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2012年7月8日 - 2012年7月14日

2012年7月13日 (金)

ブラック企業2012

 ブラック企業大賞企画委員会と称する団体が「ブラック企業2012」と称する投票の受付をはじめた。投票と審査により、その年で最もブラックだった企業を決めるとのことである。この不名誉な賞の候補には東京電力やワタミなど10社がノミネートされている。バス事故を起こした陸援隊もノミネートされているが、この10社は単に騒がれている企業名を並べたと言う気がしないでもない。

 ブラック企業という明確な定義があるわけではないが、一般的には法規なかんずく労働法を無視し労働者に苛酷な労務管理を行っているものとされている。そうした点では、飲食業界は社会保険の適用問題も含めて問題の多い業界であり、かねてよりワタミなどは不名誉な注目をされていた大企業であり、創業者が政界参入を志していたから、言っていることとやっていることが違うとして選定されてしまうのもやむを得ないところではあろう。すかいらーくやすき屋も同様であるが、一方で内定者に対して大量に退職強要していた企業はノミネートされていないから、ブラック横行と言われる飲食業界からどのように「選抜」したのであろうか。

 一方で、東京電力などは下請け孫請けのピンハネなどは原発事故以前から言われてきたところであるが、本体の正規雇用の労働者の労働条件はむしろ日本の労働者全体の中でもかなり良い部類に入る。労働条件を問題にしたというよりは、むしろ世間を騒がせていることをもってブラック企業入りさせられたように見える。この点は陸援隊も同様で、運送業界ではあれは普通だと言う意見もあるくらいである。

 それにしても、ブラック企業が蔓延していると言う日本であるが、一体これをどのようにしていくのであろうか。自由競争を推し進める考え方に立てば、ブラック企業に就職するのは労働者の自由であり、そこで悲惨な労働条件下に置かれてもそれは自己責任だと言う事になる。一方、ブラック企業を問題視するならば、それを阻止せねばならないが、誰がやるのか。労働者が訴訟なり労働審判なりで戦うには多大なリスクを伴う上に、裁判官は大抵の場合使用者側の裁量を広く認める傾向にあるし、何より証拠を揃えるのに圧倒的に労働者は不利だ。まだ、仮に使用者側が訴訟に負けたとしても、規判力は他の労働者に及ばないから、例えば不当解雇にしたところで勝訴した労働者を復職させればそれで足りることになっている(無論、他の労働者にも訴訟を起こされてというリスクはある)。

 それでは行政が歯止めをかけられるのかというと、今や「行政改革」によって取り締まり部門の人間は極度に不足している。労働基準監督官も警察官も検察官も歯止めをかける権限を与えられているが、行使されることはほとんどない。これが、ブラック企業側のやりたい放題を事実上容認する結果になってしまっている。

 何より、有名ブラック企業の他に、無名のブラック企業が山のように存在している。中小企業ともなればオーナーのやりたい放題は当たり前であり、その契約関係は使用者と労働者の契約関係ではなく、さながら主君と家臣である(それも、契約を重視するヨーロッパ型ではなく「君、君たらざれども、臣、臣たり」という日本の封建型の関係である)。このような有様では、我が国の企業社会の未来は暗いと考えるしかない。

 

2012年7月11日 (水)

護衛艦「たちかぜ」乗組員自殺事件

                 JDS Tachikaze, Luzon, -1990 cropped.jpg

 護衛艦「たちかぜ」乗組員の一等海士が上官によるいじめを苦に自殺した事件で、海上自衛隊が乗組員に対して行ったいじめのアンケート調査結果を隠蔽していたことが明らかになった。旧海軍に比べれば緩やかになったと言われてはいるが、密室である艦艇の中での陰湿な行為もまた旧海軍の伝統を引きずっていることは残念だ。

 もともと、軍事組織はいじめを起こしやすい傾向にある。軍人と言うと体育会系のタイプを連想する者が多いだろうし、実際にそうしたタイプも多いようだが、まさに体育会系はいじめを正当化し容認する傾向ある。これは体育会出身者が社会人となってからもイジメやシゴキを肯定して恥じることを知らないことからも明らかだ。

 ただ、最近では陸上自衛隊はともかく海上自衛隊や航空自衛隊では頭こそが第一になってきたらしい。高度な技術を身につけ装備を使いこなすには頭が何より大事なのだそうだ。実際、私が掃海艇を見学に行った時には、無論いかにも「海の男」という幹部がいる一方で、私よりも目の悪そうな幹部、小柄な私よりも更に小柄な幹部、肥満気味の私よりも更に太っている幹部が揃っており、案内してくれた先任伍長に「これで大丈夫か」と尋ねたところ、「頭の方が重要なのでこれも仕方がない」と言われたものだ。専門職化するということは、閉鎖的になりがちである。これもまた、いじめを産む土壌になりやすい。

 旧陸軍ではいじめによる自殺が多発しており、弾は後ろから飛んでくるとさえ言われていた。旧海軍も同様で、日本海軍の主力艦の何隻かはいじめに耐えかねた水兵が火を付けて沈めてしまった。軍隊のいじめによる自殺は、昭和初期には既に社会問題になっている。護衛艦「たちかぜ」事件の顛末を見ていると、これではまた乗組員が味方の艦艇を沈めてしまう事件が起きるのではないかとさえ思えてくる。

 自殺が多発する組織はどう考えても健全ではないし、改善の余地がある。それを隠蔽していることは、更に救いようがない。こうした軍隊を持つと言う事は、日本国の安全が脅かされると言う事だ。国家安全保障上の危機だが、どうも我が国は朝野を問わずそうした自覚に完全に欠けている。

 軍人と言えども人間であり、民主主義国の軍隊で人権無視は許されない。体質改善と再発防止のためには、大胆に外部の専門家を登用し、独立した立場で調査・改善活動を行わせるべきだ。例えば、アメリカ軍では法曹資格を持つ法務科士官や牧師資格を持つ牧師科士官が通常の指揮命令系統とは別に存在しており、一種の監視機能を果たしている。人事・労務問題に関しては幹部にそうした知識があることが当たり前で、文民の次官補クラスに労働担当が置かれ、幕僚にしても筆頭は作戦担当でも武器担当でもなく労務・人事担当だ。それだけ重きが置かれている。それに比べると、日本の自衛隊はお粗末だ。

 一方で、自衛隊での自殺事件に関して被害者側の代理人・支援者は往々にして自衛隊の存在そのものを否定したい左翼側であるから、防衛省・自衛隊としても、ただちにそうした人々の批判を受け止めるのは難しかろう。

 これは同時に、我が国社会の縮図ではないかと思える。「軍隊」は往々にして国民そのものを映す鏡となる。「娑婆」にいる我々一般国民としても、こうした事件を他人事と思う事は危険である。同時に、かかる自衛官により指揮命令を受ける「民間人」が今後増えていくことが考えられている。「民間委託」により、従来は自衛官が行ってきた業務を民間企業が行うようになってきているからだ。そうした場合、自衛官は言わば委託元の「正社員」であって、受託企業にとっては「隊員様」という扱いになる。彼らが受託企業の従業員(それもまた受託企業が結んだ契約により派遣会社から派遣されてくる者が相当数出てくることになるだろうが)に傍若無人な態度を取ったとしても、「職員様」を恐れる受託企業としては実質的に何もできまい。かくして、被害が民間に拡大する危険性を孕んでいる。国家公務員である自衛官の場合、訓練等で非人間的な扱いを受けたとしても「特別権力関係」などを持ちだして逃げる理屈がないわけではないが、受託企業の労働者相手となると、それは通用しない。受託企業の労働者は、国家と契約関係にあるわけではない。仮に法律で公務員並みの義務を負わせたところで、待遇は「非正規労働者」となることが必至だから(それは官公庁業務の「民間委託」の実態を調べれば簡単に見えてくる)、「忠誠心」を期待することも土台無理である。

 日本の安全を守るためにも、真剣に考えるべき課題ではないか。これを組織内の労務管理上の問題として労働条件審査・労務監査を行い改善策を提示する機会があれば、人事労務管理を専門とすることを長年志し学んできた者として、また国家安全保障に関心を持ち国防の重要性を認識する者として、是非参加したいと思っている。

 

2012年7月 9日 (月)

アフガニスタン支援は結構だが・・・

 アフガニスタン支援に関する国際会議が開かれ、各国は1.2兆円の拠出を行う事を決定した。日本も2400億(別に周辺諸国に800億)を出すことになっている。タリバン政権崩壊後10年が経過しつつあるが、アフガニスタンの混乱は続いており、事実上の内戦状態だ。これを放置することは危険である。

 問題は、タリバン政権崩壊後に発足した新政権も目立った成果は挙げられていないと言う事だが、タリバン政権の残党や部族社会がその足かせになっていることは以前から指摘されているところだ。また、どうしようもないものは汚職である。国際社会からの支援をつぎ込んでもつぎ込んでも、汚職が蔓延している国に対しては効果はない。政府要人と取り巻きを越え太らせるだけになってしまう。同時に、アフガニスタン国民が日本をはじめとする先進諸国を汚職役人の「仲間」と敵視するようになる危険性は極めて大きい。

 かつて、発展途上国への援助が途上国の支配層を巻き込んで「利権構造化」し、汚職の蔓延や富の偏在を引き起こしたことを忘れてはならない。現地政府の汚職を見逃すということがあれば、それは支援をしている先進国側にもそれで甘い汁を吸っている人たちがいるということにほかならない。

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