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2011年10月9日 - 2011年10月15日

2011年10月15日 (土)

すき屋強盗事件

 牛丼チェーンの「すき屋」が、業界ではダントツのトップなのだそうです。残念ながら売上や顧客満足度ではなく、夜間に強盗に入られることでのトップですから、企業としては不名誉な話以外の何物でもないでしょう。無論、一番悪いのは言うまでもなく強盗に入る犯人ですが、企業として犯罪に対応できる姿勢であったかと言うと、実は疑わしいのです。

 強盗に「入りやすい」原因のひとつが、夜間勤務をアルバイト一人でこなしているということが挙げられています。強盗とは「財物を強取」することですから、複数人を相手にするより一人を相手にした方が目的を達しやすいことは言うまでもありません。

 問題は、すき屋は警察によってかなり前からこの問題を指摘され強盗に入られ続けながら、対策をしてこなかったということです。これでは、企業としての社会的責任のみならず、労働者に対する安全配慮義務を果たしていなかったと言われても仕方がない。無論、客が巻き込まれないとも限りませんから、客までも危険に晒していたことになります。

 牛丼業界は激戦です。一人でまわしていたアルバイトを二人にすれば、人件費は単純計算で二倍になります。人件費削減という至上命題がある以上、簡単に人は増やせなかったのでしょうが、これでは安全よりも儲けを重視していたと言われても反論はできないでしょう。加えて、すき屋はかねてより不払い残業や解雇で労働トラブルを起こしており、訴訟の際には従前黙認していた店舗での残った御飯を食べたことを問題視して解雇理由として挙げる始末。企業として、労務管理面に問題があるのではないかと思えてなりません。

2011年10月13日 (木)

公的年金支給開始年齢の引き上げについて

 かねて噂はありましたが、厚生労働省が公的年金の支給開始年齢を68歳から70歳程度まで引き上げることを検討していることが明らかになりました。数日前、在職老齢年金の支給停止額を引き上げることで高齢者の就業を促進することを検討していることが報道されましたが、実はこの伏線だったのではないかと思えてしまいます。

 この他にもさまざまな提案がなされており、それらをまとめると

 1、年金の支給開始年齢を引き上げる。

 2、年金の支給額を削減する。

 3、年金保険料を引き上げる。

 4、現在段階的に行っている65歳までの年金支給開始年齢引き上げを前倒しする。

 ということになります。言うまでもなく、これらが同時進行的に行われることもあり得るでしょう。互いに矛盾する案ではないからです。

 まず、公的年金の支給開始年齢引き上げ案について考えてみましょう。

 公的年金の支給開始年齢を引き上げるということは、年金が受給できる年齢に達するまで何らかのかたちで働いて収入を得る必要があるということになります。恒産を枕に無為徒食を重ねることができる高齢者は決して多数派ではありません。

 昭和61年4月に現行の年金制度に改正された際、年金の支給開始年齢は原則65歳となりましたが、その時点では未だ定年延長や再雇用は遠い日の話であり、これらの措置を講ずる義務が企業に課されるようになったのは法改正から二十年近くを経たつい最近の事です。それでもなお、現時点で何らかの形で65歳まで働くことのできる企業はまだ全体の半数に満たない。恐らく、目途としては同じようにまず年金各法の支給開始年齢を引き上げ、その上で企業に再雇用や定年延長を求めていくという手法が取られるのではないかと思われます。高齢者の活用と言えば聞こえはいいのですが、これは決していいことばかりではありません。多くの弊害が既に指摘されています。

 まず、労働市場の中では需要に限界があり、労働者側としては少ないパイの奪い合いにあっているということです。これによって高齢者の雇用を確保する一方で新規採用が抑制された。その結果どうなったか。若い世代の仕事がなくなり、あっても労働条件劣悪な非正規雇用ばかりとなりました。高齢者雇用ばかりが原因とは言えませんが、高齢者の雇用確保のために若い世代が割を食ったのは確かです。高齢者の活用とか、高齢者の就労促進と言う事は、若い世代に不利益を被らせることと同じであり、それを隠していることは国民に対する背信に等しい。

 当然ながら、この結果として組織の新陳代謝は進まないことになります。組織の抱える閉塞感ともまた、無縁ではないでしょう。若い血が入らず、居座り組が多いわけですから、沈滞化しないほうがおかしいわけです。高齢ながら柔軟な思考の持ち主というのもいないわけではありませんが、ともすれば人は年を取るほど保守化・現状維持思考になっていくものです。

 年金の支給額削減に関しては、既に受給権のある高齢者から激しい反発が予想されます。政治的に見ても「票田」である高齢者層を政策決定権を持つ政治家が敵に回すわけもありません。高齢者は数も多い上に、投票に行く層であり、高齢者を敵に回して選挙に勝つのは極めて難しいからです。そして、実際に高齢者に甘言を弄する者が選挙に勝利しているという冷徹な現実がある。

 加えて、現在の国民年金は40年間保険料を納付して満額受給できるようになっても788900円でしかありません。厚生年金や共済年金に加入していたり、付加保険料や国民年金基金に加入していた場合にはこれを上回る年金を受給することができることになりますが、それでも生活を支えるだけの年金を受給するのは容易なことではありません。ただでも現役時代に比べて足りないと言われている年金支給額を大幅削減すれば、年金制度に対する信頼を更に失墜させることになる。最低限度の生活を保障する年金すら受給できないとなれば、これは福祉でカバーせざるを得ないことになります。年金の支給額削減は、するとしても大きな幅で行うのは難しいと言わざるを得ません。

 現役世代の保険料を引き上げるという手法については、ターゲットとなるのがより若い世代となることもあって、他の方法に比べればハードルは低いものとなります。恐らく、年金の支給開始年齢が引き上げられるような場合でも、同時に保険料引き上げもなされるでしょう。何故なら、取れるところから取るということを考えた時に、政治的に文句を言わない若い世代に負担を負わせることが最も手っ取り早いからです。既に、現在第三号被保険者となってる専業主婦に保険料負担を求めたり、パートタイマーの強制加入を促進する方向に動いているのは、伏線であると思われます。

 しかし、保険料を引き上げるとしても、最早若い世代に絞り取られることに耐えるだけの体力が残っているかと言うと、極めて厳しいものがあります。まず、若い世代は雇用が不安定であり、既にして厚生年金や共済年金の被保険者になることのできない人たちも増えています。国民年金も、納付できないような経済状況の若年者が激増しており、仮にここで保険料を引き上げたとしても、更なる未納か免除申請者を増やすだけの結果になりましょう。少子化は確かに問題ですが、現役世代の体力低下はそれだけが問題ではありません。

 支給開始年齢の前倒しとなると、生活設計を大幅に見直さなければならないことになります。仮に年金法改正で前倒しが行われたとしても、労働関係諸法令の改正はどうしても後手に回るでしょうし、負担を「押し付けられる」と感じる企業側は簡単には「国際競争」を理由として定年延長や再雇用の義務化には応じないでしょう。そうなると、更に若い世代の雇用を「食う」かたちで解決せざるを得ない。かといって、現役時代の貯蓄で対応するにも限界があります。

 バブル崩壊以降の歴代政権は、財政再建や景気回復、経済構造改革と言った個々の問題には熱心でしたが、成長産業の選択や投資など、パイを増やすことにはあまり熱心ではなかったように思われます。むしろ、財政再建や財政健全化を錦の御旗として、パイを縮小させる方向に動いてきたとさえ言える。今後も、この傾向は変わらないでしょうから、劇的に状況が改善するのは難しいでしょう。

 恐らく、上記の4つは全て何らかの形で行わなければならなくなるのではないかと考えられます。加えて、消費税増税も議論の対象となることは間違いありません。全く何の負担もない層を作ってしまうのは余りにもバランスを欠くことに加えて、もはや一つだけの選択肢では対応できない。問題は、何処に比重を置く=負担を押し付けるかであり、それはこれからの政権と国会が政治的判断から決断を下すことになるのではないかと思われます。ただし、既に暗号状態になっている年金制度が更に分かり難い複雑怪奇なものになることは避けられず、その分かり難さが更なる年金制度不信を住む可能性が高く、理由づけもきちんとしてもらいたいものです。

2011年10月11日 (火)

外国人一万人を日本に無料招待

 観光庁が、外国人を1万人日本に無料招待するという企画を打ち出しました。観光庁の審査に通ると往復の航空券が支給され、口コミによる宣伝効果を期待しているのだそうです。どうも、民主党政権お得意の「ばら撒き」の臭いがしてなりません。

 世界には一生に一度も「海外旅行」に行けない人々が珍しくありません(難民となって国外に出ることは多々ありますがこれは旅行ではありません)。一生に一度の日本への海外旅行ということになると、思い出作りの機会は提供できますがリピーターには到底成り得ませんし、自力での日本旅行が不可能なほどの賃金レベルの国ではいくら口コミで宣伝したとしても、それで日本への旅行者が増えるとは思われません。

 もし、日本旅行に呼ぶのなら、発展途上国から中進国の青年以下の層に限定すべきだと思います。将来、国家の主導的立場や中堅層となる若者に短期間でも日本を見せることは、日本に対する好印象につながるでしょうし、将来ある若者ならば、「これから日本と関係のある仕事に就いて日本にまた行こう」とか「今度は自力でお金を貯めて日本に来よう」という気になるでしょう。将来のある程度決まってしまっている中年やリタイアした層を招待するより、日本の「発信」としては効果的ではないでしょうか。

 この点、アメリカは数十年前から「留学生」として発展途上国の指導層候補者を受け入れて、親米派をひそかに育て続けてきました。アメリカ発の市場原理主義・新自由主義が世界に蔓延した原因は言うまでもなくこうした留学生出身者が主導的役割を担うポジションに就いていたことが大きい。はるか将来の国益を見据えて留学生を受け入れて来たアメリカの手法は見事です。日本ももう少し、こうしたやり方を見習ってはどうでしょうか。

2011年10月10日 (月)

辛亥革命百周年双十節

               中華民国の国旗       中華人民共和国の国旗 

 今日は、中国で辛亥革命が勃発して百年の記念日にあたります。辛亥革命によって清王朝が崩壊し、アジアで最初の共和国である中華民国が誕生しました。10月10日は十が二つ並ぶことから「双十節」として、台湾では国家の誕生日であり建国記念日と同じような扱いになっています。

 台湾併呑を目論む中国としては、両岸双方の「共通点」を謳い上げることで「中華民族意識」を高揚させ、台湾を取りこむきっかけにしたいという意図が見え見えの記念式典でした。胡錦濤国家主席は台湾に対して「同じ中華民族」の意識を前面に出した演説を行いましたが、自由や民主と言う問題には全く触れていません。また、中国も台湾も国内には少なからぬ少数民族を抱えていますので、漢民族以外の民族にしてみれば、中華民族意識に訴えたところで知ったことではないでしょう。

 そもそも「台湾人は中華民族とは異なる」という定義付けをしてしまえば、「中華民族」という共通の基盤もなくなるわけですから、中国政府の言い分はもろ刃の剣というところでしょう。

 考えてみれば、辛亥革命によって成立した中華民国政府を大陸から追い出し、中華民国を事実上否定することで成立した中華人民共和国側が、辛亥革命の正当な後継者を名乗るのも変な話です。確かに共産党政権の元で中国は数字の上では強国の地位を取り戻したかに見えますが、自由も民主主義もなく、国内の格差は拡大を続けています。そして、社会福祉政策は不十分なままで整備が遅れている。台湾がその実効統治区域内にせよ三民主義を達成したと認められるのに対して、大陸は三民主義の何も達成していないし、そもそも民主化する意思が中華人民共和国建国の精神として「ない」(中華人民共和国は「共産党の指導」体制を憲法で銘記し「永久与党」の地位を保障していますから、民主的な政権交代と言うものは観念されていないわけです)のですから、それで辛亥革命の正統な継承者を名乗っているのは全く不自然な事です。

 孫文は台湾では「国父」と呼ばれ、大陸でも「革命の先駆者」という位置付けをされていますが、大陸ではあくまでも毛沢東の「露払い」としての地位に留まっています。実際、毛沢東は建国時点では孫文を尊敬していたかのような発言をして元国民政府の関係者を懐柔したものでしたが、実際には孫文を腹の中で馬鹿にしていたという告白をしています。また、大陸がいくら孫文を持ちあげたとしても、台湾では中華民国という中国の系譜を継ぐ政府そのものを廃して形式的にも中国の枠組みから脱却しすべきだという意見も根強いものがあり、この台湾独立論によれば孫文は台湾でも「国父」ではなくなります。つまり、中国政府の台湾に対する呼びかけは、あくまでも「中国」という共通の枠組みがあることが大前提になっており、それ以外の枠組みを台湾が選択した場合には言葉で対処できない。そのため、中国は軍拡を続け台湾を恫喝し続けているわけです。

 中国側が経済利権と民族意識を利用した「本音」と「建前」の攻勢に加えて軍事的圧力を強める中、「大陸寄り」と目されてきた馬英九総統は双十節で軍事パレードを復活させましたから、こうした点で大陸に妥協することは考えていないように思われます。少なくとも、台湾人が一時の感情に流されて勝ち取った自由と民主主義を放棄するとは思えません。一方で、冷戦時代から両岸では水面下の対話も続けられていましたので、単純に双方の言葉や態度だけでは推し量れないものもありますが。 

 私が疑問に思えるのは日本の右派勢力の台湾に対する評価で、台湾の自由や民主主義を褒め称え、自由や民主を考えてもいない中国と台湾は別の国だと主張する。しかし、彼らが日本で主張している思想は「日本国憲法無効論」や「大日本帝国憲法復活論」であり、自由や民主主義や人権思想よりも伝統主義に則った封建的な価値観を高く評価しています。この点で、日本と台湾が運命共同体だと言いながら、評価がダブル・スタンダードになっているわけです。こうした点から、本当に台湾を評価していると言うよりは、中国に対するアンチテーゼとして中国に対抗している台湾に親近感を覚えているだけなのではないかと思えてなりません。

 日本では江沢民前国家主席がまだ生きていて辛亥革命百周年の記念式典に出席したことが専ら取り上げられていますが、これはあくまでも中国共産党内部の権力闘争の話で、台湾側のニュースは意図的に無視されている傾向があります。「辛亥革命」という歴史上の事件も、大陸と台湾では位置付けが異なり、更に台湾では統一派・独立派・現状維持派でまた位置付けも異なります。清朝崩壊から百年が過ぎましたが、中国近辺の争いはまだまだ終わりそうにないことは確かです。

 辛亥革命を多くの日本人が支援していたことは今ではよく知られています。ひとつのキーワードとして、彼らは隣国である中国の近代化に期待し、日本とともに列強に対抗するひとつの「軸」と考えていたように思われます。少なくとも、日本を武力で恫喝するような封建的な独裁国家を望んでいたとは思われません。

2011年10月 9日 (日)

被災地新設企業に対する法人税免除は本当に被災地復興に資するのか

 訪米中の古川元久経済財政担当大臣が母校のコロンビア大学で行った講演の中で、被災地復興のため東日本大震災の被災地に設ける復興特区の中で、新規に立地する企業に対して法人税を5年間免除する等、日本で前例のない思い切った措置を考えていると述べました。被災地に企業を引っ張ってくることで復興につなげようとしているかに見えます。しかし、この方法で本当に被災地が復興するのかについては検証してみる必要がありそうです。

 まず、新たに被災地に来る企業に対してのみ減税が適用されると言う点です。つまり、被災した地元企業は地元においては多少の税の減免策は既に取られているものの相対的に不利な条件で競争することを余儀なくされることになるわけです。

 また、企業進出を促すことが正しいとしても、インフラは整備しなければならない。電気や水道などは当然ながら安定的に供給することが最低限の条件でしょうし、製造業ならば道路や港湾なども相応に整備する必要が出てきます。それらも、単に「ある」というだけでなく、少なくとも繁忙期に備えたものでなくてはなりません。それらを整備する費用は国や地方自治体が出すしかありません。一方で、企業は減税対象ですから、インフラ使用の対価は支払わなくてもいいわけです。

 国や地域の負担が、将来的に復興に繋がればとは思います。財務省は被災地で雇用をする企業に限定する等の条件を付そうとしています。しかし、過去の例から見ても「進出した企業」において、地元が期待する「地元民の正規雇用」はほとんどないというのが実態で、今回もまた同じ事になるでしょう。幹部社員や正社員は転勤によって他の地方から送り込まれ、地元民はせいぜい非正規雇用の口にありつければ御の字というところでしょう。そして、製造設備やインフラが古くなってきたり、減税の恩恵が薄れてこれば、すみやかに企業は撤退することになる。残念ながら、企業側の理屈としては、そのようなことをしなければ、生き残っていけないのです。当然、非正規雇用の地元民を転勤させてまで継続雇用する義務は生じないように契約をしているでしょうし、遠隔地への転勤を拒絶せざるを得ない労働者も多いことでしょう。

 減税対象を「被災地で現地住民を期間の定めのない正規雇用した場合」に限定すると言う事も考えられないではありませんが、恐らくはそれでは企業側は容易に切れないリスクを背負い込むことになりますから、そんなリスクを抱えてまで進出しようと言う企業は多くないように思われます。それでも、一時的・非正規であるにせよ、被災地で雇用はそれなりに増えるでしょう。そこに価値を見出すのであれば、この構想を推し進めるべきだと言うことになります。

 注目すべきは、古川経済財政担当相が、復興特区を「規制緩和特区」と捉え、それを全国に拡大したいと述べている事です。つまり、復興特区が労働規制の緩和や安全の緩和の先進地域となれば、それが全国に拡大されるということになる。中産階級以下の層にとって、それが本当に「好ましいこと」なのかと問われると、私は否定せざるを得ません。いい加減、規制緩和が本当にいいことなのかという根本的な問題にもメスを入れて欲しいものです。そうした根本的なところに思いを致さないならば、「国家戦略」は名乗らないでいただきたいと思います。

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