒙運動ト稱シテ演説會又ハ集會ヲ催シ推薦制支持若ハ推薦候補援助ノ申合ヲナシ翼賛會ノ會員ト共ニ一齊ニ起チテ啓蒙運動ニ名ヲ藉リテ推薦候補者支持ノ運動ヲ為シタリ
大政翼賛會鹿児島縣支部ニ於テモ縣知事其ノ支部長トナリ縣ノ部長課長等吏員町村長各種團体ノ長、學校長議員等ノ名譽職ヲ其ノ構成員トシ縣支部ノ下ニ各市町村毎ニ支部ヲ置キ、支部長ニハ市町村長ヲ充テ其ノ構成員ハ市町村吏員學校長、區長市町村會議員、各種團体(農會、水産組合、産業組合、青年團婦人團体、産業報國會、宗教團体、醫師會等)ノ長ヲ以テシ其ノ機関トシテ縣ニ縣協力會議、郡ニ郡協力會議ヲ有シ市町村ニ市町村常會學校區常會、部落常會、隣組常會ヲ設ケ、縣協力會議ニ於ケル決議事項又ハ申合事項ハ郡協力會議以下順次市町村常會、學校區、部落、隣組各常會ヲ通シテ最下部ニ之ヲ徹底セシムル組織ナリ、又鹿児島縣翼賛壮年團ハ縣、郡市町村ニ設置セラレ縣壮年團ハ縣知事ヲ名譽團長トシ、知事ノ推薦ニヨリ團長ヲ戴ク(昭和十七年三、四月當時ハP87團長タリ)郡壯年團ニ於テハ郡内ノ町村長會長又ハ縣會議員ヲ以テ團長トシ市町村壮年團ニ於テハ市町村長ヲ名譽團長トシ議員學校長又ハ各種團体中ヨリ團長ヲ選ヒ上下一体トナリテ翼賛會ノ別働体乃至推進機関トシテ活溌ナル活動ヲナシ尚警防團農會、水産組合、産業組合、青年團婦人團体、商業報國會、宗教團体等ト相聨繋シテ選擧期間中推薦制絶對支持、推薦候補ノ當選ヲ期シ縦横ニ猛運動ヲ為シタリ
第七、要スルニ今次鹿児島縣第二區(第一區第三區モ同様)ニ於ケル選擧ニ前項掲記ノ如キ不法不正ノ事實カ行ハレタルコト、而シテ前項掲記ノ事實ハ僅ニ其ノ一部ニシテ此種ノ事實ハ全選擧區ニ亘リ各町村ノ隅々ニ至ルマテ徹底シテ行ハレタルモノニシテ是等ノ事實ハ悉ク鹿児島縣知事P8ノ指令ニ基キ縣下各官公吏、學校教職員警察署員警防團員、壮年團員、市町村隣組常會ノ主脳部等ガ終如一貫シテ行ヒタル一聨ノ運動ニシテ一面推薦候補ノ當選ヲ得セシメントシ、他面非推薦候補落選ヲ期スル選擧運動乃至選擧妨害運動ナリ而シテ如上ノ事實ハ衆議院議員選擧法(單ニ選擧法ト称ス)及其ノ附属法令ヲ無視シ名ヲ選擧ニ藉リテ選擧法所定ノ手續ヲ以テ為シタリト雖モ、毫モ公平ナル選擧ヲ行ヒタルニ非ズ、豫メ定メラレタル推薦候補者ヲ衆議院ニ送ラントシ、得票地盤ノ割當即チ投票ノ配給ヲナシテ以テ所期ノ結果ヲ擧ゲタルモノニシテ、斯クノ如キ事實ヲ以テ選擧ト稱スベキニ非ズ以上ノ結果トシテ是等ノ事實ハ(一)衆議院議員選擧法及其ノ附属法令ニ違反シ(二)法律ヲ蹂躙シテ選擧ニ所謂公選ノ精神ヲ無視シ遵法ノ精神ヲ紊リ、(三)選擧ニ関係アル縣知事以下官公吏其他ノ職員ガ敢テ選擧運動ヲナシテ選擧法ニ違反スルノ行為ニ出デ(四)縣知事以下官公吏其他職員ガ選擧ノ公正ニ行ハルヘキコトヲ監視シ違反行為無之様取締ヲナスヘキ職責ニ在ル者ガ何等ノ取締ヲナササルノミナラス、却テ違反行為ヲ助長セシムルノ所為ニ出テタルモノナリ
八、惟フニ帝國憲法第三十三條ニハ帝國議會ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ構成スト定メテレ同第三十五條ニハ衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニヨリ公選セラルタル議員ヲ以テ組織スト明定セラレタリ、即帝國議會ノ一院タル衆議院ヲ組織スル議員ハ選擧法ノ定ムル処ニヨリ公選スベキコトハ憲法ニ於テ定メラレシトコロナレハ衆議院議員選擧法ハ憲法附属ノ法律ナリト謂ハザルヘカラズ、然ラバ選擧法ニ違反シ公選ノ精神ヲ無視シテ行ハレタル選擧ハ唯々選擧法ニ違反シタリト云フニ止マラズ憲法ニ所謂公選ノ精神ヲ紊リ憲法ニ違反シテ行ハレタルモノト謂ハサルベカラズ
今次鹿児島縣第二區(全縣下同様ナリ)ニ於テ行ハレタル選擧ノ状態既ニ述ヘタル如シ将ニ之レ選擧法(第九十九條第二項、第百十六條ヲ含ム)及其ノ附属法令(選擧ノ執行ニ関スル規則及選擧手續ニ関スル規定ヲ含ム)ニ違反スルノミナラズ憲法ニ違反シテ行ハレタルモノト謂フベシ選擧ガ法令ニ違反シテ行ハレタリト謂フ蓋シ是レヨリ大ナル違反ナカルベシ、而シテ其ノ結果ガ選擧ノ結果ニ重大ナル影響ヲ及ホスノ虞有ル事否重大ナル影響ヲ及ホシタルコト當落ノ結果ニ徴スルニ明瞭ナリ果シテ然ラバ鹿児島縣第二區ニ於ケル選擧ハ之ヲ無效ナリトナスベキモノナリト謂フニ在リテ
被告ノ答辯ニ對シ、縣教育會長名義ニ依ル縣知事P8ノ發シタル通牒(甲第一号証ノ一)ガ同縣知事ノ不知ノ間ニ發送セラレタリトノ事實並ニ同知事ガ右事實ヲ知リタルハ選擧終了後五月二十日頃ナリトノ事實ハ否認ス、被告ハ右通牒ハ第一區ヨリ立候補セルP95ノ為メ教育関係者ニ其ノ應援ヲ為サントスル者アルニ依リ之ニ發シタルモノノ如ク主張スルモ右高城候補ハ第一區ヨリ立候補セルモノナルニ右通牒ハ第一區ノミナラス第二區第三區トモ廣ク縣下全般ニ亘リ各學校長ニ發セラレシモノニシテ獨リ高城候補ノミニ止マラス翼協推薦候補支持ノ為發セラレシモノタルコト其ノ文意ニ徴シ又甲第一号証ノニト彼此對照シテ明瞭ナリ、被告ノ主張スル處ハ後日ニ到リ考案セラレタル辯疏ニ過ギサルナリ、又P8知事ガ推薦候補ノ地盤割當ニ付関知セズト謂フハ世人ヲ盲目ト做シタル論ナリ。此ノ地盤割當ノ決定シタル昭和十七年四月一六日知事、鶴鳴館ニ於ケル縣會倶楽部翼選懇談會ニ出席シ翼協支部長P89縣會副議長P96其ノ他二十數名ト共ニ選擧ニ関シ懇談ヲ遂ケタル事實明白ニシテ知事ガ推薦候補ノ地盤割當ヲ指揮シ之ニ参畫シタルコト疑ヲ容レサル處ナル旨陳述シ
被告代理人ハ本訴ヲ却下ストノ判決ヲ求メ然ラザルトキハ原告ノ請求棄却ノ判決ヲ求ムル旨申立テ其ノ荅辯トシテ
一、原告等ガ昭和十七年四月三十日施行セラレタル鹿児島縣第二區ニ於ケル衆議院議員選擧ノ候補者ナリシコトハ之ヲ認ムルモ、本件ニ於テハ原告等ハ右選擧ノ效力ニ関スル訴ヲナスモノナルモ、ソレ自体ハ適法ナル訴ナリ、衆議院議員選擧法第八十一條同第八十二條ノ選擧ノ效力ニ関スル訴ト謂フ、當該選擧ガ「選擧ノ規定ニ違背シタルコト」ヲ理由トシテ其ノ無效ヲ主張スル為ニ許サレタル訴訟ニシテ、汎テ選擧ニ関スル規定ト謂ヘバ或ハ選擧運動取締規則、選擧干渉防止ノ規則等ヲモ含ミ極メテ多岐ニ亘ルベシト雖モ、茲ニ所謂「選擧ノ規定ニ違背ス」トシテ訴ノ原因トナルハ特ニ選擧ソノモノガ有效適法ニ行ハレザル場合即チ選擧執行ノ手續ニ関スル規定ニ違背シタル場合ノミヲ指稱スルコトハ學理上ニ於テモ確然セラルル所ナリ甞テ行政裁判所ニ於テハ町村會議員選擧ニ於テ町長又ハ區長ガ選擧干渉ヲ為シ又自ラ選擧事務ニ関係アル吏員ナルニ拘ラズ関係選擧區内ニ於テ選擧運動ヲ為シタリト謂フ案件ニ於テ町村制ノ選擧ノ效力ニ関スル規定中選擧ノ規定ト謂フハ選擧執行ノ手續ニ関スルモノヲ指稱シ罰則ノ規定ノ如キハ之ヲ包含セズ、選擧ニ関係アル吏員ガ其ノ選擧區内ニ於テ町村會議員ノ選擧運動ヲ為シタリトスルモ、之ヲ以テ町村制第三十二條ノ所謂選擧規定ニ違背スルモノト謂フコトヲ得ザル旨判決シ(昭和四年六月十五日及昭和三年五月三十一日宣告)又市會議員選擧ニ際シ警察官廰ノ選擧運動取締公正ヲ失シ従テ選擧ノ結果ニ異動ヲ及ボスノ虞アリトスルノ訴ニ對シ選擧訴訟上選擧ノ規定ニ違背スル云々ト言フ、選擧執行手續ニ関スル規定ノ違背ヲ意味シ選擧運動ノ取締ニ関スル規定ヲ包含セズト判決シタルハ昭和三年七月十七日昭和六年三月二十三日宣告)ハ行政裁判所ガ以上ノ案件ニ於テ市制三十五條又ハ町村制第三十二條ヲ衆議院議員選擧法第八十二條第一項ト同趣旨ニ解釋シタル結果ニシテ両法律ノ趣旨毫モ異ルナシ、要スルニ選擧ノ效力ノ效力ニ関スル訴ハ選擧執行ノ手續ガ法規ニ違背シ而モ之ガ為ニ當選ノ結果ニ異動ヲ及ボスノ虞アル場合ニ於テノミ許サルルモノナリ、従テ選擧手續ニシテ法規ヲ遵守シ執行セラレタル以上選擧運動取締ニ関スル規定違背ノ如キ或ハ選擧取締ノ不妥當ノ如キハ選擧無效訴訟ノ原因トシテ適當ナラザルモノト謂フベシ
而シテ本訴ニ於テ原告ガ其ノ原因トシテ主張スル事實ハ要スルニ鹿児島縣知事P8ヲ初メトシ縣、市町村ノ官公吏、學校長警防團員警察署員、壮年團員等ガ特定推薦候補者ノ為、公然選擧運動ヲ為シ他ノ自由候補者非推薦候補者ヲ落選セシムベク、公然ト選擧妨害ヲナシタリト謂フニ外ナラズシテ、斯カル事實アリトスルモ、ソレ自体巳ニ選擧ノ效力ニ関スル訴訟ニ於ケル選擧ノ規定違反ト謂フコトニ該当セサルモノナルコトハ前述ノ如クニシテ本訴ハ此種訴訟トシテノ適法ノ原因ト爲シ得ベキ選擧執行手續違背及當選ノ結果ニ異動ヲ及ボスベキ虞アル事實ノ主張ヲ含マザルモノナルヲ以テ本案ノ審理ヲ俟タズシテ不適法トシテ却下セラルベキモノナリ、
二、假ニ本訴ガ其ノ要件ヲ具備スルモノトスルモ原告主張事實ノ誤レルコトヲ指摘シ請求ノ棄却ヲ求ムルモノナリ、即チ
鹿児島縣知事P8ハ昭和十七年二月十八日閣議決定ノ「翼賛選擧貫徹運動基本要項」ノ趣旨ニ従ヒ大東亜戦爭ノ完遂ヲ目標トシテ清新強力ナル翼賛議會ノ確立ヲ期スル為這般衆議院議員總選擧ノ施行セラルルニ際シ一大擧國的國民運動ヲ展開シ、以テ重大時局ニ對處スベキ翼賛選擧ノ實現ヲ期シタルモノナリ、之ガ為ニ部下ヲ督勵シ大政翼賛會縣、市町村支部、翼賛壮年團、其他、各種團体ノ協力ヲ得テ熱心事★従ヒタルモノナルガ、本運動ト選擧運動トヲ混淆シ本運動ニ名ヲ藉リテ選擧運動ヲ為スガ如キコトナカラシムルコトニ、特ニ注意ヲ拂ヒ、選擧期間ニ入リテハ選擧倫理化運動ヲ一層徹底セシメ苟クモ特定人ノ當選幹旋ノ虞シアリト認メラルル如キ運動方法ハ絶對ニ之ヲ差控ヘシメタリ、縣市町村ノ官公吏モ亦總テ此ノ趣旨ニ依リ活動シ大政翼賛會縣、市町村支部翼賛壮年團其他、各種團体モヨク此ノ意ヲ体シテ行動シタリ、以上ノ者ガ故意ニ啓蒙乃至倫理化運動ノ限界ヲ超ヱテ行動シタル、證據ナキノミナラズ皆其ノ分ヲ守ランコトニ岌々タリシナリ、原告ノ主張スル所ハ右ノ事實ヲ誤解シタルモノナルベク、光榮アル大東亜決戦下ノ總選擧ニ苟クモ一縣ノ知事ガ特定候補者ノ當選ヲ期スル為、極力運動ヲ為シ、或ハ特定候補者ノ落選ヲ期スル為極力運動ヲ為シ或ハ特定候補者ノ落選ヲ期スル為極力選擧妨害ヲ為スベキ指令ヲ發スルガ如キコトハ想像スラ能ハズ事實無根ナリ言者ハ正シキヲ言フノ意思ニシテ聴者之ヲ誤リタリト云フガ如キ場合ニハ本來選擧違反ノ行為ニ非ズシテ多數投票者中斯カル誤解者ガ多少存在シタリト謂フコトニ依リ選擧全体ヲ無數ト為スベキニ非ザルナリ、尤モ原告主張(前掲第四項)ニ係ル同縣知事ノ教育會長名義ニ依ル通牒文書ハ事實發送セラレタルモノノ如キモ,右ハ當時衆議院議員總選擧ニ際シ縣下教育関係者ニ於テモ翼賛選擧ニ對スル熱意強ク殊ニ遇々第一區ヨリ前鹿児島縣女子師範學校教頭P95ガ翼賛政治体制協議會推薦候補トシテ立候補セル為教育関係者間ニ演説會或ハ推薦状ニ依ル第三者運動ヲ為サントスル者相當ニ多ク教育會或ハ縣學務課宛ニ第三者運動ノ可否ニ付問合セ頻々ナリシヲ以テ、教育會長(知事)ニ於テハ教育者トシテノ立場上演説ニ依ル第三者運動ハ差控ヘシメ推薦状ニヨル第三者運動モ肩書ヲ用ヒズ單ナル個人名ニテナストキノミ差支ナキ旨示シ置キタル次第ナルガ縣教育會副會長P97ハ右ノ趣旨徹底ト併セテ翼賛選擧貫徹ニ関スル協力方ヲ求メンガ為教育會長タル知事ト充分ナル打合セヲ遂グルコトナク、極メテ善意ニ簡單ニ考ヘヲ教育會長名義ニテ然モ親切ノ積リニテ参考ノ爲推薦ノ雛形ヲモ附記シタル翼賛選擧ニ對スル協力方ノ通牒文ヲ印刷ノ上縣下ノ主タル學校長宛發送セル由ニシテ知事ハ事實選擧終了後五月二十日頃外部ヨリノ通報ニ依リ始メテ★通牒文發送セラレタルヲ知リタルモノナリ又原告主張ノ選擧區内地盤割當ノ事實(原告主張前掲第五項)ノ如キハ何事知事ノ関知セサル処ナリ
三、之ヲ要スルニ原告請求原因中第一項第二項ノ外形事實ハ之ヲ争ハサルモ縣、市町村ノ官公吏、學校長、警防團員、警察署員、壮年團員等ハヨク政府ノ方針ヲ體シテ行動シ縣民擧ツテ之ニ和シテ翼賛選擧貫徹ニ関スル眞摯ナル一大擧國的國民運動ガ展開セラレ随所ニ翼賛選擧ノ貫徹ニ関シ或ハ選擧ノ倫理化、棄権防止ニ関シ講演會、座談會ガ開催サレ學校職員ノ訓話ガ實施セラレ或ハ回覧板ガ利用セラレタルモノニシテ、原告ノ主張スル如ク知事ノ指令ノ下ニ縣市町村ノ官公吏、學校長、警防團員、警察署長、壮年團員等ガ特定候補者ノ為ニ公然選擧運動ヲナシ、他ノ特定候補者ヲ落選セシムベク公然選擧妨害ヲナシタリト謂フ如キハ全ク事實ニ相違スル所ナリ、原告ガ具体的事例ノ一般トシテ擧示セル所(原告主張前掲第三項(甲)乃至(成)ノ事實)モ全ク聞カザル所ニシテ原告ニ於テ事實ヲ誤解推断シタルモノナルガ或ハ選擧ノ際兔角行ハレ易キ誇張ノ風評又ハ虚無若ハ歪曲ノ事實ヲ根據トシタルモノナルヘシ斯カル原告獨自ノ邪推臆測ノ意見ニ基ク原告ノ主張事實並ニ選擧執行ノ手續規定ニ違背セルコトハ絶對ニ之ヲ否認ス
右ノ如ク原告ノ本訴請求ハ虚無又ハ否曲ノ事實ヲ根據トスルモノニシテ全ク理由ナキモノナリ
原告主張ノ選擧ノ結果即チ當選者落選者各其ノ得タル投票数ハ之ヲ認ム、由是観之、翼賛政治体制協議會推薦ノ候補者ハ圧倒的多数ノ票ヲ獲得シ右ノ推薦ヲ得ザリシ者ハ極メテ少数ノ票ヲ得タルニ過ギズ翼賛推薦ノ當選者中最下位ノP4ノ得票ト落選者中最上位ノP7ノ得票トヲ比較スルモ其ノ差一萬三千五百七十九票ニシテ宮下ノ票ハP2ノソレノ四分ノ一ニモ達セズ如斯大差アルモノハ少々ノ技巧ヤ非違ヨリシテ生スヘキニアラズ、其ノ因ヲ来ル所以ハ第一ニ時局ノ影響ナリ即チ時局ニ鑑ミ政府ハ昭和十七年二月十八日其ノ所謂「大東亜戦争完遂、翼賛選擧貫徹ノ運動方針ヲ立テ國民ノ政治的良心ノ喚起ニ努メタルコトガ右ノ結果ヲ来タシタル重大原因ナリ第二推薦手續ハ公明ニシテ且推擧セラレタル候補者ノ人物モ亦良好適當ナル人物ナリシガ為ナリ第三ハ鹿児島縣ニ於ケル擧州一致ノ風習アル為ナリ、第四ハ推薦セラレタル候補者(又ハ事務長)ノ間ニ合法的ニ地盤ノ協定行ハレタルガ為ナリ、被告X1ガ候補者トシテ得タル得票ガ前二回ノ總選擧ノソレニ比シ大差ヲ生シタルハ同候補者カ曽テ社會大衆党ニ属シタルノ特別事由ニ基クモノニシテ同党ハ戦時ニ於テハ甚ダ適セザル社會民主主義ノ根本ノ主張ト為シタレバナリ、原告主張ノ事由ハ事ノ當否ニ拘ラズ大勢ニ影響少々萬一其ノ事ガ一部ニ存シタリト假定スルモ選擧ノ結果ニ異同ヲ生スルモノニアラズ故ニ原告ノ請求ハ棄却セラルベキモノナリ
尚産業報國會、農業報國會、商業報國會、海運報國會等ガ大政翼賛會ノ傘下ニ入リタルハ本件選擧施行後昭和十七年五月十五日ノ事ナリ、
又部落會町内會ガ大政翼賛會ノ指導スル組織ト為リタルモ亦右ト同様昭和十七年五月十五日ノ閣議決定ニ因ル従テ選擧當時又ハ其ノ前ノ地方協力會議等ニ此等ノ團体ガ各團体ノ代表者ヲ出席セシメタル事實ナシ、大政翼賛會ノ為シタリ啓蒙運動又ハ倫理化運動ガ善カリシニモセヨ悪シカリシニモセヨ、此ノ運動ガ右等ノ團体ノ組織ヲ通ジ普遍的ニ選擧區内ニ傳播滲透セシト謂フガ如キ事實ナキ旨陳述シタリ
證據トシテ
原告代理人ハ
甲第一号証ノ一、二同第二、三四号証同第五、六七号証ノ各一、二同第八号証ノ一乃至二十同第九号証同第十号証ノ一乃至四同第十一号証ノ一、二、三、同第十二、十三号証同第十四号証ノ一乃至三五、同第十五号証ノ一乃至四七、同第十六号証ノ一、二、三同第十七、十八、十九号証、同第二十号証ノ一、二、三、同第二十一、二十二号証ヲ提出シ証人P98、(編注:証人外一九一名)ノ各証言並ニ原告本人X1本人訊問ノ結果ヲ援用シ証人P99P100P101、原告本人X2、X3ノ各訊問ヲ求メ
乙第四号証ノ一、二ニ対シテハ不知ヲ以テ答ヘ其餘ノ乙各号証ノ成立ヲ認メタリ
被告代理人ハ乙第一号証同第二号証ノ一乃至十同第三号証ノ一乃至六、同第四号証ノ一、ニ同第五号証ヲ提出シ、証人P98、(編注:証人外一九一名)ノ各証言ヲ援用シ証人P35ノ訊問ヲ求メ
甲第一号証ノ二、同第三、四号証同第五、六、七号証ノ各一、二、同第九号証同第十一号証ノ一、二、三、同第十二号証ニ対シテハ不知ヲ以テ答ヘ其ノ餘ノ甲各号証ノ成立ヲ認メタリ。 

       理   由
昭和十七年四月三十日施行セラレタル衆議院議員総選擧ニ際シテ鹿児島縣第二區ノ議員候補者トシテ原告等四名並ニP2、P3、P4、P5、P6、及P7ノ六名併セテ十名立候補シタルトコロ選擧ノ結果右P2、P3、P4、P5、ノ四名カ當選者ト決定セラレ而モ右當選者ト決定セラレタル四名ハ何レモ翼賛政治体制協議会ヨリ推薦セラレタル所謂推薦候補者トシテ立候補シタルモノナルコトハ辯論ノ趣旨ニ徴シ當事者間ニ爭ナキ所ナリ而シテ原告等四名ハ右鹿児島縣第二區ニ於テ行ハレタル選擧ハ選擧法及其ノ附属法令ニ違反スルノミナラス憲法ニ違反シテ行ハレタルモノニシテ選擧ノ結果ニ重大ナル影響ヲ及ホシタル不法ノ選擧ナルヲ以テ之ヲ無效トスル旨ノ判決ヲ求メ被告ハ之ニ対シテ右選擧ノ效力ニ関スル本訴ハ鹿児縣第二区ニ於テ行ハレタル右選擧カ衆議院議員選擧法第八十二條所定ノ「選擧ノ規定ニ違反スルコト」ヲ理由トシテ其ノ無效ヲ主張スルモノナルトコロ、右ノ選擧ノ規定ニ違反ストハ特ニ選擧ソノモノカ適法有效ニ行ハレサル場合即チ選擧執行ノ手續ニ関スル規定ニ違背シテ行ハレタル場合ノミヲ指称スルモノナレハ選擧運動取締ニ関スル規定違背或ハ選擧取締ノ不妥當ノ如キハ選擧ノ效力ニ関スル訴訟ノ原因ト為スヲ得サルモノト觧スヘキモノニシテ原告等ノ本訴請求ノ原因事実ハ要スルニ鹿児島縣知事P8ヲ初メトシ縣市町村ノ官公吏、學校長、警防團員、警察署員、翼賛壮年團員カ特定ノ推薦候補者ノ為ニ公然選擧運動ヲ為シ他ノ自由候補者即チ非推薦候補者ヲ落選セシムベク公然ト選擧妨害ヲ為シタリト謂フニ在ルヲ以テ斯カル事実アリトスルモ選擧ノ效力ニ関スル訴訟ニ於ケル選擧ノ規定ニ違反スル場合ニ該當セサルモノナレハ本訴ハ此ノ種訴訟ノ適法要件タル選擧ノ執行手続ニ違背シ因テ當選ノ結果ニ異動ヲ及ホスヘキ虞アル事実ノ主張ヲ含マサル不適法ノモノトシテ却下セラルヘキモノナル旨主張スルヲ以テ先ツ此ノ点ニ付審按スルニ
抑衆議院議員ノ選擧ノ效力ニ関スル異議ノ訴訟ハ一定ノ地區ノ選擧全体ニ付其ノ無效ノ宣言ヲ求ムルモノナレハ、是ニ関スル衆議院議員選擧法第八十二條カ右選擧無效ノ原因トシテ規定スル「選擧ノ規定ニ違反スル」トハ選擧全般ノ效力ニ影響ヲ及ホス規定ニ違反スルコトヲ意味スルモノニシテ各個ノ投票ニ関スル規定、各個ノ選擧運動ニ関スル規定並ニ各個ノ選擧干渉禁止ノ規定ニ違反する場合ハ直ニ右ノ「選擧ノ規定ニ違反スル」モノト謂フヲ得ス。従テ一般的ニ謂ヘハ右ノ選擧ノ規定トハ選擧全般ニ亘ル規定即チ主トシテ選擧ノ管理又ハ其ノ執行ノ手續ニ関スル規定例ヘハ選擧人名簿、選擧ノ告示、選擧ノ期日、投票ノ時刻、場所、選擧区、選擧スヘキ議員数、立候補届出ノ受理、投票用紙ノ調製、投票立会人ノ選任、選擧会場ノ管理等ニ関スル規定ヲ指称スルモノト觧スヘキモ必シモ斯カル規定ニ限定スヘキ法文上ノ根拠アルコトナシ。故ニ不法ナル選擧運動又ハ選擧ノ干渉若ハ選擧妨害カ一定ノ選擧區ニ亘リ全般的ニ且組織的ニ行ハレ當該選擧區ノ選擧人ニ対シ其ノ自由意志ニ基ク投票カ全般的ニ著シク抑圧セラレ、選擧法ノ目的トスル自由ト公正トカ全ク没却セラレタル如キ場合ニ於テハ其ノ結果ニ於テ當該地区ニ於ケル選擧全体ノ效力ニ影響ヲ及ボスニ至ルヘキ虞アルヲ以テ選擧法ノ目的トスル公選ノ精神ニ鑑ミ猶ホ衆議院議員選擧法第八十二條ニ所謂「選擧ノ規定ニ違反スル」モノト觧スヘキモノトス、盖シ右ノ如キ選擧全般ニ亘ル不法ノ選擧運動又ハ選擧干渉若ハ選擧妨害ニ関シテハ其ノ各個ノ行為ニ付夫々是ニ対スル禁止若ハ取締規定乃至罰則存スヘキモ之カ為選擧全体ノ效力ニ影響スル虞ナレト做スヲ得ス若シ其ノ虞アルニ於テハ選擧ノ実ナキニ至リ自由公正ナル選擧ノ結果ヲ確保セントスル衆議院議員選擧法第八十二條ノ規定ノ精神ニ反スルコト選擧全般ニ亘ル規定ニ違反スル場合ノ比ニ非サルヲ以テナリ。然リ而シテ本訴ニ於テ原告等ノ請求原因トシテ主張スルトコロハ鹿児島縣第二區ニ於ケル本件選擧ニ際シ行ハレタル選擧取締規定ニ違背スル各個ノ選擧運動又ハ選擧関係吏員ノ選擧取締ノ不妥當又ハ選擧妨害ノ各個ノ行為ノミヲ主張スルニ止マラスシテ右選擧全般ニ亘リ組織的ニ行ハレタル不法ナル選擧運動、又ハ妨害乃至干渉ノ事実ヲ主張スルモノナルコト辯論ノ趣旨ニ徴シ明白ナルノミナラス仮リニ被告主張ノ如ク選擧取締ニ関スル規定違背若ハ選擧取締ノ不妥當ノ事実ノミヲ主張スルモノトスルモ衆議院議員選擧法第八十一條第八十二條第一項ノ訴提起ノ要件ヲ具備セサルモノト觧スヘキニ非ス従テ本訴ヲ不適法トシテ却下ヲ求ムル被告ノ申立ハ到底之ヲ採容スルノ限ニ在ラス
仍テ原告ノ主張スル本訴ノ請求原因ニ付按スルニ
原告ハ本件選擧ニ際シテ當時ノ鹿児島縣知事P8ハ右選擧開始セラルルヤ同縣下ノ関係官公吏、學校長、警防團、警察署、壮年團等ニ対シテ特定候補者即チ翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者ノ當選ヲ期スル為極力運動ヲ為スヘキ指令ヲ為シ一方非推薦候補者ノ落選ヲ期スル為極力妨害ヲ為スヘキコトヲ指令シテ、右関係ノ團体又ハ個人ヲシテ或ハ右推薦特定候補者ノ為ニ積極的ニ選擧運動ヲ為サシメ或ハ右非推薦特定候補者ノ落選ヲ期スル為其ノ選擧ノ妨害ヲ為サシメタルモノナル旨主張シ被告ハ之ヲ否認スルヲ以テ本件ヲ判断スルニハ右翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者ナルモノノ出現スルニ至レル由來経過ヲ詳ニシ同時ニ翼賛政治体制協議会ナルモノノ根源並ニ其ノ性質ヲ検討スルヲ要スヘシ。仍テ之ヲ按スルニ
成立ニ爭ナキ乙第一号証同第二号証ノ一乃至十及証人P8同P102ノ各証言ニ依レハ政府ハ昭和十七年四月三十日施行セラレタル本件衆議院議員總選擧ノ実施ヲ機トシテ昭和十七年二月十八日ノ閣議ヲ以テ翼賛選擧貫徹運動基本要網ヲ決定シ、該運動ノ名称ヲ「大東亜戦争完遂翼賛選擧貫徹運動」ト為シ、該運動ノ目標トシテ一大擧國的國民運動ヲ展開シテ重大時局ニ対処スヘキ翼賛選擧ノ実現ヲ期スルコトトシ、其ノ運動ノ実施方策トシテ(一)啓蒙運動ノ徹底ヲ期シ部落会、町内会、隣保班等ノ市町村下部組織ハ勿論、各種團体其他有ユル組織ヲ動員シテ活溌ナル展開ヲ為シ(二)候補者推薦氣運ノ釀成ヲ期シ啓蒙運動トシテ最適候補者推薦ノ氣運ヲ積極的ニ釀成セシメ(三)選擧ノ倫理化ト戦時態勢化ヲ期シ選擧ニ関スル在來ノ情実因縁ヲ一掃シ選擧ノ公正、選擧犯罪ノ根絶ト棄権防止ニ努メシメ、戦時ニ即應シ選擧運動上物資勞力等ノ節約ト運動方法ノ改善合理化ニ努メシムルコトトシ而シテ該運動ノ実施機関トシテ(一)政府ハ運動ノ基本方策ヲ決定シ運動全般ヲ指導シ(二)地方廰ハ政府ノ基本方策ニ即應シ運動ノ実施方策ヲ決定シ地方ニ於ケル運動全般ヲ指導シ(三)大政翼賛会(翼賛壮年團ヲ含ム)及選擧粛正中央聨盟ハ政府及地方廰ニ協力シ民間運動ヲ展開スルモノトシ右閣議決定ノ基本要網ニ基ク運動実施要領ノ一トシテ本運動ハ翼賛議会ノ確主ヲ主タル目標トスルモノナルヲ以テ啓蒙運動ノ実施ニ當リテハ有為ノ人材ヲ議会ニ動員セシムル為最適候補者推薦ノ氣運ヲ積極的ニ釀成セシムルコトニ重点ヲ置クコトトシ就中本運動ヲシテ部落会町内会、隣保班等ノ市町村下部組織ニ根底ヲ有スル國民ノ自主的運動タラシムルコトニ努ムルコトヲ定メ、之カ実施ニ付テハ大政翼賛会支部ヲシテ地方廰ニ協力活溌ナル民間運動ヲ展開セシムルコト而シテ本運動ト選擧運動トヲ混淆シ又ハ本運動ニ名ヲ藉リテ選擧運動ヲ為スカ如キコトナカラシムルコト殊ニ市町村常会、部落会、町内会、隣保班ヲ通スル運動実施ニ際シテハ、一段ノ注意ヲ要スルコト尚選擧運動期間ニ入リテハ選擧ノ倫理化運動ヲ一層徹底セシメ苟クモ特定人ノ當選斡旋ノ虞アリト認メラルルカ如キ運動方法ハ之ヲ差控フルコトニ留意スヘキコトヲ明ニシタリ而シテ政府ハ昭和十七年二月二十三日前顕閣議決定ノ翼賛選擧貫徹運動基本要網ノ実現ヲ圖ル為ニ、各界代表者三十三名ヲ招請シテ首相官邸ニ於テ第一回懇談会ヲ開キ東條首相ヨリ「今次選擧ニ際シ國民運動カ展開セラレ特ニ積極有為ノ人材カ従來ノ固習ヲ破ツテ現実ニ選出セラルル様其ノ氣運カ積極的ニ釀成セラルルコトヲ希望シ更ニ其ノ実現ニ関スル最モ適切ナル方途ニ就イテ廣ク國民一般ノ工夫ト盡力トヲ期待シテ井ル」旨ノ挨拶ヲナシ右各界代表者トノ間ニ貭問應答ヲ累ネ引續キ右各界代表者ノミノ懇談協議ニ入リ其ノ結果政府ノ方針ヲ全面的ニ支持スル旨ノ申合ヲ為シ之カ実現ヲ圖ル為ニ右招請ヲ受ケタル三十三名ハ大政翼賛会カ公事結社トシテ選擧運動ヲ為シ得サルヲ以テ新ニ政治結社トシテ翼賛政治体制協議会ヲ設置シ会長ニP94大将ヲ推シ且具体的方策ヲ研究立案スル為十三名ノ特別委員ヲ設クルコトヲ決定シ右特別委員等ハ二月二十六日「翼賛政治体制協議会ハ來ルヘキ總選擧ニ際シテ適正ナル候補者ノ推薦運動ヲ全面的ニ行ヒ東京ニ本部ヲ置キ道、府縣ニ支部ヲ置キ本部支部ハ密接ナル連繋ノ下ニ推薦行為ヲ行フモノトシ、本協議会ハ適當ナル時期ニ(選擧期日告示前)政治結社ノ届出手續ヲナシ選擧終了後其ノ使命ヲ終リ觧散スヘキコトヲ決定シ三月十七日会長ノ名ヲ以テ本部ノ政治結社設立ノ届出ヲナシ翌三月十八日ニハ一道二府四十縣ノ支部長ヲ決定シ鹿児島縣支部ノ支部長ニハ縣会議長縣協力会議長P89ヲ指名委嘱シタリ而シテ本協議会ノ中樞的使命タル推薦候補者ヲ銓衡決定スル為ニ三月二十二日本部東京会舘ニ於テ全國支部長會議ヲ開キ会長ヨリ廣ク國家ノ求ムル清新有為ノ人材ヲ銓衡推薦シ其ノ當選ヲ期スルコトニ運動ノ重点ヲ置ク旨挨拶ヲナシ各支部ニ於テ三月二十八日ヨリ銓衡ヲ開始シ三月三十一日マテニ銓衡決定ノ上選擧區毎ニ氏名ヲ会長宛報告スル旨ノ指示ヲ與ヘ三月二十二日ノ總会ニ於テ本部ニ於ケル銓衡委員二十二名ヲ会長ヨリ指名委嘱シ四月六日推薦候補者全部ノ決定ヲ終ハリ本部支部ヲ擧ケテ其ノ決定シタル推薦候補者ノ為ニ活溌ナル第三者ノ選擧運動ヲ展開スルニ至レルコトヲ認ムルニ足ル
由是観之翼賛政治体制協議会ハ昭和十七年四月三十日施行ノ衆議院議員總選擧ノ実施ニ際シ政府ノ意圖ヲ体シテ結成セラレタル政治結社ニシテ政府自ラ右議員候補者推薦機運ノ釀成ヲ唱導シ翼賛政治体制協議会カ政府ノ意ヲ受ケテ全國的ニ右議員候補者ヲ銓衡決定シ推薦候補者トシテ発表シタルモノニシテ所謂候補者推薦制度カ全國的ニ大規模ニ行ハレタルモノナルコトヲ了知スルコトヲ得ヘシ之ニ反スル趣旨ノ各証言ハ當院ノ借信セサル所ナリ而シテ証人P89ノ証言並ニ甲第十四号証ノ三十一(別件同人証言調書)ニ依レハ翼賛政治体制協議会鹿児島縣支部ハ昭和十七年三月二十三日結成セラレ同月二十八日政治結社ノ届出ヲ為シ推薦候補者ヲ銓衡決定スル為ニ支部長P89ヲ委員長トスル十六名ノ委員ヲ擧ケテ推薦母体トナシ鹿児島縣三區ノ候補者トシテ十二名ヲ推薦決定シ本部ノ承認ヲ得タルモノニシテ成立ニ争ナキ甲第八号証ノ二十二ニ依レハ選擧ノ結果ハ右十二名ノ推薦候補者ハ全部當選シ非推薦ノ所謂自由候補者ハ悉ク落選シ而モ本件第二區選擧ノ結果ニ依レハ推薦候補當選者四名ノ末位ナルP4ノ得票数一万七千二百八票ト非推薦候補ノ次点者P7ノ得票数三千六百二十九票トノ差ハ実ニ一万三千五百七十九票ノ懸隔アリ而シテ非推薦候補者六名ノ得票合計ハ一万一千六百七十二票ニシテ推薦候補當選者ノ末位ナル右P4ノ得票数ニモ遥ニ及ハサルコト明カナリ然リ而シテ衆議院ノ組織スル議員ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選スヘキコトハ憲法ノ規定スル所ニシテ選擧法ニ於テハ議員候補者、選擧事務長又ハ選擧委員ニ非サレハ選擧運動ヲナスコトヲ禁止シ他人ヲ議員候補者ト為サムトスルニハ其ノ推薦届出ヲ為シ得ヘキコト及命令ノ定ムル所ニ従ヒ演説又ハ推薦状ニ依ル第三者ノ選擧運動ヲ認ムルニ過キサルカ故ニ、政府ノ指示ニ従フモノナルト否トヲ問ハス又所謂翼賛選擧貫徹運動トシテ積極有為ナル最適人材ヲ議員タラシムルコトヲ目的トスルヤ否ヤヲ問ハス議員候補者ヲ銓衡推薦シ其ノ選擧運動ヲ為スヘキコトヲ使命トスル翼賛政治体制協議会ノ如キ政見政策ヲ有セサル政治結社ヲ結成シ其ノ所属構成員ト関係ナキ第三者ヲ候補者トシテ廣ク全國的ニ推薦シ其ノ推薦候補者ノ當選ヲ期スル為ニ選擧運動ヲ為スコトハ憲法及選擧法ノ精神ニ照シ果シテ之ヲ許容シ得ヘキモノナリヤハ大ニ疑ノ存スル所ニシテ之カ判断ハ姑ク措キ免モアレ右ノ如キ結社ニヨリ推薦セラレ立候補ノ届出ヲ為シタル候補者ハ特定ノ候補者ニ外ナラサルカ故ニ公開ノ選擧演説会ニ非サル町村常会部落常会若ハ隣組常会等ニ於テ右特定候補者ノ當選ヲ期スル目的ノ下ニ推薦候補者支持又ハ推薦制支持ノ講話又ハ演説ヲ為ス如キハ不法ノ選擧運動ト觧セサルヘカラス盖シ町村部落ノ常会隣組常会ハ不特定多数人ノ集合ニ非スシテ隣保相識ル数人乃至数十人ノ特定人ノ集合ナルヲ以テ是等常会ニ於テ特定候補者ニ當選ヲ得シムル為ニ選擧演説ヲ為スハ衆議員議員選擧法施行令第五十七條ノ三第一号ニ所謂連續シテ個々ノ選擧人ニ対シ面接スルモノニ該當スルモノト解スヘキカ故ナリ。又右町村常会、部落常会若ハ隣組常会等ニ於テ推薦制支持ノ申合又ハ決議若ハ指示ヲ為スハ右各會合ニ出席シタル選擧人ニ或ル程度ノ拘束ヲ與フルコトト為リ従テ右特定ノ候補者ヲシテ當選ヲ得シムル目的ニ出テタルモノトシテ不法ノ選擧運動ナリト觧セサルヘカラス尚又推薦制支持ノ回覧板用紙ヲ廻付シ又ハ推薦候補者支持ノ「ビラ」ヲ配布シ之ニ依リ推薦候補者支持ノ氣運ヲ釀成スルコトモ亦同断ナリトス盖シ右ノ推薦制又ハ推薦候補者支持トハ本件鹿児島懸下ニ於ケル選擧ニ関スル限リ前述ノ翼賛政治体制協議会ノ推薦シ若ハ推薦スル特定ノ候補者ヲ支持シ其ノ當選ヲ期スル趣旨ニ外ナラサルヲ以テナリ
今之ヲ本件鹿児島縣第二區ノ選擧ニ付キ証拠ニ徴スルニ
(一)眞正ニ成立シタリト認ムヘキ甲第九号証証人P103、(編注:証人外一六名)ノ各証言ニ依レハ右第二區ニ属スル町村、部落常会、學校區常会、又ハ壮年團会合等ニ於テ推薦候補者支持ノ申合ヲ為シ又ハ斯カル協議若ハ決議ヲ為シタルコトヲ認メ得ヘク又証人P19、(編注:証人外二十名)ノ各証言ニ依レハ町村部落常会、學校區常会壮年團会合等ニ於テ推薦制支持ノ申合又ハ指示アリ、タルコトヲ認メ得ヘク
(二)更ニ又証人P113、(編注:証人外十四名)ノ各証言ニ依レハ是等ノ者ハ町村長、壮年團長、部落会長又ハ警察署長等ノ指導階級ニ在ル者ニ在ル者ニシテ何レモ啓蒙運動若ハ倫理化運動又ハ翼賛選擧貫徹運動ノ名下ニ公会ノ選擧会場ニ非サル町村常会其ノ他ノ会合ニ於テ推薦制支持ノ講話ヲ為シタルコトヲ認メ得ヘク又証人P114、(編注:証人外十八名)ノ各証言ニ依レハ是等ノ者ハ何レモ町村部落常会等ニ於テ推薦候補者支持ノ講話若ハ演説ヲ聴取シタルモノ又証人P11、(編注:証人外十三名)ノ各証言ニ依レハ是等ノ者ハ何レモ右ノ如キ会合ニ於テ推薦制支持ノ講話ノ聴取シタルモノナルコトヲ認ムルニ足リ
(三)尚又証人P115、P70、P116、ノ各証言ニ依レハ是等ノ者ハ非推薦候補者所謂自由候補者ヲシテ當選ヲ得シメサルコトヲ目的トシテ是等候補者排斥ノ申合又ハ講話ヲ為シタルモノナルコト及証人P115、P21、P57ノ各証言ヲ綜合スレハ國民學校長、町会長、部落常会長等ガ學校区常会、公会堂部落常会ニ於テ夫々自由候補者某々ハ共産党ナレハ投票スヘカラス自由候補者ニ投票スルハ陛下ニ弓ヲ引ク様ナモノナレハ必ス推薦候補者ニ投票スヘキ旨或ハ推薦候補者ニ投票セサレハ大東亜戦争ニ敗ケル又陛下ニ対シ奉リ申譯ナキ旨談議シタルコトヲ認メ得べク
(四)尚又証人P62ノ証言並ニ同証ニ依リ眞正ニ成立シタリト認ムヘキ甲第三号証ノ回覧板ニ依レハ姶良郡敷根村々長タル同人カ翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者P2、P3、P4、P5カ第二區推薦候補者ナルコト並ニ同村カ右P2ノ地盤ナル旨ノ回覧板ヲ五十枚五部落ニ配布シタルコトヲ認メ得ヘク又眞正ニ成立シタリト認ムヘキ甲第五号証ノ一、二ニ依レバ翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者ハP2ナル旨ノ回覧板カ姶良郡ニ於テ使用セラレタルコトヲ認メ得ヘク又成立ニ争ナキ甲第十三号証ニ依レハ鹿児島縣、大政翼賛会懸支部、翼賛壮年團ノ名ヲ以テ「今度の選擧は推薦制で行きませう」等ノ文字ヲ連ネタル回覧板カ縣下ニ使用セラレタルコトヲ認ムルニ足リ
(五)尚又証人P117ノ証言ニ依レハ翼賛壮年團ヨリ第二區ニ於ケル翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者四名ノ氏名ヲ印刷シタル「ビラ」ヲ配布シ之ヲ部落員ノ回覧ニ供シタルコトヲ認メ得ヘシ
被告ハ本件選擧當時鹿児島縣知事ニシテ大政翼賛会ノ縣支部長タリシP8ハ前述ノ閣議決定ノ翼賛選擧貫徹運動基本要網ノ趣旨ニ従ヒ啓蒙運動乃至倫理化運動ヲ展開セシメ之ト特定候補者ノ當選ヲ幹施スル虞アルモノト認メラルル選擧運動トヲ混淆セシメサルコトヲ特ニ留意シテ熱心事ニ當リ又推薦候補者發表後ニ於テハ選擧運動ト誤認セラルル虞アル啓蒙運動ハ之ヲ打切リ差控ヘシメタル旨主張スレトモ前認定ノ如キ不法選擧運動ノ存在ヲ否定スルニ足ル反対ノ証拠資料ハ本件ニ於テ畢ニ之ヲ發見シ得サルヲ以テ,選擧執行ノ當局関係者ノ言動意思カ前述閣議決定ニ基ク翼賛選擧運動ノ為ニスルニ在リテ不法選擧ノ意思ナカリシトスルモ結果ニ於テ顕ハレタル前認定ノ如キ不法選擧運動カ行ハレタル事実ハ事実トシテ之ヲ蔽フヘカラス
而シテ以上(一)乃至(五)ノ事実ヲ綜合スレハ翼賛政治体制協議会ノ推薦候補者即チ特定ノ候補者ヲ當選セシメントスル不法ナル選擧運動カ鹿児島縣第二選擧區ニ於テ相當廣範圍ニ行ハレタルコト明カニシテ之ニ加ワルニ證人P118、(編注:証人外十四名)ノ各証言ニ依レバ是等ノ者ハ何レモ右推薦候補者ニ投票スルヲ以テ最善ナリト信シ居レル事実ヲ認メ得ヘク従テ一般選擧人ニ於テ右候補者ハ政府官憲ノ推薦ニ係ルモノト信シタルモノト看取シ得ヘク尚又辯論ノ全趣旨ニ鑑ミシハ大政翼賛会鹿児島支部ハ町村常会、部落常会ヲ通シテ事実上縣下一般ニ亘リ所謂啓蒙運動ノ一端トシテ徹底的ニ推薦候補者支持ノ運動ヲ旺ニ行ハシメタルコトヲ認メ得ヘキニ依リ之ニ前顕認定ノ選擧ノ結果ヲ照合スレハ第二區ニ於ケル一般選擧人ニ対シ又ハ選擧人間ニ行ハレタル不法選擧運動ハ全般ニ亘リ相當徹底滲透ノ状勢ニ在リタルモノナルコトヲ推認スルニ難カラス。
茲ニ右ノ如キ状勢ヲ馴致スルニ至リタル事由ヲ稽フルニ、内閣總理大臣ヲ總裁トスル公事結社タル大政翼賛会ノ鹿児島縣支部ハ行政機関ノ補助機関トシテ是ト表裏一体ヲ為シ下情上通上意下達ノ事ニ當ル團体ニシテ翼賛会縣協力会議ハ各郡ヨリ代表者一名宛其ノ他辯護士、商工業者、學者等各層ノ代表者等四十名ヲ会議員トスルモノニシテ縣恊力会議ノ事項ハ郡恊力会議、町村部落常会等ヘト順次ニ之ヲ傳フルモノナルコト証人P8ノ証言ニ依リ明カニシテ、甲第十二号証並ニ證人P119及P120ノ各証言ニ徴スレハ、右翼賛会鹿児島縣支部ハ昭和十七年三月十五日多数傍聴者集合ノ下ニ臨時協力会議ヲ開キ前顕乙第一号証ノ閣議決定ノ翼賛選擧貫徹運動ニ関スル説明ヲ為シタル上推薦制支持ノ申合ヲ為シ(是ニ反スル各証言ハ當院ノ措信セサル所ナリ)之ヲ啓蒙運動ノ基本トシテ三月十八日以降郡恊力会議次テ各町村常会ノ下部組織ニ之ヲ徹底セシメ三月末ニハ大政翼賛会縣支部ノ名ヲ以テ推薦機運ヲ盛ナラシムル為「良キ人ヲ選フヘキ旨」ノ回覧板ヲ次テ前顕甲第十二号証ノ推薦制支持ノ回覧板ヲ縣下町内会部落会ニ配布シタタルモノナルコトヲ認ムルニ足ルカ故ニ前認定ノ如ク鹿児島縣第二區全般ニ亘リ前認定ノ不法選擧運動カ一般選擧人ニ徹底滲透シタルハ大政翼賛会縣支部ノ組織的活動ニ基クモノト推断シ得ヘク従テ右不法選擧運動ハ組織的且全般的ニ行ハレタルモノト認定スルヲ相當トスヘシ。 
次ニ成立ニ争ナキ甲第一号証ノ一及眞正ニ成立シタリト認ムヘキ同号証ノニ同第十一号証ノ二、三成立ニ争ナキ同第拾四号証ノ一(P121ノ証言調書)同号証ノ八(P97ノ証言調書)同号証ノ二八(P122ノ証言調書)証人P18、P123、P98、P10、P124、P22、P20、P14ノ各証言ヲ綜合スレハ昭和十七年四月二十日附鹿児島縣教育会長P8ノ名義ヲ以テ「来ル四月三十日行ハルヘキ衆議院議員選擧ニ就テハ翼賛政治体制協議会カ設ケラレ推薦制度ニヨリテ大東亜戦爭目的達成ノ為メ清新強力ナル議会ノ確立ヲ意圖シ目下翼賛選擧貫徹運動展開中ニ有之候處、貴下ニ於テモ会員ニ対シ、又常会等ニ於テ右ノ趣旨ヲ十分ニ理觧セシメ推薦制度ノ意義ノ徹底ヲ期セラレ度此段通牒候也」トノ文面ヲ掲ケ其ノ末尾ニ会員ハ選擧當日棄権ナキコト、校長教員ハ個人名ヲ以テ推薦ヲ發スコトハ法律上許サレ居ルコトニテ差支ナキ旨ノ注意ヲナシ且推薦状ノ形式(ハカキ大)ヲ参考トシテ掲クトテ推薦状ノ雛形ヲ示シ「翼賛政治体制恊議会推薦候補者○○○○氏ハ最適任者ト思ヒマスカラ、アナタノ一票ヲ同氏ニ御典ヘ下サイマス様御願ヒシマス」ナル文言ヲ表示シタル申第一号証ノ一ノ通牒カ縣下國民學校長、青年學校長、中學校長、女學校長ニ送付セラレタルコト明カニシテ、右通牒ハ縣教育会長タルP8ノ関知セサル所ニシテ副会長タリシP97カ自ラ起案シ発送シタルモノナルコトヲ認メ得レトモ其ノ效果ニ於テ縣教育会員タル學校長、教職員等、ニ対シテハ会長ノ発送シタルト異ルコトナク右ハ翼賛政治体制協議会ノ推薦シタル特定候補者ノ當選ヲ得シムルコトヲ目的トスルモノト認ムヘキモノニシテ其ノ立候補届出前ト雖モ固ヨリ顕著ナル不法選擧運動タルコト言ヲ俟タス此ノ点ニ関スル被告ノ主張ハ採容スルヲ得ス而シテ証人P21、同P22同P61、同P98、同P10同P125、同P126、同P18、同P114ノ各、証言ヲ綜合スレハ右ノ通牒ハ學校ニ掲示セラレ又ハ教職員ニ回覧セラレ或ハ右通牒ノ趣旨ニ従ヒ甲第一号証ノニ同第十一号証ノ二三ノ推薦状(ハガキ)が相當多数発送セラレタルノミナラス學校長又ハ教員ハ學校ニ於テ生徒ニ対シテ推薦制ノ講話ヲ為シ推薦候補者ニ投票スル様父兄ニ告ケルヘク諭示シ或ハ同候補者ノ氏名ヲ記入セル紙片ヲ生徒ニ交付シ或ハ學校區常会ニ於テ推薦候補者ヲ支持スル必要ヲ説キ其ノ當選ヲ期待スル旨ヲ口演シタル事実ヲ認ムルニ難カラサルヲ以テ右通牒ニ依ル不法ノ選擧運動モ亦第二區ニ於テハ學校當局者ヲ通シ組織的ニ行ハレ一般選擧人ニ與ヘタル影響ハ全般的ナリシモノト謂ハサルヘカラス
以上ノ説示スル所ヲ綜合考覈スレハ本件鹿児島縣第二區ノ選擧ニ於テハ立候補届出ノ前後ヲ通シ不法ノ選擧運動カ一般選擧人ニ対シ又ハ選擧人間ニ全般的且組織的ニ行ハレ選擧法ノ目的トスル選擧ノ自由ト公正トカ没却セラレタルモノト認ムルヲ相當トスヘキカ故ニ被告ノ本訴ヲ不適法トスル主張ニ対シ前説示シタル理由ニ依リ衆議院議員選擧法第八十二條ニ所謂選擧ノ規定ニ違反スル場合ニ該當スルモノト觧スヘキモノトス。而シテ右第二區ニ於ケル選擧ノ結果ハ前認定ノ如ク推薦候補者四名全部當選シタルニ反シ原告等非推薦候補者カ全部落選シ而モ其ノ得票数ニ於テ前認定ノ如キ大差ヲ生シタル事実並ニ成立ニ爭ナキ甲第十七号証ニ依リ明カナル如ク昭和十七年四月三十日行ハレタル総選擧ニ於テ全國ニ於ケル推薦候補者ノ當選率カ八割一分八厘、非推薦候補者ノ當選率カ一割三分八厘ナリシ事実ニ鑑ミレハ前述ノ如キ組織的且全般的ニ行ハレタル不法選擧運動ノ為選擧ノ結果ニ異動ヲ及ホスノ虞アル場合ニ該當スルモノト認ムヘキモノトス従テ右選擧ノ結果ヲ招来スルニ至リタル原因事由トシテ被告ノ主張スル見觧ハ総テ之ヲ採用スルヲ得ス殊ニ鹿児島縣ニ於テハ擧縣一致ノ風習存ストノ点ニ関シテハ縦令斯カル風習ノ存在ヲ肯定シ得ルモノトスルモ升ハ組織的ニ行ハレタル本件不法選擧ノ結果ヲ左右スルモノト認メサルヘカラサルモノニ非サルヲ以テ前示判定ヲ動カスニ足ラス
仍テ原告主張ノ選擧干渉若ハ妨害ノ事実ノ有無ニ付テハ之カ判断ヲ為スマテモナク原告ノ請求ハ之ヲ認容スヘキモノトシ訴訟費用ニ付テハ民事訴訟法第八十九條第九十五條ニ則リ主文ノ如ク判決ス
大審院第三民事部
裁判長判事 吉田久
判事 森田豊次郎
判事 武富義雄
判事 松尾実友
判事梶田年ハ出張中ニ付署名捺印スルコト能ハス
裁判長判事 吉田久

2012年2月23日 (木)

黄門様のお世継ぎ問題

 平成の黄門様として親しまれた渡部恒三元衆議院副議長が後継者の調整が付けば引退する意向を表明した。御年80歳の高齢であるから、引退することについては何の不思議もない。衆議院当選同期の羽田孜元首相も今季限りで引退の意向であり、55年体制の中枢で活躍した経験のある政治家は小沢一郎被告などごく少数になる。

 渡部元副議長は後継者については後援会の意向を尊重する方針で、このお世継ぎについて後援会は長男を要望している。民主党は二世候補を容認しないことになっているから、お世継ぎの民主党からの立候補は難しいと言う事で、それならばみんなの党から出ればいいということになっている。

 政策や政党ではなく、「血統」が重んじられるところは、さなから中世を彷彿とさせる。小選挙区制になれば「個人後援会ではなく政党中心の開かれた候補者選定が行われる」と喧伝されたことが欺瞞であったことを、宣伝していたご自身が証明することになった。「政党中心の選挙」を掲げて自民党を飛び出した人であるが、最後は世襲に行き着いたことは皮肉としか言いようがない。個人後援会と圧力団体を軸としたシステムは何ら変わっていないと言わざるを得ない。

2012年2月21日 (火)

労働組合悪玉論

 大阪市の橋下市長が大阪市職員労組に対して従前貸与してきた事務所の明け渡しを求めている。今や公務員は「特権階級」であり「悪者」にされているが、その特権の元凶は労働組合であると言う理屈で、東電やJR、JALなど、企業の問題は全て「労働組合」に原因があるという主張がなされることも珍しいことではない。

 確かに、官公署や企業の中には明らかに一般常識とはかけ離れた特権を労働組合員に付与しているケースがないわけではない。しかし、ドイツの労使協議制のような労使関係を構築している国ならばともかく、日本の労働組合には執行権が付与されているわけではない。認められているのは労使交渉を行う権利であり、使用者側が交渉に誠実に応じなければならないと言う義務だけである。実のところ、交渉を妥結しなければならない義務もなければ、労働組合に譲歩しなければならないと言う義務もない。こうなると、いい加減なことを労働組合に要求され、それを唯々諾々と受け入れていた使用者側にこそ問題がある。その反省もないまま、労働組合悪玉論に乗っているのは、まことに短慮であると言うしかない。ヤミ専従は論外としても、職場を規律するのは使用者の権利であって、それを見過ごす或いは気が付かなかったという事になると、これはもう怠慢としか言いようがない。悪事を働く労働組合員は糾弾されるべきだが、使用者側が一方的な被害者と到底言う事はできない。

 加えて、労使間において慣行として認められてきたものを法律上の義務ではないからと一方的に否定すると言うのもまた問題だ。もともと、労使関係は第一義的に「労使交渉で決めるべき」というのが財界が長年言い続けて来たことであって、だからこそ労働者保護法制や悪徳企業への懲罰規定に後ろ向きであったわけだが、法律で規定されていない部分は多く、実際これらは交渉に委ねられている。法律に規定がないことを理由として、ただちに「労働条件切り下げ」に走ることは許されないと解すべきであろう。橋下市長の主張は第一義的には対立候補であった前市長を支持したことに対する懲罰的措置であって、私怨そのものである。

 加えて、「法律にないから」という主張は、労働組合側の闘争にもそのまま利用されかねない。残念ながら、職場において完全に「順法」というのは非常に難しい。この点で、相互に法律上義務のないことを行ったり損をしたりすることで職場は成り立っている。もし、法律にないからという理由を申し述べるならば、相手方も同じ理屈を使う事が出来る。かつて、国鉄労組は「順法闘争」という方法で交通網をマヒさせたものだが、こうした「常識外れ」のことすら行う理由づけを組合側に与えてしまう事になりかねない。言うなれば「もろ刃の剣」である。

 加えて、我が国の労働組合は共産党や極左団体の影響下にある一部の先鋭的な組合を除けば、一般的には労使協調路線を取り、「御用組合」と呼ばれるほど使用者側に対して協力的な姿勢を示すことが少なくなかった。労働組合としてあるべき姿であるか否かは別にして、労使協調路線が労働組合員にとっても有利な条件を与えるものであったことは確かであり、労働条件向上に資するところは大いにあった。つまり、労働組合は使用者側にある程度協力することで、一種の「身内」として分け前を享受できたのである。このwin-winの関係を「御用組合」とか「使用者の走狗」と批判するのは簡単だが、労使双方にとって利点が少なくなかったことは確かだ。

 ところが、こうした関係を放棄してしまえば、労働組合としては使用者側に協力するメリットは何もなくなる。こうなると、いわゆる「ユニオン」などの極左系組合のように「使用者がどうなろうが知ったことではない」という先鋭的な闘争に走ることになりかねない。協調で利益の分け前を受けられない以上、利益を勝ち取るためには使用者から実力で奪い取るしかなくなる。労働組合を「悪玉」として、従来の協調路線をゴミ箱に放り込むということは、対立路線をも容認することになる。それが、労使双方にとって「いいこと」とは私には思われない。

 労働組合悪玉論は、労働組合を左翼の巣窟と思っている者や、労働組合の保護を受けられない労働者としては「ざまあ見ろ」という気分にさせられるものである。法律上「交渉義務」を使用者が負うのは労働組合に対してだけであって、個人労働者に対しては交渉する義務すらない。労働組合が発言できないような組織で、ましてや個人が発言できるとは到底思われない。労働組合は万人を幸福にする組織ではないが、炭鉱のカナリア的存在ではある。労働組合を悪玉にして叩いてみたところで、労働組合を左翼の巣窟と思っている者や、労働組合の保護を受けられない労働者が経済的に救われるわけでもない。

 そうした点も含めて、労働組合悪玉論という「橋下劇場型政治」の行く末について、考え直してみる必要がある。

2012年2月19日 (日)

中国の宇宙開発

 60年代のアメリカを連想させるペースで、中国の宇宙開発が進められている。既に有人宇宙飛行を成功させ、今年の夏には複数の宇宙船を打ち上げてドッキング実験を行うと言う。アメリカは火星に人を送り込むと言う計画を進めているが、これに対抗するつもりなのかもしれないし、或いは中国が主導権を握る宇宙ステーションを作るつもりなのかも知れない。中国にとっての宇宙開発は、国威発揚のみならず、宇宙開発に伴う新技術の開発など、副次的な効果も大きい。

 何より、「軍事技術の開発」は中国軍の質を向上させることになるであろう。米ソの宇宙開発競争の時代を思い出せばよい。直接的には弾道ミサイル技術の向上であるが、偵察・通信衛星などで軍事情報、コンピューター技術向上によるサイバー戦なども考えられる。中国はしばしば日本の宇宙開発を自国への脅威であると主張するが、これは中国自身が宇宙開発とは軍事技術の開発とイコールであることを自覚していることにほかならない(むしろ、そうした自覚が乏しい日本の方が異常である)。

 としても、中国に対抗して日本も同等の宇宙開発を行うなどできるわけもない。古川担当大臣は日本人による有人火星探検構想を抱いているようだが、技術開発に着手する以前の問題として、財政的に不可能だ。やるとすれば、ソ連がやったように民生分野を犠牲にして金をつぎ込むという手しかないが、そんなことをすればソ連の二の舞になって経済破綻することは確実である。

 日本の宇宙開発技術にも優れたものは多いと信じるが、「冒険」とは程遠い学術研究や民生利用に向いたものが多い。日本の特質を生かすのであれば、命がけの探検はよその国に任せ、経済的利益を着実に得ることを主眼とすべきだ。

 いずれにせよ、かかる宇宙開発を大々的に行う事が出来る「世界第二位の経済大国」に対して、没落して行く我が国が支援を行う必要は全くない。隣国と言うものは無情なもので、かつて90年代に我が国が援助を行ってきたロシアは最近の経済成長によって実力を付け、再び我が国への脅威になろうとしている。かつての経済援助など大して感謝していないことは明らかで、むしろ「金づる」としか見ていない。このままでは、対中関係も対露関係の二の舞となることは確実だ。

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