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2012年3月 9日 (金)

競り下げで何が起こるのか

 民主党は行政改革として、「競り下げ」という手法を用いようとしている。これは、入札において最低価格が出た後、再度それより低い価格での入札を求めると言うものだ。これによって、更に入札の価格を下げコスト削減になると主張されている。

 既に、自治体の指定管理者制度では、再落札の際に前回落札よりも低い金額で落札される例が相次いでいる。前回の落札価格がひとつの「基準」となるから、落札を狙う企業は前回落札価格より低い価格で入札するし、継続落札を狙う従前の受託企業もより低い金額を提示せざるを得ない。

 表面上の数字だけ見れば、落札価格が低くなることで支出を減らすことができる。しかしながら、社会にとっていいことばかりなのかというと、実はそうではない。

 落札価格が低くなると言う事は、企業側の利益は確実に減る。しかし、そのような中でも民間企業は営利団体であるから赤字を出すような真似はできない。そこで、真っ先に削られるのが人件費ということになる。或いは、更に下請けに出すことによって自社において労働者を抱え込むことを避け、リスクを回避しようとする。このあたりは、自由放任の経済下では当然の動きと言えよう。

 必然的に、労働者の待遇は切り下げられる。切り下げられても雇用が確保されていればいい方で、あらかじめ労働契約を受託終了までとし、再受託を機に従前の労働者との契約を終了させた上で新たに安く使える労働者を雇い入れているケースも珍しくない。

 つまり、落札が行われるごとに労働者への配分がより低くなるよう動いているわけだが、それでも指定管理者制度では契約年単位で行われていたことであった。しかし、「競り下げ」が行われると、これが一気に行われることになる。

 本来ならば、仕事を発注する役所側は受託企業において労働条件が確保されていることを最低限の入札条件とすべきであるが、そのようなことをすれば受託企業側の「うまみ」は減る。官公署の仕事は「誰でも」受託できるわけではない。ゆえに、役所と受託企業側の間に何があるかは、時代劇でも見ていれば簡単に想像できる。何の制約もなければ、役所側が受託企業の労働条件に目をつぶるようになるのは推して知るべしであろう。

 官公署の契約は、単なる債権債務契約ではない。経済活性化のための方策と言う面もある。その面を軽視することは、間違いなく労働者にまわる金を減らす方向に動くことになる。結果は、役所が生み出す貧困、ワーキングプアだ。皮肉なことだが、自治体からの受託企業で働く労働者がその賃金だけでは最低限の生活すらままならず、発注元の自治体に生活保護を申請したところ認められたと言う笑えない話もある。

 入札価格を下げると言うのは行政改革の大義名分であるが、それによって新たに支出が必要となることを民主党の担当者は理解しているのか。価格を下げよう下げようとすれば、企業としても生き残りのためにますます悪事に手を染めねばならなくなる。労働条件悪化のみならず、安全や衛生の保全も怪しいものだ。受託を希望する企業に対して労働条件や安全確保を義務付けるだけでなく、中立の第三者による労務監査を義務化することにより実効性を確保する措置が必要であろう。

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