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2012年8月29日 (水)

日本大使公用車襲撃事件

 丹羽大使の乗った外交官ナンバーの車が北京市内で何者かに襲われ、強引に停車させられた上で車に飾っていた国旗が奪われると言う事件が起きた。前代未聞の不祥事である。

 外交官の身の安全は国際法で保障されている。この義務は接受国つまり今回のケースでは中国政府にある。ヒラの外交官であっても外交官特権で安全を保証しなければならず危害が加えられたと言う事になれば大事になるのが普通なのだが、外交使節団長として最高位の身分である特命全権大使が襲われたのだから、これは日本国や天皇が襲われたのと同じことであり、憂慮すべき事態と言わなければならない。

 ただし、これまでも中国では大使館や領事館が暴徒に襲撃されると言う事件が度々発生しているが、これについても中国政府の対応が甘すぎると言う指摘が以前からあった。外交官の身の安全と同じく、大使館や領事館などの在外公館や外交官の居宅も国際法で安全を保障すべき責務を接受国は負わされているのである(ただし、大使館・公使館と領事館では起源や任務が異なることもあってか、領事館の方が若干保護が緩い)。また、国家の代表機関である以上単なる安全だけではなく尊厳も守られなければならないことになっており、我が国が中国大使館前での中国政府に対する抗議活動を極度に制限しているのも、そのあたりの義務があるからである。

 恐ろしい事に、それでもなお中国国内では愛国的英雄的行為と称える人が少なからずいるというのだ。中国には「愛国無罪」という言葉があるが、これでは愛国心の名のもとに国際法や国際秩序を破壊することも辞さないと言う事になる。これは近代国家国民のやることではない。中国国民が日本人や日本政府を恨むことは自由であり、恨みの声を上げるのも自由だ。しかし、いくら日本が嫌いでもやっていいことと悪い事がある。

 この襲撃事件は中国国内でもとりわけ警備警戒の厳重な首都北京で起きている。首都でこのような暴挙を行う事を止められないのだとしたら、中国政府は首都ですら統制を喪っていると言う事になるし、見過ごしていたとすれば言い逃れのしようがない。何れにせよ、日本の尊厳が大きく傷つけられたのだから、日本としても断固たる対応が必要であろう。政府首脳が単に「遺憾の意」を示すだけでは不十分だ。

 同時に、中国で大使が襲われたからと言って、同じことを中国の外交官にしていいということではないし、一般の中国人に対して暴行暴言を行うと言う事もあってはならないことである。この点、日本国民も自制する必要がある。両国国民とも、低いレベルで罵り合いと恨みの炎を燃やすだけでは何の解決にもならない。

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