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2012年8月25日 (土)

金正日の料理人

 金正日の料理人であった藤本健治氏が金正恩総書記の招きに応じて平壌を訪問し、無事に帰ってきたことが話題となっている。公開された写真はいささか不自然なところがないわけではないが、謎の多い金正恩にあそこまで近づけたというのは、やはり幼少の金正恩に身近に接していた人物であったからだろう。

 一時は北朝鮮に渡航したまま生きて帰れないのではないかと言われていたが、さすがにそれはあり得ない。あれだけ知名度のある人物を拘束してしまったら、いくら「本人がもう日本に帰りたくないと言っている」というお決まりの文句で糊塗したとしても、誤魔化すことはできまい。むしろ、歓迎して返してやった方が北朝鮮指導部のイメージアップにつながる。この点では、金正恩の企みは成功していると言えるだろう。

 同時に、金正恩は西側で生活した経験もあるから、明らかに「メディア」の立ち位置をよく知っている。メディアか帰国した藤本氏を大々的に取り上げるであろうことも計算済みであったと思われる。そこで、自分の若妻を表に出したのではないか。「夫婦同伴」は西側諸国では普通に見られるが、北朝鮮では金正日が誰と結婚しているのか最後まで明らかにされることはなかった。十年ほど前の北朝鮮関係の書籍にも、「正男」は確認されていても「正恩」は記されていない。

 いずれにせよ、金正恩総書記と言う人物が君主の「威」や「恩」と言った古典的な手法の他に、メディアも意識した戦術を取っていることは確かである。90年代初頭には「バカ息子」と言われた金正日ですら独裁者として死んだのだから、正恩体制も意外に長くのではないかとの懸念は誰もが抱いているのではないか。

 金正恩が国内統制に成功しているとすれば、まだ若いことだしかなりの時間が与えられたことになる。そして、金正恩は西側を知っている。難しいこととは思うが、金正恩が見習うべきは父でも祖父でもなく台湾の蒋経国総統であろう。

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