「スポーツ庁」は本当に必要か
民主党政権は「スポーツ庁」なるものを設置しようとしています。スポーツ、日本ではどちらかと言えば「体育」の側面が強いように思われるのですが、従前は健康維持のためのものは厚生労働省の範囲に属し、所謂「体育」の範囲に属するものは文部科学省の範囲に属してきました。こうした従来の行政を一本化すると言うのは合理性があるように見えない事もありません。
しかし、「メダルを量産したい」という本音が見え隠れしています。オリンピックのメダルが尊いものであることは認めますが、それを得るために中国やかつての社会主義国のように国民の資本投下する意味が果たしてあるのでしょうか。少なくとも、ただちに今の日本に必要とは思えません。中国のように、体育によって国民をカタにはめるつもりでもあれば別ですが。
そもそも、民主党は従来から公務員を叩き、役所を減らせと主張してこられました。そのために、例えば厚生労働省などは再度分割の話がありましたが曖昧になり、今やパンク状態にあるそうです。あまりにも広い範囲を扱っているのですから仕方がないと言えますが、年金に詳しい大臣が労働法に関してほとんど何も知らないと言うこともありました。アメリカですら福祉関係と労働関係は異なる省庁が置かれているくらいなのですが。厚生省と労働省に再度分割すると言うような話ならば分かります。その必要性も差し迫ったものがあります。そうした現状を放置する一方で、わざわざスポーツ庁を設置するというのは、ダブル・スタンダードではないかと思います。何とかの一つ覚えのように連呼している「ムダな公務員を減らせ」というスローガンとも明らかに矛盾している。
いつも疑問に感じているところなのですが、どうしてスポーツだけを優遇しなければならないのでしょうか。かつては中学校でも、「男子は運動部にいないと内申書で不利になる」などと言われていたものです。義務教育の授業時間の増加策で、音楽や美術に比べて体育の時間は大幅に増やされている。そして、武道の必修化もはじまります。私は事故が多い事、日本文化や儀礼を身につけさせるためには他の方法がいくらでもあって武道に限定する必要がない事、他の選択肢が用意されていない事などから武道の必修化には反対です。
スポーツ庁の設置は自民党政権時代から議論がされてきましたが、一方で音楽庁や演劇庁が設置されると言う話は聞いた事がありません。これらは文部科学省や文化庁で対応がされています。スポーツをする権利を擁護するならば、音楽や演劇に親しむ権利もある筈だ。どうしてスポーツだけ「特別扱いする」のでしょうか。選択肢の一つとしてスポーツに親しむ権利を認めるだけならともかく、省庁まで新たに設置して特別扱いする以上、もっと合理的な説明がされるべきです。