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2011年5月22日 - 2011年5月28日

2011年5月27日 (金)

麻生政府特使

 政府は日中交流事業として北京で行われる「アニメフェスティバル」の開幕式典に麻生太郎元総理を特使として派遣することを決めました。麻生元総理は漫画好きとしてよく知られ、サブカルチャーに対して「ゲームは青少年の頭を狂わせる」などと敵意を持つ政治家が多い中で珍しい存在と言えます。適任と言えるでしょう。

 対立党である自民党の元総理を特使に任じた事に違和感を感じる方もおられるかも知れませんが、特使は基本的には使者ですから、特命全権大使や政府代表や全権委員と異なって外交交渉や条約調印を行うわけではありません。政治的な決定から除外されているわけですから、野党議員を任じることに抵抗感はなかったのでしょう。

 麻生元総理は漫画「ローゼンメイデン」を読んでいたとネットで噂されたことから「ローゼン閣下」というあだ名を付けられていました。オタクの聖地である秋葉原では人気があったようですが、在任中は自民党が解散総選挙を先延ばしにして政権にしがみついた時期と重なり、漢字の読み間違いを繰り返したり高級バー通いを報道され(高級店通いはその後の鳩山総理や菅総理も熱心に行っている)、サブカルチャーの知的財産保存の案は「国営漫画喫茶」「アニメの殿堂」と非難され、民主党政権の発足とともに雲散霧消してしまいました。

 サブカルチャーは流行り廃りの激しいものであり、制作する企業の寿命も短く、ハードウエアの生産停止などとともに文化遺産が消え去っているという事実は歴然としてあります。豪勢な建物を建てる必要性は疑わしかったにしても、文化保存機関を設けると言う発想そのものは間違っていなかったと私は考えています。機能としては国立国会図書館が書籍の保存を行っていることから、国会図書館に行わせても良いでしょう。保管施設が必要なら、一層の事「ぽぷかる」等でオタク系イベントを行っているモリコロパークの空き地にでも作ってしまってはどうでしょうか。

 国際的に見ても、日本のアニメや漫画を入り口として日本に関心を持ったり、日本語を覚えたりして日本へ旅行したり、留学してくる者は多いものです。特に北東アジア諸国からの留学生であって、現に大学院あたりで学んでいる者の中に、日本の漫画やアニメを観て育った人は皆無と言って良いでしょう。留学生の大半はアニメや漫画を学ぶわけでも、帰国してそうした仕事に就くわけでもありません。大半は経済人となりますし、学者や法律家を目指している者もいます。中には帰国後外交部等対日部門で働く者もいる。若い世代の「日本理解」において、今や重要な役割を有していると考える必要があります。

2011年5月25日 (水)

EUの対中武器禁輸措置緩和問題について

 かねてより、EUは中国に対する武器輸出制限措置を緩和することを検討してきました。これは、第二次天安門事件後に当時の西側諸国が中国に対する武器輸出を制限することになって以来続いているものです。

 EUとしては、中国との連携を強化すること、ドイツやフランスなどEU主要国は軒並み武器輸出大国であり売り込み先として魅力があることもあって、対中禁輸の緩和を志向する傾向が続いています。これに対して、日本やアメリカはEUが緩和することについて反対の意向を示しています。

 世界第二位の「経済大国」となった中国は軍備拡張政策を着々と進めていますが、自前での開発能力となると疑問符が付くところで、「国産」を唱っていてもどこかの国の兵器に外見がよく似ているというのはよくある話です(性能は公表しない国ですからほとんど不明です)。少数のサンプル購入はしているという話ですので、リバース・エンジニアリングの手法を用いてコピー品を作っていると思われますが、アメリカのイージス・システムを作っている企業から産業スパイを使って情報を持ちだした事件もありました。いずれにせよ、これでは「Chinese copy」(英語で「パチ物」を指す)を差別だとは言えないでしょう。

 自前で武器開発が難しい中国は、武器を専らロシアから購入すると言う状態が続いています。ですが、中国としては西側のより高度な武器が欲しいわけで、こうした点でEUと中国の思惑は一致していると言えます。EU諸国にしてみれば、中国が軍拡をやったところで、大した影響力は受けない。日本のように、「すぐ近くの脅威」ではないからです。

 アメリカの場合はNATO(北大西洋条約機構)による軍事協力をEUの多くの国と結んでいることもありますから、EU諸国に圧力をかけることもできます。例えば、有事にアメリカの核兵器の一部はNATO諸国と「共同運用」されることになっており、核保有国でなくとも一定の核抑止力を持てるような工夫がされています。もし、アメリカが協力しないとなれば、そうした国は困ったことになるわけです。

 ところが、日本はそのようなルートもない。今のところ「アメリカ頼み」にならざるを得ない。EU諸国から武器を購入して「中国より大きなお得意様」になる道もないわけではありませんが、そうするとアメリカはいい顔をしませんし、国内の軍需産業は武器輸出ができないだけに輸入を増やせば大打撃となる。何より、財政事情から更新すらままならない状態ですから、お得意様になることはかなり難しい。

 日本としては、EUが人権問題に非常に敏感であることから、中国の人権弾圧問題とからめて禁輸緩和をやめるよう要請するのが有効な手ではないかと思われます。中国が軍事的に更に能力を高めれば、人権問題にまともに取り組もうとしないことは過去の例から見ても間違いないところだからです。ただ、対中武器輸出問題は、中国におけるEU諸国の利権や武器そのものの売却による経済的利益もからんでくるだけに、簡単ではありません。

 日本はアメリカとだけでなく、中国の圧迫を受けているベトナム、フィリピン、インド等とも共同歩調を取れるかどうかが重要なポイントになるのではないかと思われます。

2011年5月22日 (日)

社会政策学会

 大学時代に同じ産業関係学を専攻した同級生で、今は一橋大学にいる友人が学会発表することになったため、東京の明治学院大学で行われた社会政策学会に出席してきました。社会政策学会は大学生の就職活動から労働問題、社会保障など幅広い分野が取り上げられています。

 彼は介護労働者の処遇をめぐる問題を扱っています。このため発表は医療・介護問題を扱う分科会で行われました。参加者は決して多いわけではありませんが、聞き手はその道の専門家ばかりですし、大先輩から質問も受けることになるわけですから、準備に何箇月もかけ、直前にはかなり緊張していました。

 私はもっぱら労働法・社会保障法とその政策論に関心を持ってきました。このため、彼が社会学系の大学院に進んだのに対して、私は法学系に進んでいます。また、純粋に学者への道一本である彼に比べて、私は学んだ知識を直接に現場や公共政策に活用したいと言う想いが強く、この結果彼とは対照的な回りくどい複雑な人生を歩むことになりました。

 しかし、大学入学以来十三年余り、励まし合い競い合ってきた友人です。大学以来、何故か人生の上でも研究の上でも「苦しい時期」が重複してきました。彼はこのまま研究者の道を歩むでしょう。私はまだ今後どうするか決めているわけではありませんが、立場はどうであれ勉強は続けていくつもりでいます(仕事をして行く上で必要と言う事もあります)。どちらかが死ぬまで、互いに知的刺激をしあえる関係を続けていきたいものだと思っています。

 世間には、大学や研究者を遊んでいるとか無駄飯を食っているとか言って毛嫌いしている人がいます。しかし、私がここ十数年学んできて感じたのは、大学や研究者のところに集まってきている情報の中には有益なものが多々ある。今は目立たなくとも、十年後二十年後に顕在化するような問題に取り組んでいる研究者も多いのです。

 例えば、ワーキング・プアですとか派遣労働をめぐる諸問題などは、顕在化したのは小泉内閣の頃ですが、私の大学時代には既に将来起こり得る問題だと研究者の間では指摘されていました。

 また、最近小中学校の同級生に長久手町の消防団の方を紹介していただいた時、この方から愛知工業大学の研究チームが作成した「大規模地震の起きる可能性のある地域」を検討した地図をいただいたのですが、そこにははっきりと危険な地域として東日本大地震の起きた地域がマッピングされていました。

 日本の学術研究は、決して「象牙の塔」ではない。そこに集まっている人的資源、知識や知恵を有効に生かせないところに問題があるように思います。最近では、大学に「競争」と「効率化」を求めることが当たり前になり、教員のポストも削減されています。かつては大学院を中退しても常勤の研究者ポストに就くことは珍しいことではありませんでしたが、今や修了して博士号を取得しても就職は簡単ではない。三十代半ばくらいまでは安定したポストに就くのは難しく、研究実績を積まなければなりません。このため、研究に無理解な恋人に逃げられたと言う悲劇は数知れない(もっとも、研究に無理解な人と結婚してしまったらもっと悲劇ですが)。このため、学者は落ち着いて研究ができず、すぐに成果の出るような研究に飛びつきがちになっていると指摘されています。学術研究の衰退は、経済や社会改革の停滞を招くことになるでしょう。非常に心配です。

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